インタビュー

デジタル・フロンティアに「GANTZ:O」をどう作ったのか徹底的に聞いてきた その8・コンポジット編


CG制作会社デジタル・フロンティアの各セクションの方々に、映画「GANTZ:O」をどうやって作ったのか根掘り葉掘りインタビューしていく企画もとうとう最後のセクション、「コンポジット」です。最後の最後、世の中に出すために絵を作るためにはどのような作業が行われているのか、CGスーパーバイザーの齋藤和丈さんにお話を伺いました。

プロダクションマネージャー 舟橋俊さん(以下、舟橋):
最後は、一通りの行程が終わってライティングに入るというタイミングですね。

CG制作部 CGスーパーバイザー 齋藤和丈さん(以下、齋藤):
そうです。部署としては一番最後の工程で、アセット、キャラや背景やモーションキャプチャーを使ってアニメーションをつけてカメラをつけてフェイシャルとつける……というようなことを全部パーツとして1カ所にまとめた上にライティングをして、レンダリングをして素材を出して、またそこから2Dベースのコンポジット、というところです。

川村泰監督(以下、川村):
重いヤバいデータが最後に集合するところです。

齋藤:
そうですね。

GIGAZINE(以下、G):
重いヤバいデータ(笑)

川村:
しかも最後の仕上げなので、プレッシャーは相当にあると思います。それに、大抵の場合は、スケジュールが押しに押していくので、神経がすり減ります。

齋藤:
このあとポスプロでのカラーグレーディングがもう一段階あるんですけど、基本的にはコンポジットをして上がった絵が世の中に出る最終的な絵面になるので、監督も当然、一番厳しく接するところです。

川村:
「君の名は。」を見たら、新海誠さんも名前がスタッフロールの「撮影」の最後に載っていました。僕もコンポジット(撮影)をやっているので、名前を入れておけばよかったです。

G:
なるほど。

舟橋:
ただ、今回は名前は1人1カ所になっています。エンドロールを見てもらうとわかるんですが、結構人がいまして、社内で仕事にかかった部署ということになると数は3倍ぐらいにふくれあがります。

川村:
掛け持ちの人もいますからね。

舟橋:
例えば、「背景」として出てきた源さんは一部ではコンポジットのリーダーも担当していました。3部署でやっている人もいたりします。

川村:
彼の場合、背景のプロフェッショナルなんですが、コンポジットもかなり上手いんです。デジタル・フロンティアにはそうやって得意ジャンルを2つぐらい持っている人がたくさんいるんです。

齋藤:
基本的には分業していますが、次の段階に入っても重複して作業を続けることができ、どこでも活躍できるというスタッフがいるという感じです。

G:
なるほど。

齋藤:
見ていただくのはコンポジットの「ブレイクダウン」です。

G:
これはすごい。

川村:
「どうやってロボの巨大感が出ているんだ」という質問がありましたので、どうやっているのか、素材を重ねていく過程を分解したものです。

齋藤:
ちょうどここは僕が個人的に担当したショットになります。

G:
うわぁ……すごい……。

川村:
まず、元の素材はこういう感じで「ロボが立っている」という絵なんです。背景のときに「すごくリアルだ」と言っていたものはこの背後、光がもわぁっと広がっていて、キャラは省略していますが、カラコレしてこうなっています。背景素材があって、ロボが置かれて、そのロボからプシューッと煙が出て、人物が乗った上から光の演出が入り、ヘリが入って……ここではレンズディストーションをあえて入れています。今、レンズでもこんなに歪まないんですが、「あえて」の歪みです。


齋藤:
どうしてもCGで作ると硬く仕上がってしまうので、そういうところをあえて入れます。

G:
レンズでのぞき込んでみているような印象は、この効果なんですね。

齋藤:
CGで何もせずに作るとそういうのは一切なく、「全部まっすぐ!」でパキパキッとした絵になって、硬く見えてしまうんです。

G:
なるほど。光の筋は監督へのインタビューで説明いただいたものですね。

川村:
そうです。

G:
こうやって素材を重ねていってもらうと、だんだんロボが大きく見えていく感じがします。

齋藤:
昼間とか夕方だと、空間の広さとか空気感、コントラストが下がっていったりとかで巨大感を出せるんですが、今回は夜なので空は黒く、「暗く仕上げたい」という監督の意向もありまして、コントラストの処理ではあまり巨大感を表現できないので、そこをカバーするためにも全ショットに及んでフォグ(煙)とかをしっかり乗せていって、巨大感を演出していきました。

G:
霧が入って光が強く当たると巨大感が出るんですね。

川村:
この映像は掲載してOKということなので、でお渡しします。

G:
ありがたいです、監督のインタビューの時に言葉で説明していただきましたが、それを映像で掲載できるとは……ぜひ、どうやって巨大感が生まれるのかはみんなに体感してもらいたいですね。

ということで、提供していただいた映像がコレ。レイカと鈴木さんが、ステルスを解除して姿を現したロボを見上げるシーンがどのように作られたのかがわかります。

CGMAKING_GANTZ:O_04 - YouTube


川村:
この感じがないとCG然とした絵になってしまうので、いろいろなものをフル導入しました。入れていないものといえば、唯一、雨ぐらいだと思います。これで雨が降っていたら、たとえばヘリコプターのライトが奥の方にあってキラキラして「うわっ」とまた驚くものになると思います。

舟橋:
ちなみに、これで雨が増えた場合、さきほどエフェクトで「900ショット」という話がありましたが、そこにさらに要素が増えるという感じなんです。

G:
うわぁ……それで「これはいけない、雨はやめておこう」という話になったんですね。

川村:
さすがに「何言ってんだ!」ですよね(笑)

齋藤:
降っている雨もですが、雨が降ると地面が濡れたり、水が流れたりという動きが出てくるので、CG技術の相当難しいレベルのことになってきてしまうんです。

G:
なるほど。それでも、今回は雨こそ降らなかったものの、夜にこの戎橋でというところはやはり変えられない部分ですもんね。あくまで漫画であればそこまで考えなくてもいいかもしれないけれど、CGになると一気に難しい点が増えてくる。

齋藤:
もう一つ、ライティングとコンポジットはものすごく綿密に関わっています。

川村:
画の作り込みですよね。

齋藤:
そうです。

G:
こんなに重なるものなんですね。

CGMAKING_GANTZ:O_05 - YouTube


齋藤:
さっきの方は空気感などの全体的なシーンの構築だったんですが、これはキャラのライティングをベースに少し分解してみた形になります。基本的にこれが最初のルックなんですけど、まずはこういうコンセプトアート、カラーキーと言われるようなもの、まず絵を起こして、それに合わせて。これがディフィズと言われる何もライティングされていない状態ですね。これに左からのライトを足して、向こうからの押さえのライトを足します。広角ライトの要素がリフレクションとかで乗ってきて、そういうものがついて銃のライトと、モニタがあるのでそこからの照り返しを足して、これをコンプでキャラとして多少いじって最終の絵面になります。

G:
ありとあらゆるところに光源があるんですね。確かに町中なので当たり前といえば当たり前かもしれないですが。

齋藤:
背景も基本的には同じようにライティングしています。日中のお昼とかだと太陽の一発みたいな絵が成り立つのですが、夜でイルミネーションがものすごく多くて、いろいろな場所にいろいろなライトの要素があるというのを再現するのが今回のテーマでした。

G:
映画を見ていて、そこら中が光っているけど、全部ちゃんと映っているなと思っていました。

齋藤:
ライティングとコンポジットはまた綿密に関わっていて、こういうライトごとの要素を一つ一つ素材として別々に足して、コンポジット上で強さとか色も多少いじりながら最終の絵に落とし上げていくというのがコンポジットの作業になります。

G:
ものすごくディテールというか、クオリティが上がっていきますね。こういうシーンでは監督からはどういった注文が出されるのですか?

川村:
1つはキャラの魅力がどう出ているかとか、演出上のライトの角度とかそういった演出的な部分で、もう1つは「リアルじゃない」とかですね。「もっとリアルにしてくれ」と。場合によっては、環境に合っていなかったりするんです。後は、暖色と寒色が常にあることで絵の魅力が増すので、それがどれぐらいの比率であって欲しいとか、これはもう勝手にやってもらったのですが、動くことでライトの角度が変わるのでそれをより強調したりとか。

齋藤:
ライティングで言いますと、例えば背景はイルミネーションとかあるべきところにライトを置いて、基本的なライティングがされています。普通の現実世界で言えば、そこのライトの環境にそのままキャラを入れれば単純に馴染む絵ができあがるんですが、それだとキャラが立たないですよね。そこで演出上の意図もくみ取りつつ、それでも馴染んだ絵にするというのが一番難しいところです。

G:
ふーむ、実写映画の照明そのものですね。

川村:
今回は夜のシーンで、人物の表情が拾いづらいので、実写なら当然ですがあえて顔にライトを当るところなんです。そういう演出をしているショットもありますが、場面がずっと夜なので、それをやると嘘くさくなってしまいます。ホラー要素もある作品ですから、どれだけ自然に顔にライトを当てるかということを考えたとき、銃のモニターのライトを当てるというのをかなり早い段階で思いつきました。

G:
!! 今回、銃のデザインが変更されたという点で、後ろ側にモニターがついたという話があって「ほうほう、そんな変更が」と思っていたんですが、こういうことだったんですね。

川村:
そうなんです。宇宙服を着たSF映画って、なぜか宇宙服の内側の顔が明るくよく見えていますよね。あれば、顔を見せないと表情が見えづらくなって感情移入度が下がるので、あえて、中からライトを当てているんです。それと同じなんですよ。もしこのライトがなかったら、素材で見てもらうとわかりますが、相当に暗いです。

齋藤:
そうですね、こんな感じになります。この絵ができたのは2016年に入ってからぐらいですが、そもそも「こういう絵を狙う」ということでコンセプトが描かれたのは、もう相当前です。

川村:
6月ぐらいですね。

齋藤:
早い段階で最初のイメージが固まっていました。

川村:
顔にライトを当てないとどうしようもないですから。

齋藤:
ただ、これはあくまで本当に絵であって、CGはそこまで好きなようにはできないというか、好きなようにライティングするとどうしても胡散臭くなり、リアルな絵ではなくなってしまうんです。なので、ある程度は物理ベースで現実世界の光をシミュレートして、現実世界で起こる光の減衰とかをそのまま再現してライティング、レンダリングするというのが基本セオリーになっています。ところが、絵だとそういうことを踏まえずに、単純な理想が描かれていたんです。これを、物理学に反しない形で再現して、胡散臭くならないようにするのがライティング作業の難しいところだと思います。

G:
バランスをどれぐらい取るかというせめぎ合いになってきますね。

川村:
絵だと割とどんなものでも受け入れてしまうんですけど、CGでその通りのライティングをしてみると、よく「これは何かがリアルではない」となるんです。

齋藤:
なりますね。

川村:
そこの落としどころはちゃんと彼がジャッジして、「川村さん、絵だとこうですが、こうした方が良いです」というような話し合いをしながらやっていきました。

齋藤:
後はコンポジットとライティングについて、僕の方で一通りシステムを考えていたので、ライティングではこれぐらいにしておいて、これであればここの素材をこうしてコンポジットの方で狙った絵にできる……というのもリアルなところでジャッジができるようになりました。

G:
……今、1シーンだけを見せてもらって唸っていたんですが、これを映画全編にわたってやっていくわけですよね。夜のシーンが一部だけならともかく、ほぼ夜のシーンなので、苦労する部分ばかりじゃないですか?こんなことになっていたとは思いませんでした。

齋藤:
これを見てもらうといいかもしれません、今回のコンセプトの……。

川村:
カラーキーです。


舟橋:
新宿で開催しているGANTZ:O_VRで一部見られたと思うんですけど、基本的に1シーンに1枚あります。全部だと何枚ぐらいあるんでしょう?


川村:
……覚えてない(笑)

齋藤:
全部では……180枚ぐらいあるんじゃないですかね。これを6月とかの早い段階で決め込んでしまって、それに沿ってライティングやコンポジットが進んでいく感じです。

G:
なるほど。

川村:
光の強さや色にはそれぞれ意味があるので、それを決めていきます。

齋藤:
ほぼほぼこの通りに仕上がっていると思います。

川村:
これは映画の流れで、カラースクリプトというのは色の脚本なんですけど、色で話が見える様になっています。映画の構成は3幕構成になっていて、色の変化でストーリーが分かる様にしていて、Act3ではたいてい主人公が窮地に陥ることが多いのでピンクの部分があったり、赤っぽくなっていったりするように、全体の絵の流れとして計画しています。ただ単に夜だから格好良くしたいのではなくて、このシーンはこういう意味があるからこういう色とか、ここで青を使っているからここでは青をやめておこうとかそういう計画です。理詰めで絵を事前に作って考えてやっています。

齋藤:
これをデジタルでコンポジット上で狙えるようにシステムを組み上げたという感じです。

G:
すごい、これを見ると一目瞭然ですね。

川村:
ハリウッドとかディズニーピクサーはこれを当たり前のようにやっているんです。もちろん、我々も考えてやってはいるんですが、こういうことを考えるのが今まではおざなりになっていました。そうすると、スケジュールも迫る中、後半になってブレブレ……というのは危ないですから、重要な絵の方向性については1年ぐらい前に「だいたいこうでしょう」と決めておきます。


G:
それはすごいですね。

齋藤:
これがあると本当にライティングとかもしやすかったりします。ただ、やはり物理ベースというか、そことの差を埋めるのがなかなか難しいところではありました。

G:
絵ではこうなっているけれども、というところですね。

齋藤:
ライティングだけではなくコンポジットだけでもなく、どちらも含めた上で狙っていける状態に上げていくということで、そこは今回しっかりやれたと思います。

G:
圧巻です。

川村:
意外と理詰めなので、そんなに僕は苦労しないんですが、みんなにやってもらう作業はとてつもないですよね(笑)。つまり、ここでぶれてしまうともっとみんなに迷惑を掛けてしまうということなので、どれだけぶれないか、そのために最初にしっかりと決めておくということです。

齋藤:
実際にこれがコンポジットの作業画面で、この一個一個がこういうレイヤーを持っていまして、かなり広大なワークスペースになっています。その分かりやすいのが……これですね。


G:
これは……何ですか?(笑)

齋藤:
After Effectsの一つ一つのコンポジションと呼ばれるものなんですが、これが1個で、その中にレイヤーがこれだけばーっと並んでいます。この数が実際にはこれだけあって、なかなかの構成です。

G:
作業忘れが怖いですね。

川村:
僕も最初に見た時はギョッとしました。最初に指針コンプを僕がやるんですけど、このデータを渡された時、「これ、どうやるの?」って。

齋藤:
「これに沿って、この中で絵作りをお願いします」と言ったんです。

川村:
「これに沿ってやらないと、みんな自動化できなくて大変なことになりますよ」と言われたので、「それは大変だ」と、必死でこれを理解してやりました。

G:
これはすごいですね。

齋藤:
これもBGのレンダーした素の素材。BGを少し合わせて、煙を足して、フレアとかピンぼけとかがありますね。それで背景はベースができて、キャラクターのベースのライティングの素材にカラコレをして、フレア類とか、背景とキャラを合成した上でグレーディングとかをして、ノイズとかをあえて乗せて自然な絵に仕上げます。それをこの量やっていく。一個一個の素材に対してカラコレとかをしていくという形です。

舟橋:
ここはまだおとなしいシーンですけど、激しいシーンだともっと大変なことになります。

齋藤:
多いところだと素材が300個で、それはなかなかないです。

G:
そんなにいっぱいあって、よく動きますね。

川村:
たぶん、もう再生しないでコンポジットします(笑)

齋藤:
After EffectsにはRAMプレビューという機能がありますが、それは基本的にできません(笑)。「こことこことここをポイントにして基本は絵を作って、とりあえずレンダーしてみる」です。そして、できあがった絵を見て、直すところを決めます。

ちなみに、齋藤さんのAfter Effectsでの作業画面はこんな感じになるそうです。


G:
こういうのを見ると、Intelでも誰でも良いから、もっと速いCPUを作ってくれという感じですね。

舟橋:
そして、安くしてもらいたいです……。

G:
本当に、安く速くですね。まだまだリソースは足りないと。

齋藤:
足りないですねー。

川村:
それなのに、巷では4Kとか8Kとか、しまいにはワクワクする話ではありますがVRとか言い出したりしていて……そうなると、ますます追いつかないです。

齋藤:
すでにエフェクトの話は聞かれていると思いますが、ここのエフェクトがまたキャッシュとかいろいろ容量を食う部署なんです。エフェクトだけ単独の独自のサーバーを持っていまして、そこをフル活用しています。

舟橋:
サーバーで120TBあって、それでも入りきらないので個人のローカルにもある状態です。

G:
完全にデータ量との戦いですね。しかも全部失う訳にはいかないという、これはキツい。

齋藤:
今回は総容量でいうとどれぐらいだろう。

舟橋:
200TBぐらいじゃないですかね。エフェクトは120TBぐらいです。

G:
次ぐらいでペタが見えてきますね。

齋藤:
バージョン違いまで合わせるともっとあると思います。これでも古いものは捨てていたりするので、延べ容量となると……。

川村:
ハリウッドは、とっくにペタにいっているという話は聞いています。

齋藤:
いっていますね。

G:
うはぁ、これはキツい。

齋藤:
トゥーンですけど、「APPLESEED」をうちで作った時に、1TBのサーバーを初めて導入したんです。そこから考えると、あっという間にとんでもない時代になってしまいました。

G:
GIGAZINEも誕生は2000年で、その頃はまだフロッピーディスクも現役でしたから、1GBというとなかなかの容量でした。だからGIGAZINE(ギガジン)なんですが、気がついたらギガなんて小さな単位になってしまって(笑)

川村:
今ならペタジン、ですか(笑)

G:
だんだん単位が大きくなっていくので感覚がおかしくなっていきますね。それこそ年ごとに倍々で増やさないと(笑)

川村:
今、ムーアの法則を維持していくことが怪しくなってきたみたいですね。

G:
破綻するかも知れないと言われています。さっきのモーションキャプチャーでももっと精度を上げるという話がありましたが、これ以上精度を上げるということはデータが増えるということに繋がって、コンポジットで「もうレンダー出来ない!」ということもありそうな気がします。

齋藤:
今、いろいろなエレメントと呼ばれる素材が入った一つの素材の連番を書き出すことがあるんですが、そこでさらに高度なことをしようとすると、ディープコンポジットといって、ディープという情報を持たせることができるんです。それはピクセル単位でZ軸の奥行きの情報を持っているんですが、その情報を付加すると、ヘタすると1枚当たり1GB、みたいなことになります。

舟橋:
今回の映画は約90分なので、換算すると、24分の1秒で1コマ1GB、1秒で24GB、1分で1440GB、それが90分……。

G:
実作業の現場ではそれ以上ですもんね、これは……ヤバい。

川村:
もう「ヤバい」しか言えないぐらいヤバいです。語彙力がなくなってきます(笑)

G:
しかもこの作業をするのは作業の終盤ですよね。

齋藤:
はい、一番後ろです。

G:
それでも、チェックして監督がダメと言うことがあるんですよね……。

川村:
結構言いました。

G:
キツい……。ちなみに、この作業で想像以上に上手くできたというのはどの辺りですか?

齋藤:
個人的には、今までうちの映画は16bitと呼ばれるような、白と黒で真っ白になった時点で完全に色が切れてしまってそれ以上の輝度を持たない、完全に白がMAXの値でのコンポジットだったんです。それで容量をある程度抑えられるし、コンポジットの速度も速いんですが、今回はコンポジットがものすごく重くなることを覚悟した上で、1以上の数字を常に持った状態で、32bitでのコンポジットを徹底しました。それに加えて、今までのプロジェクトのどれよりも拘って、そこを踏まえて結構な人数で、全体の作品を通してクオリティを安定して一定のレベルで仕上げるということで、自動化とか効率化のためのツールを作ったり、ワークフローを考えたりというところに一番力を入れましたね。デザイナーにも力の差があるんですけど、それが最初の絵に現れては結局ダメなので、一定したクオリティをどんな人間が担当してもちゃんと出せるシステムを構築することに一番時間を割きました。

G:
なるほど、それがこの作品を土台としてしっかりと支えたんですね。あと、これは言っておきたいという事があればぜひ。

齋藤:
今回は個人的にもバランスが取れて自信の持てる作品ができたと思っていますが、今後、先ほど言われていた雨とかを入れつつ、さらにレベルを上げていき、どんな方が見ても特に分かる形でCG全体のクオリティを上げていきたいなと思っております。……あと、予算を上げて欲しいです!

G:
それは大事です!ありがとうございました。

・つづき
これでデジタル・フロンティアの各セクションへのインタビューは終わりなのですが、最後にもう一度、川村泰監督に「GANTZ:O」について語っていただきました。

デジタル・フロンティアに「GANTZ:O」をどう作ったのか徹底的に聞いてきた その9・川村泰監督編 - GIGAZINE

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