かゆい所をかくとなぜ気持ち良いのか、長年の謎が解明される
かゆいところをかくと気持良いということは赤ちゃんでも知っていて、有史以前から、というか人類の誕生以前からさまざまな動物がかゆいところをかいてきたと思われるのですが、なぜかくとかゆみが遠のくのかというその仕組みは意外にもいままで解明されていませんでした。その長年の謎がミネソタ大学の研究により初めて明らかになりました。
画期的な新薬やかゆみを止める治療法につながる発見とのことで、糖尿病や肝臓病、抗ガン剤の副作用などにより慢性的なかゆみに苦しむ人にとっては朗報となるかもしれません。
詳細は以下から。Why a good scratch quells an itch - health - 06 April 2009 - New Scientist
Scientists solve the mystery of why scratching relieves an itch | Mail Online
ミネソタ大学のGlenn Giesler博士らの研究により、かゆい所をかくと、かゆみを伝達する神経細胞の活動が抑制され、脳が「かゆくなくなった」と判断するという仕組みが解明されました。
皮膚への物理的な刺激やヒスタミンなどの化学物質に反応し、感覚神経が脊髄視床路(せきずいししょうろ:Spinothalamic tract(STT))経由で脳に信号を送ることにより、人間はかゆみを感じます。
そのかゆみを伝達する神経細胞のうち、「かく」ことによって抑制される神経細胞を特定するために、Giesler博士らはサルの脊髄路に電極を埋め込んだのち、ヒスタミンを脚に注射するを実験を行いました。STT神経細胞はヒスタミンに反応し信号を発しましたが、「かく」ことによりそれらの神経細胞の一部で信号を発する頻度が低下しました。つまりこれらが「かく」ことに反応した神経細胞で、これらの神経細胞に相当するヒトの神経細胞が特定され、神経系がその神経細胞を遮断する仕組みが解明されれば、薬剤や電気的刺激によってその神経細胞の活動を抑え、「かゆみ」を抑える治療法の開発につながるとのことです。
「かゆみ」というと「痛み」などにくらべ軽視されがちで、健康な人にとっては「市販のかゆみ止めをぬればいい」「我慢すればいい」「かけばいい」と片付けられる問題かもしれませんが、腎臓や肝臓の病気、AIDSやホジキンリンパ腫などによる強烈なかゆみには通常のかゆみ止めや抗ヒスタミン剤では十分な効果がなく、かくことにより皮膚がボロボロになったり、感染症の危険が高まるほか、かゆみによる不眠は体力の低下を招いて死期を早めることにもつながるなど、患者にとっては深刻なものです。またガン患者に投与される鎮痛剤の中には副作用として激しいかゆみをもたらすものもあり、かゆみに耐えきれずに投与量を減らさざるを得ないというケースもあるそうです。
今回の研究の成果により、「かく」ことなしに思う存分かゆいところをかきむしったかのようにかゆみが遠のく効果を得られる治療法の開発に期待が高まっています。
・関連記事
睡眠時に「かゆみ」から解放されるパジャマが開発される - GIGAZINE
吸い込むだけで睡眠の代わりになる薬を開発中 - GIGAZINE
「書く」ことがガンに対して効果的だという研究が発表される - GIGAZINE
いびきをかく人ほどエネルギーを消費している - GIGAZINE
・関連コンテンツ