ウイルス検知率99%、ドイツのアンチウイルスソフトシェアNo.1企業「GDATA」はクレイジーな会社だった in CeBIT 2009
アメリカやヨーロッパではフィッシング詐欺やマルウェアを使ったハッキングによる被害が毎日のように起こっています。そんな世相を反映してか、CeBIT 2009ではホール11の大半をセキュリティ関連企業が占めていました。数あるセキュリティソフトメーカーのなかで、いろんな意味で一番盛り上がっていたのがドイツのボーフムに本社を置くGDATA。現在ドイツ本国で、アンチウイルスソフトの売り上げトップシェアを誇っています。
というわけで、CeBIT 2009の開催期間を通してGDATAに密着取材してみました。
日本の会社とはまったく違う雰囲気がよくわかります。
真っ赤な「G」のロゴが目立つGDATAの展示ブース。ちなみに右側にはカスペルスキー、左側にはESETと、この一角には有名セキュリテイソフトメーカーが固まっていました。
開場時間前の和やかなひととき。スタッフはコーヒーやソフトドリンクを飲みながら軽くミーティングをしたり一日のスケジュールを確認したりします。
いよいよ開場。お祭り好きなのか、GDATAはほかのブースと比べてイベントが目白押し。人気PC関連ラジオ番組、「Computer :Club 2」
はGDATAのブースにスタジオを常設。PCのセキュリティについての公開番組などのプログラムを発信していました。
なんといっても衝撃的だったのはハッキングおよびコンピュータセキュリティの専門家によるライブハッキング。キーロガーなどのハッキングツールや、USBメモリに仕込んだ悪意あるプロラムを使い実際のハッカーがどのように個人情報を盗むのかについて、ゲルゼンキルヒェン大学 ITセキュリティ研究所の専門家による解説付きのデモンストレーションです。
アッサリと個人情報が盗まれたことにあ然とする来場者。
ハッキングを行った研究員。ちょっと得意げ。
イベントでは、GDATA製品のプレゼンテーションも行っていました。GDATAの「Anti-Virus」はウイルスの検知率が99%との発表。一年間に亜種も含めれば100万種以上のコンピューターウイルスが作られるなか、ほぼ100%に近いウイルスを検出するというのは驚異的な数値。
ところで「AV-Test.org」という機関をご存じでしょうか?AV-Test.orgはセキュリテイソフトの調査および分析を行っている研究機関で、ドイツのOTTO-VON-GUERIKE大学と提携し、毎年2000以上のアンチウイルスソフトの検査やコンサルティングを行っています。月例レポートも出しており、ドイツのPC専門誌ではたいていこのAV-Test.orgやAV-Cmparetiveなどの第三者研究機関のレポートをもとにセキュリテイソフトの評価を行っています。
GDATAでもこの検査機関のデータをもとに他社製品との比較を行っていました。下のデータは2008年1月から2009年1月までのウイルス検知率のグラフ。GDATA(白)はトップ3社のうち唯一、検知率99%台を維持しています。
次は新種のウイルスにアップデータが対応するまでにかかった時間。GDATAのアンチウイルスソフトは発生からから19分で対応していますね。
60GバイトのHDDをウイルススキャンした際にかかった時間を表にしたのがこちらのデータ。単位は分ですから、わずか1分少々でスキャンが終わったことになります。
最後は競合製品との価格差。これだけ性能が高く値段が割安ならば、合理的な考え方をするドイツでトップシェアを維持しているのもうなずけます。ところで「比較対象の競合製品はどこのアンチウイルスソフト?」という疑問を持つ人がいるかもしれませんね。諸般の事情からハッキリとは言えないのですが、ヒントはグラフの線の「色」です。
99%の検知率を維持している理由は一体何なのか、GDATAセキュリティ研究所長であるラルフ・ベンツミュラー氏に聞いてみました。彼は第一に「高性能なウイルス検知エンジンを2種類搭載し、随時見直しを行っていること」を挙げました。また「ウイルスと確定できなくても怪しい動きをするプログラムを検知する“ヒューリズティックエンジン”という技術を用いることで、感染を未然に防ぐ確率が格段に上昇した」とのこと。そのほか「セキュリティに関するワークショップを開き、そこでユーザーから上がってきた意見や要望を製品の改良に反映させている。それにGDATAはフレキシブルな会社なので問題にすぐに対応できる点も品質の向上に繋がっているのでは」とのお話でした。
午後6時。CeBITは終わってもGDATAのブースこれからです。アフター6はスタッフたちのお楽しみの時間。パーティタイムに上司と部下の垣根はありません。というか、GDATAの社員に話を聞くと「組織上役職に上下はあるが、基本的にはいつもこんな感じ。じつにフラットな会社」だそうです。
サングラスをかけた右側の紳士はGDATAの創業者。チョイ悪オヤジ風。
程よく酔いが回ってきたところでジャムセッションが始まりました。ちなみにギターをつま弾くのは幹部の1人。ドラムはパッケージデザインなどを作るデザイン部門のマネージャーです。
9日の土曜の夜は特に盛り上がりました。GDATAに関係のある人もない人も集まっての大騒ぎです。
司会をしている金髪アフロの御仁もGDATA幹部。
CEOのディルク・ホッホストラーテ氏はパーティの盛り上がりにご満悦。こんな人が社長だったら会社に行くのが楽しくなるかも。
CeBITの開催期間、6日間GDATAに密着したわけですが、一言で言ってこの会社はクレイジーです。トップのやんちゃさ加減もクレイジーならパーティの盛り上がりもクレイジー。そのうえウイルス検知率99%という数値も常軌を逸しています。でも、楽しんで仕事をした結果がドイツ国内シェアNo.1なのだから。「一生は夢よ ただ狂え」という織田信長の言葉を思い出してしまいました。
参考までに、1月末に発表されたAV-Test.orgのテスト結果を見たのですが、意外なことに、日本国内で売られている結構な数のPCにプリインストールされている某社製ソフトのウイルス検知率は13製品中最下位でした。知らない人もいるかもしれませんが、GDATAのアンチウイルスソフトは日本でも売られています。ラルフ氏のお話によれば、2007年から2008年の1年間で、ウイルスの種類はおよそ7倍に増えたのだとか。みなさんも気をつけましょう……。
(取材・文:渡邊浩行、編集:GIGAZINE編集部)
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