取材

2012年度は25万台販売が目標、ロボット掃除機「ルンバ」のマーケティング戦略


ロボット掃除機「ルンバ」の新製品、700シリーズが新登場ということで新製品発表会が行われましたが、その発表会の後半に、日本の総代理店であるセールス・オンデマンド株式会社の取締役・徳丸順一さんから、マーケティング戦略についての話がありました。

「ルンバは世界中で愛されている」「躍進してきたのは共働き世帯の増加と高齢化社会の増加が要因」といった、興味深い話が具体的な数字とともに語られました。また、発売に先駆けて実際にルンバ700シリーズを使った家電&インテリアコーディネーターの戸井田園子さんと家電コンシェルジュの神原サリーさんによるトークセッションも行われました。

セールス・オンデマンド株式会社取締役、徳丸順一さん。


「世界中で愛されているルンバ」ということで、実例を挙げて紹介。


例えばYouTubeにはまるでルンバをペットや家族の一員のように扱っている動画がアップされている、ということで、ルンバを乗りこなすネコのムービーが流されました。


ルンバはこれまでに世界50カ国で500万台以上が販売されました。


日本におけるルンバ出荷台数のグラフ。2008年は3万台でしたが、2010年は15万台に。このグラフはSODC(セールス・オンデマンド)調べ。


SODC調べによる2004年4月から2011年8月の累計出荷台数は35万台を突破しているそうです。


これがルンバ躍進の構造。


環境要因としては「共働き世代の増加」「高齢化社会の到来」が挙げられています。


そしてルンバの高い清掃能力。


これが合わさって、高い満足度になっているのではないか、ということ。


要因1の共働き世帯の増加について、厚生労働白書によると1980年の共働き世帯は614でしたが、2010年には1114に増加。


要因2の高齢化社会について、これは高齢社会白書に基づいた数字ですが、高齢化率は年々上がっており、2020年には3500万人が高齢者となり、高齢化率は30%オーバーにもなるようです。


SODCがモニター100人に対して行った、プロダクト性能に対する調査の内容がこちら。「本当にキレイになるの?」という質問に対して、71人が「満足」、24人が「やや満足」と回答。


「隅の掃除は?」については、49人が「満足」、35人が「やや満足」と回答。


「家具が多い部屋は掃除できる?」については、45人が「満足」、30人が「やや満足」と回答。


ルンバの継続意向度。


4364人に対して「今後もルンバを利用したいですか?」と質問したところ、43%が「絶対に利用し続ける」、50%が「利用し続ける」と回答。合計で93%が継続利用に前向きな回答を行いました。


日本国内の掃除機市場は年間550万台規模だそうで、長らく縮小が続いていましたが、2010年は前年比107%と微増しています。


一方で、ロボット掃除機市場は成長中。2008年の実績を指数100としたとき2010年は500と、市場規模は5倍にも膨らんでいるそうです。


そんな中でルンバ700シリーズが目指すのは「高い顧客満足度に支えられるNo.1ブランド」ということ。つまり「ロボット掃除機=ルンバ」ということ。


ルンバ700シリーズは2011年10月7日発売。それぞれ販売はオープン価格となっていますが、参考販売予定価格(税込)はルンバ760が6万4800円、ルンバ770が6万9800円、ルンバ780が7万9800円。


今後のマーケティング展開としては、10月4日から8日に開催されるCEATEC JAPANにブース出展、10月7日の発売日からはテレビと新聞広告の展開もスタート。WEBではスペシャルサイトも公開されます。


2012年度の販売目標台数は25万台だとのこと。


続いて、大手メーカーでインテリアに関する仕事に携わった後、インテリアコーディネーターとしてさまざまなメディアに登場している家電スペシャリストの戸井田園子さんと、新聞社勤務の後フリーライターとして独立した、家電コンシェルジュの神原サリーさんが登場。ルンバのユーザーとしてさまざまな談話が繰り広げられました。


広報:
ではまず、ルンバを使用したきっかけなどをお教えいただけますか?

戸井田:
2004年に発売されたモデルから、かれこれ約8年間使っています。きっかけというと、とにかく私自身掃除が大嫌いで(笑)、仕事柄、掃除機はたくさん持っているのですが、自分で動かさなくても(掃除を)やってほしいんです。そこがスタートですね。忙しい時や掃除したくない時に使って、その分ほかの家事をやるようにしています。

神原:
私が使い始めたのは530シリーズからなので4年前くらいですね。実は最初は記事を書くために1週間お借りしたんですが、名残惜しくて、その後通販で買って愛用しています。毎日せわしなくしていて、そして私も掃除が嫌いなので、家に帰ってきて私が料理をしている間に、ルンバは掃除をしてくれているという風に、役割分担をしています。

広報:
家電スペシャリストのお二人からも愛されているルンバですが、使ったことのない人からは(ルンバの使い心地について)質問されることが多いです。中でも多い質問のベスト3を紹介しまして、お2人に答えてもらいます。

それでは第3位。「床に物が多い部屋でも大丈夫?」ということですが、神原さんいかがでしょうか。


神原:
先ほど(700シリーズの性能についてのプレゼンテーションでも)お話がありましたが、ルンバはテーブルの脚を見た時に、これが障害物なのか、あるいはお掃除すべき場所なのかということを判断できるようになっています。そのため、脚があってもその周囲をきちんと掃除してくれます。それに、先ほど申し上げたようにルンバとは家事を分担している間柄なので、床に落ちている物くらいは片づけてあげたくなる、家族のような存在と言えます。なので、ルンバの迷惑にならないように片づけてから、その後を任せています。


戸井田:
正直に言って、床中に物があったら(ルンバを動かすのは)無理ですが、ルンバを使っていると、少しでもルンバに広いところを掃除してもらおうという意識が働きます。我が家では一時的に物を入れておく「とりあえずボックス」を用意しておいて、ルンバをスタートさせる前にはソファの上にそのボックスを置いています。ルンバを導入した一番の効果は、部屋が片付くようになったことですね。たとえ部屋に物が多くても、生活の方が変わっていくんです。

中西:
10年近く世界中の家庭の分析をして、ゴミがたまりやすいところをデータベース化し、それを元にプログラミングしているので、ルンバはすみずみまで掃除してくれるんです。


広報:
続いて、第2位です。「本当にきれいになりますか?」ということで、戸井田さん、お願いします。


戸井田:
私もこの質問はすごくよく聞かれますが……私が掃除をするよりはきれいです(笑)テーブルが1台、イスが4脚あったら、その脚は全部で20本。それらの間を全てすき間ノズルを使って掃除機をかけるのは苦手ですし、とても手間ですよね。でも、ルンバを動かすと、くまなくきれいにしてくれます。取れたゴミを見ると、1回でしっかり取ってくれるのが分かります。我が家では室内でペットを飼っているのですが、その毛もしっかり取ってくれているので、私よりはやはり優秀だと思います。


神原:
ルンバはひたむきなんです。何回も同じところを根気強く掃除しています。ただ、同じところをぐるぐる回っているという意味ではなくて、ここをやってから次に移って、また次はあそこもやる……という風に、いろいろな場所を複数回掃除してくれています。時間は人間よりかかりますが、「よくがんばったわね」と言いたくなるくらい、くまなく掃除してくれます。なので、部屋が本当にきれいになります。

中西:
「掃除をしなさい」と命令されているロボットなので、とことん掃除をやりますね。どのご家庭でも満足いただける仕上がりだと思います。

広報:
最後に第1位です。「壁際が掃除はできますか?」。ルンバは形が丸いのでこれはよく聞かれますが、これはいかがでしょうか。

神原:
エッジクリーニングブラシがついているのでそこは問題ないです。3本の触手がくるくる回りながら、壁際にぶつからないながらも端っこの掃除はしていきます。ひたむきにやっていくので、びっくりするくらいとれる


戸井田:
ルンバは目の前が壁だと判断すると直進するようになっています。まっすぐ行けるところはまっすぐ、逆走行したり、さまざまなな方向から2度、3度なめるように進んでいきます。部屋の中はまっすぐじゃないじゃないですか、我が家には壁が曲面になっているところもありますが、そこに沿うように隅のゴミもきちんと取ってくれます。


中西:
エッジクリーニングブラシがひとつのミソでして、ブラシがある前提でルンバはプログラムされているので、カドが当たったと思ったら、そこに沿って動作していきます。だから際まできれいにできるんです。

実は壁際との距離もはかっています。壁センサーがあって、壁とルンバの距離感をはかっていて絶妙な距離を取っているんです。

広報:
本日発表されました700シリーズをお二人にはいち早くお使いいただいているわけですが、ご感想はいかがでしょうか。


戸井田:
まず見た目、フェイス部分がかっこよくなりましたね。歴代のルンバをすべて使っていますが、700シリーズはテーブルの脚など細い物だと判断すると回り出し、平らな壁だとまっすぐ走るという動作をします。初期ルンバにはその辺りの判断にやや迷いがありましたが、今回は瞬時に的確な判断をしています。できれば、お借りしている新型使い続けたいですね(笑)


中西:
今おっしゃったような動作は、iAdoptによるものですね。瞬時に情報を「頭」に伝え、動作に反映する。だからスムーズにテーブルなどの足元に入っていくんです。

神原:
700シリーズを使わせていただいて感じたこととして、まずは動きがスムーズになりました。うちにいる子(ルンバ)は2世代前の物で、かれこれ5年ほど使っているので、その差がかなり印象的でした。無駄な動きがなくてスムーズで、「アナタ頭良くなったわね」、と言いたくなるくらい(笑)


また、ゴミの取れ方も想像以上でした。ダストボックスが700シリーズではそれ以前よりちょっと大きくなっているのですが、それでもダストボックスが短時間で一杯になります。これはブラシの形状が変わっていることもあると思います。

カーペットの部屋を掃除した時にゴミをかきだす力がすごくて、単に表面をなぞるのではなく、ホコリをかきだして取り逃さないですね。あとは、多少の段差は乗り越えて、困らずに進みつつ掃除しています。フィルターが2個ついていて、排気が以前よりきれいになっているのでそこも心強いです。

戸井田:
ダストボックスと言えば、700シリーズからは構造が1層になってので捨てやすくなりました。

中西:
ダストボックスの構造が変わったのは、エアロバキュの副次的効果ですね。毎日使う人であればこそ気づくところだと思います。

広報:
700シリーズには「任せられる掃除力」というコピーをつけましたが、最後に、お2人に(700シリーズの)コピーをつけていただくとしたらどうなりますでしょうか?

戸井田:
お掃除って、うちでは男性の仕事なんです。力がいることもあるし、男家事かなと思っているので、私が考えたコピーは「きれい好きなイケメンロボ」です。今後、「料理好きのイケメンロボ」なんかもでてきたらいいな、という思いも込めて。フェイスも美男子になったので、そういう意味でもイケメンですね。


神原:
私の物は短いですが「賢いルンバ、闘うルンバ」です。自宅にある既存モデルより動きがスムーズになっていたので、余計に今モデルの賢さを実感できました。かきだす力もあるし、段差にも強いので助かっています。

歴代ルンバには、掃除中にもちょっと助けてあげなくちゃ、という感じがありましたが、今回はまったくないですね。ある程度の段差は乗り越えて、家にあるゴミを取り除き、積極的に掃除をしていきますし、フェイスもこれまでの愛きょうのあるかわいいお掃除ロボではなく、すごく洗練されて格好良くなりましたね。


広報:
本日はありがとうございました。

最後は質疑応答。回答は徳丸さんと中西さんが担当しました。

・日経BP社 日経デザイン
先日ドイツで開催された家電見本市(IFA)にLG電子のロボット掃除機「ROBOKING」も出展されていましたが、こちらはWi-Fi対応でスマートフォンから操作できたり、カメラで監視できたりするのですが、今後このような機能はルンバにも搭載されるのでしょうか?

徳丸:
iRobot社のロボットは「シングルファンクション」で、ある目的を遂行するためには最適な形状があるはずだという考えのもとに設計されています。実は、かなり大昔に私自身も「カメラや腕など、さまざまな機能をつけたら便利なのでは?」と同様の質問をしたことがあるんです。すると、(iRobot社から)「シングルファンクションが目標だ」という回答をもらったのです。

ルンバの形状は掃除をするための究極の形です。丸形であれば回転したときにどこにもカドがぶつからないですし、平たいのは薄ければ薄いほどベッドや家具の下に入って掃除ができるからです。現在のサイズに関しても、ダイニングチェアの足の間をくぐりぬけるサイズに設計されています。1mくらいの大きさであれば豪快に掃除できますが、今度はすき間に入っていけません。しかし小さすぎると幅が狭すぎて効率が悪くなります。そのため、現状がバランス取れている形態、大きさとなります。他社さんの後続商品も、同じようなものになってしまうのは、機能美ゆえのことだと考えています。

・日経BP社 日経デザイン
デザインに関してお聞きします。ご存じかと思いますが、AppleとSamsungが現在デザイン特許に関する争いを始めています。日本でも先週提訴が明らかになりましたが、LG電子のROBOKINGはルンバにかなり似ています。AppleとSamsungの訴訟の行方はデザイン、意匠の問題に関する考えを変える大きなものになると思いますが、御社からLG電子に思うところは何かありますか?

中西:
いわゆる意匠権というところに関しまして、(代理店である)私どもがコメントするところではないです。外観だけではなく製品の設計という意味でのデザインは、ロボット掃除機の先駆けであるルンバが先導しているのは間違いありません。それをフォローする方々は、ルンバのことを意識しなくてはならないのではないか、というのが率直な意見です。リーディングマシンであるからこそ、全ての方を想定してデザインしているのです。

先日、目の不自由な人に使ってもらったことがあるのですが、その時にボタンの位置や形状を直感的にすぐわかっていただけました。また、手の不自由な方にも使っていただいたのですが、問題なくボタン押せました。すべての方に使っていただくためのロボット掃除機として、このような事例を挙げさせていただきました。他社がどのような意匠をしているかは存じ上げませんが、万人受けをすることを考えると自然に機能美として似てくるのは自然の摂理だと考えています。

・日本物流新聞
新しいモデルは障害物の判断が的確で速い、段差に強いといった特徴があるとのことですが、そういった強みを何らかの数字で表現できますでしょうか?

中西:
いわゆるゴミ除去率というものに関しては、99.1パーセントということで第三者機関からデータを頂戴しています。その数字は前のモデルと同じと思われるかもしれませんが、実際のところ同じです。

それは、ゴミ除去能力については、すでに実験室環境では行き着くところまで行き着いているからです。あとは、どのような家庭でもそのパフォーマンスを発揮することが求められているのです。ロボット掃除機の普及をどれだけ図れるかというところがキモになってきますので、数字としては表しにくいところがあることをご理解いただければと思います。

・IT&家電ビジネス
今年はロボット掃除機の市場も拡大していて、競合商戦もあると思われますが、ルンバの考える「掃除力」とはなんでしょうか?

中西:
ルンバの考える「掃除力」は清掃能力がどんなときでもどんな場所でも発揮されることだと念頭に置いております。掃除をするロボットですから、仕上げが満足行っていただけないといけません。

使う場所や時間帯はお客様に決めていただくべきものです。あとは使い勝手というところになるかと思いますが、障害物が多くてもきめ細やかに掃除ができることが大切です。プレゼンには出ていませんでしたが、第三者機関から音の測定もしてもらっています。マンションの隣、あるいは下の部屋に運転音がどれだけもれているかということで測定したのですが、真夜中に使ったとしてもほとんど聞こえないというデータが出ています。それが「任せられる掃除機」の特徴のひとつだと考えています。


最後は展示されていた実機のフォト&ムービーレビューです。

歴代機体や日本未発売機体まで登場、「ルンバ 700シリーズ」フォト&ムービーレビュー

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
ロボット掃除機「ルンバ」に日本の住環境に適応した新シリーズ、10月から発売 - GIGAZINE

ルンバに振り落とされる子猫たち - GIGAZINE

Wiiリモコンで操作する壁ロボット「うおーるぼっとNeo」 - GIGAZINE

家庭の掃除機で壁を登れるスパイダーマン装置が開発される - GIGAZINE

操作感が劇的に軽やかになった「ダイソンカーボンファイバーDC26」実機レビュー - GIGAZINE

ゴミを吸い取り、モップをかけ、床の乾燥まで行う究極のフロア洗浄ロボット「Scooba(スクーバ)」 - GIGAZINE

in 取材, Posted by logc_nt

You can read the machine translated English article here.