サイエンス

誰でも人工衛星で軌道上から写真撮影などができる「ArduSat」


音速の18倍のスピードで宇宙を飛ぶ人工衛星に自作のプログラムをアップロードして25個のセンサーを使って実験を行なったり、写真撮影をしたりする権利がわずか数百ドルで得られる「AruduSat」というプロジェクトが現在アメリカで進行中です。

このプロジェクトは「Arduino(アルドゥイーノ)」というオープンソースハードウェアを人工衛星に搭載することで、宇宙で利用できる開発プラットフォームを作成し、ディベロッパーや学生はもとより、趣味に活用したいユーザーなどを含め広く一般に開放することを目的として行われているとのこと。

ArduSat - Your Arduino Experiment in Space by ppl4world — Kickstarter

YouTubeにアップされているムービーは宇宙から地球を撮影した幻想的な映像からスタート。


プロジェクトのリーダーはピーターという男性。


このプロジェクトは「誰もが手軽に宇宙を探求(研究)できるようにする」ことを目指しているそうです。


「AruduSat」は10センチ四方の人工衛星で、イタリアでスタートしたオープンソースハードウェアプロジェクトをもとに作成された「Arduino」の基板やセンサー、カメラなどを搭載しています。


プロジェクトに数百ドルを支払って参加すれば、自分で作成したプログラムを運営チームに送信して内容のチェックを受けることができるようになります。そして、チェックをクリアしたものは実際に宇宙空間にある人工衛星上にアップロードされ、開発者はセンサーやカメラを自由に使用して実験や撮影を行うことができ、その結果はインターネット経由で受け取ることもできるそうです。

どんな技術を使ってこのプロジェクトが実現されたのか? というのは以下の通り。


エンジニアのイェロン氏がパーツの解説をしてくれます。


搭載されているのは電磁波スペクトルを測定する分光器や……


光学カメラや振動センサー、光センサー、GPSなど。


さらに、ジャイロセンサーやガイガーカウンター、磁気センサーなど総計25個のセンサー類を備えています。


実際の基板はこんな感じ。


プロジェクトの進行状況は良好なようで、ピーター氏によれば「全ては期待していた通りだ」とのこと。そして、この人工衛星を実際に宇宙に打ち上げるためにネットを通じて賛同者から資金援助を得る代わりに、宇宙で実験を行う権利を提供しようというわけです。


上記の内容の詳細についてメンバーが解説しているムービーは以下で見られます。

ArduSat Kickstarter Video - YouTube


プロトタイプセンサーのデモの詳細は以下のムービーでチェックしてみてください。

Sensor prototype demo - YouTube


で、実際にどうやってこの人工衛星を宇宙に打ち上げるのか? というギモンに答えてくれるのがエンジニアを名乗るこの2人。


既にバルーンのテストは成功裏に終了したとのこと。


こんな感じでバルーンを約30km上空に飛ばして、搭載したカメラからのライブストリーミング映像をインターネットに中継することができたそうです。


その際に撮影された映像は以下の通り。


そして、これが打ち上げ用のロケット。


模型を手に仕組みを説明する2人。


先ほど紹介されていた気球を大型化したものにロケットの発射台を装着する、というのが打ち上げシステムの概要。


こんな感じで気球の下部に角度調整が可能な発射台が備えられており、高高度からロケットを打ち出すことで燃料などを節約する作戦のようです。


地上でのロケットの発射実験も行われており……。


一瞬で空高く舞い上がっている様子を見ると成功のようです。


上記にある打ち上げに使用する気球やロケットのテストを行っている様子は以下のムービーで見られます。

Team Prometheus partners with Ardusat! - YouTube


記事作成時点でこのプロジェクトは427人から6万ドル(約480万円)以上の資金援助を獲得しており、当初の目標金額をぶっちぎりで突破している状態。


現在はゴールをさらに引き上げ7万5000ドル(約600万円)としており、もしこの金額に達すれば人工衛星のサイズを2倍にしてより高性能なカメラなどを搭載することができるとのこと。

で、支払い金額に応じてどんなサービスや製品が手に入るのか? という例は以下の通りです。

・1ドル(約80円):ディスカッション、コメントページへの参加とお礼のメールを受信する権利。
・150ドル(約1万2000円):時間と角度を選んで宇宙空間から15枚の写真を撮影して受け取る権利。
・775ドル(約6万2000円)=パイオニア:人工衛星を1週間使用して独自のアプリケーションを実行する権利など。
・1500ドル(約12万円)=チームディベロッパー:上記の「パイオニア」と同等の権利に加えセンサー類を含む開発キットを使った地上でのテストやSciStarterのTシャツなど。
・1万ドル(約80万円)=プラチナパートナー:国連のデータベースに登録される人工衛星の名前を付ける権利やNASAの宇宙飛行士ストーリー・マスグレイブ博士との30分のスカイプ通話など。

記事作成時点で上位のプランのほとんどが「売約済」になっていますが、人数制限のないプランは2012年の7月14日まで申し込みを受け付ける予定とのことなので、人工衛星を使って実験や写真撮影をしてみたい人は登録を検討してみてください。

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in ソフトウェア,   ハードウェア,   サイエンス,   動画, Posted by darkhorse_log

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