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1996年のQuake関連ゲーム全部入りCDはなぜ39日でクラックされてしまったのか


1996年に発売されたファーストパーソンシューティング(FPS)ゲーム「Quake」は、「これまで作られた最高のビデオゲームのひとつ」としてよく挙げられる名作で、フル3DFPSの元祖ともいわれています。一方で、「Quake」のCD-ROM版が発売されてからわずか39日後にハッカー集団に暗号化が破られたことで、大きな失敗も招いています。そんな「Quake」の失敗について、ゲーム系開発者でブロガーのファビアン・サングラール氏が解説しています。

Quake Shareware, a CD-ROM just a little too full
https://fabiensanglard.net/quake_shareware_cd/index.html

サングラール氏によると、1990年代半ば頃には非常に高価なIntel Pentiumプロセッサを除くと、PCで最もクールなアイテムはCD-ROMドライブであったそうです。当時のPCが搭載するHDDの約3倍もの容量があるCDにより、当時としては高解像度の640×480ピクセル・256色のパレットインデックス画像やVOC音声、12fps・240×179ピクセルの滑らかな動画も扱えるようになりました。

ビデオゲーム開発者にとってもCD-ROMは扱いに困る存在であり、その容量はゲーム開発者が扱うアセットの量をはるかに上回っていたとのこと。「Quake」や「DOOM」の開発元であるid Softwareの開発者であるジョン・カーマック氏は1994年に「CD-ROMを使ったゲームには大量のデジタル化された音声や動画が含まれていると人々は期待しています。もし私たちがDOOMのCD版を出すとしたら、ゲームと1時間の長編映画『DOOMの制作』を収録できるということです」と語っていました。

そんなid Softwareは1996年6月に、3年かけて開発したタイトル「Quake」を完成させました。「Quake」は当初、シェアウェア版(無料体験版)とフルバージョンの両方をリリースする予定でしたが、フルバージョンでもわずか約23MBであったため、CD-ROMの容量を大幅に余らせていました。そこでid Softwareの開発者たちは、CD-ROMの残りの容量を活用するため、id Softwareの全ゲームカタログの暗号バージョンを含めることを決定しました。

実際に1996年7月3日に発表され8月30日に発売された「Quake」のCD-ROMには、「Quake」を含むid Softwareの全ゲームが暗号化されて入っていました。各ゲームはそのままでは体験版しか遊べないため、フル版を遊ぶためにはCD-ROMに記載された番号に電話をかけて注文し、クレジットカードで料金を支払うことで暗号解除キーを受け取ります。こうして初めてゲームをプレイできるため、ユーザーはゲーム用のCD-ROMを個別に買う必要がなくなり、メーカー側は小売店などの中間業者を介さずに販売できるという狙いでした。以下は、Internet Archiveに保存されている「Quake」のパッケージ。


以下は「Quake」のCD-ROMです。


しかし、ハッカー集団の「GNOMON」は「Quake」のCD-ROMが発売されてわずか39日後に全てのゲームを復号できるツールを含めた「Quakecrk.zip」をリリースしました。id Softwareとそのポップカルチャーへの影響について記した書籍「Masters of Doom」では、「『Quake』のシェアウェア販売実験は大失敗に終わりました。id Softwareは、ゲーマーがシェアウェアを購入した後、電話でゲームを注文してアンロックするシリアルを受け取ることで、小売店を排除するつもりでした。しかし、シェアウェアはすぐにハッキングされ、ゲームのフルバージョンが無料でアンロックされてしまいました。さらに悪いことに、流通や注文処理といった日常的な作業が全て制御不能に陥りました。id Softwareはシェアウェアの販売を止めようとしましたが、時すでに遅し。倉庫には約15万枚ものCDが山積みになってしまったのです」と記しています。


「Quake」のシェアウェア版の何が問題だったのかについて、サングラール氏が解説しています。ゲームのロック/アンロック機能には、TestDrive Corpが提供するツールが使用されており、これによりプレイヤーは購入前に一部を体験版としてプレイでき、フルバージョンを購入することでゲーム全体を遊べるようになっていました。暗号化ツールは実行可能ファイルを特殊な形式に変換する仕組みになっており、実行可能ファイルを無理やり実行しようとしても、「このアプリケーションは無効になっています」と表示されます。解除用シリアルは、プログラムが生成するCHALLENGEに応じて解除サービスから発行されます。CHALLENGEは起動するたびに変化するため、同じシリアルを使い回せない設計でした。

しかしGNOMONは、電話で受け取るシリアルには秘密の情報などは一切含まれておらず、シリアルは単なる支払い証明にすぎず、CD-ROMに収録されたプログラム自体が正しいシリアルを計算できることを突き止めました。その結果、GNOMONはCHALLENGEに対応するシリアルを自動的に生成できるツールを開発し、無料で「Quake」を含むあらゆるゲームを遊べるようにしました。

そのほかにも、一部のゲームは正規の方法で電話してもロックが解除できなかったり、全く使用されていないファイルが含まれていたりと、「Quake」のCD-ROMには多くの問題が発見されています。サングラール氏は「調べれば調べるほど、責任者には仕上げに時間をかける余裕が全くなかったように思えます」と語っています。

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in ソフトウェア,   ゲーム, Posted by log1e_dh

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