インタビュー

大魔神もダイモンも蘇る「特撮王国スペシャル~大映特撮からの挑戦状」の現場を取材してきた


10月9日(土)21時から、日本映画専門チャンネルにて「特撮王国スペシャル~第5弾 大映特撮からの挑戦状~」が放送されています。

これは日本映画を専門に扱う日本映画専門チャンネルならではの企画で、日本映画史に残る数々の特撮映画を特集するもの。第5弾では「大魔神」3部作や「妖怪大戦争」、「透明人間現る」など大映の特撮映画を大特集、14作品を一挙に放送します。このシリーズのナビゲート番組として、特撮映画ファンであるフジテレビの笠井信輔アナウンサー、日本特殊メイク界の第一人者・原口智生さん、さらにスペシャルゲストとして「大魔神」を演じた橋本力さんを迎えた「大映特撮を徹底分析!~大映特撮 可能性に挑戦し続けた60年~」が放送されています。

今回、この現場を取材し、出演者にインタビューを行ってきました。なんと、あの「ガメラ」で特撮監督を務め、現在も新作の構想を練っている築地米三郎さんにも特別にお話を伺うことができました。

貴重なインタビュー、そして取材の様子は以下から。
日本映画専門チャンネル『特撮王国スペシャル~第5弾大映特撮からの挑戦状~』



お話を伺ったのは「大魔神」シリーズで大魔神を演じた橋本力さん、そして特撮に造詣が深く、自身も特撮映画「DEATH KAPPA デスカッパ」で監督・原案・特殊造型を務めている原口智生さんのお二人。


ここに置かれているものはすべて原口さんのコレクション。


迫力ある大魔神の顔。映画第1作で大魔神の造型を担当した高山良策さんによるもの。


こちらは胸像。


おもちゃになっても迫力は損なわれていません。


Q:
「大魔神」撮影当時の印象的なエピソードはありますか?

橋本:
「大魔神」をやったのは芝居のことを覚え始めて面白くなってきたという時期でもあり、映画が完成して「やった甲斐があった」という思いがありました。撮影はかなり苦しい行程でしたが、やり遂げてよかったなと。大映で田宮二郎以来という滅多に出ない社長賞をもらい、みんなからうらやましがられました。役者は「いつか俺が主役を」という気持ちでやっているので、私の場合は「大魔神」、そして「妖怪大戦争」のダイモンという主役をできたことがすごい誇りになっています。

この右下の写真に写っているのがダイモン。演じているのは橋本さん。


Q:
最近の映画の特撮についての感想などはありますか?

橋本:
最近、あまり映画などは観ていませんが、コマーシャルの映像で見たりすると身軽にできるんだなと思います。ただ、私の時は鎧のようなスーツ、今のものは動きやすいスーツを着ているので、一概には言えません。あと、時代劇と現代劇の違いもあるかもしれませんね。

原口:
最近だと「かいじゅうたちのいるところ」は、作り方の方法論もテクノロジーも違うけれど、「大魔神」という映画の出で立ちとニュアンスや質感が似ているかなと感じます。

Q:
特撮映画に造詣の深い原口さんにお伺いします。原口さんは子どものころに映画館で「大魔神」などを見て感動したそうですが、今の子どもたちに薦めるならばどの映画を薦めますか?

原口:
「大魔神、逆襲」ですね。これは子どもが主役であるということと、ストーリーが入りやすく、子どもでも心を揺り動かされるようなモノだからです。

Q:
ちなみに、スーツ(鎧)を着ての仕事だと聞いたときの感想は?

橋本:
「どういう仕事なのかな?」と思いました。ちなみに、映画本編(時代劇などの部分)と特撮のスタッフが同じだということは番組の収録で初めて聞いて、驚きました。近ごろの映画はすべてCG合成するそうですが、ブルーバックは奥行きもあり素晴らしい技術です。「大魔神」にはそういう技術が用いられていたんだ、というのを知ってもらえれば、日本映画のためにも幸いですね。

Q:
ダイモンや妖怪も含め、大映特撮のぬいぐるみ造型の魅力は?

原口:
大映といえば、多摩川でガメラを作っていて、橋本さんが生の眼で演じていた大魔神とは違って電飾で目を光らせていたんです。東宝映画のキャラでも電飾を使う怪獣はいましたが、大映は生の眼から電飾まであるような幅の広さが特徴かも知れませんね。大映映画といえば「特撮のための特撮」を作っているのではなく、映画製作のために特撮を挿入しているという点もあります。

黒田義之さん、森田富士郎さんのサインが入った大魔神ブロマイド。今回、橋本さんのサインも入って、原口さんは「感無量です」とコメント。


原口:
「大魔神」のラストシーンでカメラが大魔神の顔に迫っていくときにすごく切ない表情に見えるんです。それは、ぬいぐるみの大魔神ではなく、橋本力という俳優が大魔神という衣装を着て演じているかのようなんです。

橋本:
ラストシーンでは強烈に照明を受けていた記憶があるので、ひょっとするとまぶしくて目が潤んでいたのかもね。それが、監督の狙ったものなのか、偶然かはわかりませんが。

Q:
昨今はCGを使った映画が多いですが、それらとは異なる「大魔神」の魅力とは何でしょうか。

原口:
これはもう単純明快です。「大魔神」は、そこに本物がいるんです。

橋本さんと大魔神。


ちなみに、この大魔神像は原口さんが作ったもの。


仁王像のような力強さがあります。


大魔神になる前の武神像。


大映特撮映画を見るときの参考になるお話の数々、ありがとうございました。


さらに、今回の取材ではベテランの特撮マンであり、1965年の大映特撮映画「ガメラ」で特撮監督を務めた築地米三郎さんのお話を伺うことができました。まだまだ特撮の黎明期ということで、大映初の特撮・怪獣映画を担当するにあたってはいろいろな苦労があったそうです。

築地米三郎さん。


GIGAZINE(以下、G):
ガメラは大映として初の特撮怪獣映画でしたが、どのような苦労がありましたか?

築地:
大映ではガメラの前に「大群獣ネズラ」という映画をやる予定だったんですが、いろんなトラブルがあってやめてしまいました。そのあと、僕は映画本編なのか特撮なのかわからないようなリアルなものばかり作っていました。そこへ、ネズラが中止になったことで何か一つ挽回しなくちゃいけないだろうという、社長からのオファーがあったんです。まだ脚本も決まっていない状態でしたが、「明日、プロモーション内容を書いてこい」と言われまして。それで、高橋二三や斉藤米二郎たちと集まってできたのが「大怪獣ガメラ」だったんです。

G:
かなり急に決まった企画だったんですね。

築地:
特撮というのは、ただ模型を撮るだけではなく、流れがあるんです。ただ着ぐるみを着た人が暴れるだけでは面白くない。映画というのはパンドラの箱じゃなくちゃいけないと思うんです。煙だけが入っているただの玉手箱じゃないんです。お客さんにお金を出して観てもらうわけだから、それだけの価値がなければ映画など作りません。ガメラには心を入れなければいけない。悲しいときも、楽しいときもある。それがガメラであり、それが映画だと、私はいつも思っているんです。

「おまえ、大変だったな」とガメラに語りかける築地さん。


G:
映画は観に行って楽しめるものでなければ、という思いもありますか。

築地:
一口で言いますが、一つのものを作るのは大変ですよ(笑) 限られた予算の中でいかない作っていくか。役者も数人しかいないから、一度撮影したあとにかつらを後ろ前に被って新しい人物の演技をしてみたり、少ない人をやりくりして頑張っていたりね。

誰もが生きている中で、朝、緞帳が上がる。そこから人生の劇場が始まるんです。それを毎日繰り返しているんです。だから、どんなことがあっても手抜きはできない。無い袖は振れませんが、そのキャパの中で動く、それが昔の映画だったんです。

G:
なるほど。ちなみに、インターネットを使ったり、自分のことを調べたりすることはありますか?

築地:
インターネットやパソコンに興味がない訳じゃないけれど、いろんな事をやりたいから……。人生を急いでいるのかもしれないが、やるべきことの急所急所だけをやっています。今からパソコンを覚えるのはもう遅いじゃないですか。それを覚えたらもっと面白いこともできると思いますが、もう時間がない。

鈴木(築地企画常務):
イラストレーターでやればできることも、築地さんはすべて手で作っているんです。

築地:
「餅は餅屋」ではないですが、僕はひとりじゃないんです。野球が一人じゃできないように、映画も特撮もそうなんですよ。

最近、試写会を見に行くことがありますが、主な作品しか観ていません。井上梅次という監督が、僕に必ず「今の特撮を見てくれ」と言ってくるんですが、真似したものを受け売りしたくないから、観ません。やはり、観てしまうとつい触りたくなってしまう。それはイヤだ。だから僕は自己流でやるんです。

鈴木:
今、築地さんが命がけでやろうとしているのは「ネズーラバット」です。

これが「大群獣ネズーラバット」。このイラストもすべて築地さんが手がけています。


築地:
僕はこの作品を東南アジアなど、外国に売りたいんですよ。日本には韓国のメロドラマが入ってきているけど、日本にはメロドラマがない。これではテレビが絶滅してしまう。外国からの刺激を求めなくちゃ。テレビでやるなら、もっと作品を愛してもらいたいですね。

G:
ありがとうございました。

多くの映画人、“写真屋”たちの思いを受けて作られた大映特撮映画たち。今回、日本映画専門チャンネルで放送されるのは以下の14作品です。

「大魔神」10月18日(月)、19日(火)ほか

© 角川映画

「大魔神怒る」10月19日(火)、20日(水)ほか

© 角川映画

「大魔神逆襲」10月20日(水)、21日(木)ほか

© 角川映画

「宇宙人東京に現わる」10月12日(火)、14日(木)ほか

© 角川映画

「虹男」10月22日(金) 、11月1日(月)ほか

© 角川映画

「透明人間現わる」10月24日(日)、28日(木)ほか

© 角川大映

「風速七十五米」10月18日(月)、11月19日(金)ほか

© 角川映画

「西遊記(1952年)」11月3日(水)、11日(木)ほか


© 1952 角川映画

「大あばれ孫悟空」11月3日(水)、12日(金)ほか

© 1952 角川映画

「殴り込み孫悟空」11月3日(水)、15日(月)ほか

© 1954 角川映画

「釈迦」11月3日(水)、19日(金)ほか

© 1961 角川映画

「妖怪大戦争[1968年版]」11月3日(水)、17日(水)ほか

© 角川映画

「妖怪百物語」11月3日(水)、16日(火)ほか

© 角川映画

「東海道お化け道中」11月3日(水)、18日(木)ほか

© 角川映画

これだけまとめて作品を見る機会はなかなかないので、大映特撮の魂を感じつつ映画を観てみて下さい。

日本映画専門チャンネル『特撮王国スペシャル~第5弾大映特撮からの挑戦状~』

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in 取材,   インタビュー,   映画, Posted by logc_nt

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