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飲酒運転で逮捕された男性が無罪に、体内でアルコールが生成される特殊体質と認定


胃腸でアルコール発酵が起きて血中エタノールが上昇し、飲酒してもいないのに酔ってしまう珍しい体質「自動醸造症候群(ABS)」を持つベルギーの男性の飲酒運転をめぐる裁判で、裁判所が男性に対する検察の訴えを棄却しました。男性の弁護士は、世界で20人ほどしかいない症状を持つクライアントの勤務先がビール醸造所なのは「不幸な偶然」だったとコメントしています。

2 promille alcohol in zijn bloed, maar toch vrijgesproken voor rijden onder invloed: man uit Brugge lijdt aan autobrouwerijsyndroom | VRT NWS: nieuws
https://www.vrt.be/vrtnws/nl/2024/04/22/vrijspraak-autobrouwerijsyndroom/

Belgian Man Whose Stomach Brews Alcohol Beats Drink Driving Charge : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/belgian-man-whose-stomach-brews-alcohol-beats-drink-driving-charge

Belgian beer worker has drink-drive charge thrown out because he suffers from auto-brewery syndrome, which causes his body to produce alcohol | Daily Mail Online
https://www.dailymail.co.uk/news/article-13339361/belgian-beer-worker-drink-drive-charge-dismissed-auto-brewery-syndrome.html

今回、飲酒していないのに飲酒運転の罪に問われてしまったのは、ベルギーに住む40歳の男性です。プライバシーのため身元が明かされていないこの男性は、2022年4月に警察に車を止められ、呼気検査を受けたところ呼気1リットル当たり0.91mgのアルコールが検出されました。また、1カ月後の検査でも1リットル当たり0.71mgのアルコールが検出されたとのこと。

ベルギーの法律では呼気1リットル当たり0.22mg、血中アルコール濃度に換算すると1リットル当たり0.5gに相当するアルコールが検出されると飲酒運転に該当します。


男性は、2019年にも同様に飲酒運転が疑われたことがあり、飲酒はしていないと抗議しましたが、罰金と運転免許停止処分を受けてしまいました。しかし、今回の裁判で男性は3人の医師による個別の検査を受け、正式に「自動醸造症候群(ABS)」との診断を受けることができました。今回診断を受けるまで、男性は自分の体質に気づいていなかったそうです。

ABSは、消化器官の中で炭水化物が発酵されることにより、ちょうどビールができるのと同様のプロセスで体内でアルコールが生成され、飲酒していなくても酩酊(めいてい)してしまうことがある珍しい症状で、ABSと認定された人は世界に20人ほどしかいないとのこと。

過去には膀胱(ぼうこう)でアルコールが生成されるさらに珍しい症例が発見されたこともあります。

女性の膀胱でアルコールが生成されていた - GIGAZINE


医師による診察結果から、裁判所は「この事件には法律で想定されていない不可抗力があった」と認め、2024年4月22日の裁判で男性に無罪の判決を言い渡しました。検察側は男性を運転不適格者と認めるよう訴えましたが、裁判所はこれも退けました。つまり、男性は引き続き車を運転できますが、酒気帯び運転に陥れば処罰を受けます。ただし、2019年の罰金と免許停止処分は覆りませんでした。

男性の弁護士であるアンス・ジェスキエール氏は、「依頼人がビール醸造所で働いているのは不幸な偶然でした」とコメントしています。

男性とジェスキエール氏は目下、正式な無罪判決の通知を待っているところですが、もし検察が判決を不服とした場合、1カ月以内に控訴することも可能です。

男性は診断を受けて以来、体内でアルコールが生成されるのを避けるために炭水化物を控える食生活を続けているほか、健康なドナーの便を患者に移植し、原因となっている腸内の細菌のバランスを変える「糞便(ふんべん)移植」も受けているとのことです。


ベルギーでは、2020年にも別の男性が一滴も飲酒していないにもかかわらず2カ月間にわたって散発的な酩酊状態に陥り、病院で診察を受けてABSだと判明したことがあります。

男性を診察したゲント大学病院は、低炭水化物食を処方しても効果がなかったため、糞便移植に踏み切りました。この治療はすぐに効果を発揮し、治療から34カ月後の検査でも再発していないことが確認されたとのことです。

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in 乗り物,   サイエンス,   メンバー限定, Posted by log1l_ks

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