サイエンス

ブラックホールが銀河を「飢えさせている」ことが判明


強い重力を持ち、光さえも逃れられないとされる「ブラックホール」を調査した結果、ブラックホールが新しい星の形成を阻害している可能性があることが判明しました。

A fast-rotator post-starburst galaxy quenched by supermassive black-hole feedback at z = 3 | Nature Astronomy
https://www.nature.com/articles/s41550-024-02345-1


Astronomers detect black hole 'starving' its host galaxy to death
https://phys.org/news/2024-09-astronomers-black-hole-starving-host.html

Black hole spotted by James Webb Space Telescope “starving” its host galaxy to death
https://cosmosmagazine.com/space/astronomy/black-hole-starving-galaxy-webb/

ケンブリッジ大学の天文学者であるフランチェスコ・デウジェニオ氏らが調査したのは「GS-10578」と呼ばれる銀河です。この銀河は天の川銀河とほぼ同じ大きさですが、質量は約2000億倍。距離は天の川銀河から120億光年ほど離れており、現在地球から観測できる姿はビッグバンから約20億年後、宇宙誕生の初期のものだといいます。

デウジェニオ氏らは、この銀河が本質的に「死んでいる」、つまり新しい星の形成がほとんど止まっていることを突き止めたのですが、一時的に星が形成されていないだけなのか、それとも恒久的に形成される見込みがないのかが判断できませんでした。


そこで、デウジェニオ氏らはNASAのジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡を使用し、GS-10578の中心にある超大質量のブラックホールを観察して関連性を追究しました。

その結果、GS-10578は大量のガスを毎秒約1000kmの速度で排出していることが判明します。これはブラックホールによってもたらされる「風」で、その速度はとても速く、銀河の重力から逃れるのに十分なスピードでした。銀河から放出されるガスの質量は、銀河が新しい星を形成し続けるのに必要な質量よりも大きく、つまりブラックホールが「星を形成するのに必要な食料を吹き飛ばしている」ということがわかったといいます。


このガスは冷たく、密度が高く、光を発しないため、以前の望遠鏡では確認できなかったそうですが、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の優れた感度により発見に至りました。それまでは理論上でしか語られなかったブラックホールの活動が、望遠鏡により観測できた形です。

デウジェニオ氏は「ブラックホールが銀河に大きな影響を与えることは知っていましたし、おそらく星形成を止めることはよくあることなのでしょう。しかし、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が発見するまで、私たちはこの銀河を詳細に研究することができず、星形成の中断が一時的なものなのか永続的なものなのかもわかりませんでした」と述べました。

共著者であるカブリ宇宙論研究所のロベルト・マイオリーノ教授は「宇宙初期にはあまたの銀河がたくさんの星を形成しています。このような巨大な死滅銀河を見るのは興味深いことです。GS-10578はあまりにも巨大なサイズですが、このようなサイズになるのに十分な時間があったと仮定すると、星形成を止めたプロセスは比較的早い段階で起こった可能性が高いです」との見解を述べました。

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in サイエンス, Posted by log1p_kr

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