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セガ最後のゲーム機「ドリームキャスト」の海賊版対策はどうやって破られてしまったのか?

by Joe Haupt

オレンジ色の渦巻きと独特のコントローラーで知られるゲームハード「ドリームキャスト」は1998年に発売された、セガ最後の家庭用据置ゲーム機です。元Googleのエンジニアでゲームプログラムの研究を行うFabien Sanglard氏が「強固だったはずのドリームキャストのコピープロテクト技術がなぜ破られてしまったのか」について解説しています。

How the Dreamcast copy protection was defeated
http://fabiensanglard.net/dreamcast_hacking/


Sanglard氏は、DOOMのゲームエンジンについて研究した著書を刊行した後、休暇をとって日本へ旅行したとのこと。その際、秋葉原にあるゲームセンター「HEY」に立ち寄って、海外でも人気のある名作シューティングゲーム「斑鳩」をプレイしたそうです。「斑鳩」はアーケード版を完全移植したタイトルがドリームキャストで発売されていることから「セガの究極のゲームコンソールであるドリームキャストに関心を持った」とSanglard氏は述べています。

1998年11月27日にセガから発売されたドリームキャストは3D処理に特化したグラフィック性能が売りで、アーケードゲームの移植が容易な設計となっていました。さらに、電話回線を接続できるモデムを標準搭載しているため、PCがなくてもネットサーフィンができたり、オンラインでゲームをプレイできたりと、当時としては画期的なゲームマシンでした。しかし、生産ラインの不備で初動に遅れが生じ、供給が安定した頃に発売されたPlayStation 2には太刀打ちできず、2001年にセガは家庭用ゲームハード事業から撤退を表明しました。それでも今なおドリームキャストでしか遊べないゲームは数多く、発売から20年経った2018年現在もなおファンの多いゲームハードです。

by Alan Teo

ドリームキャストのソフトメディアは「GD-ROM」という独自規格の光メディアディスクです。セガとヤマハが共同で開発したGD-ROMは記録容量がおよそ1GBで、前世代機のセガサターンやライバルであるPlayStationで採用されているCD-ROMのおよそ700MBを上回るものでした。また、独自開発ということもあって、GD-ROMは普及していたCD-ROMに比べてコピー防止が強固といわれていました。

GD-ROMの大きさや見た目はCD-ROMとほとんど同じですが、裏の読み取り部分が暗い領域と明るい領域の2つに分かれています。暗い領域は35MBのCD-ROM互換領域で、ディスクにCDプレイヤーに入れた際に「これはドリームキャスト用のゲームディスクです」と警告する音声などが含まれていました。それに対して明るい領域は984MBまで保存できる高密度領域となっていて、すべてのゲームコンテンツが収められていました。PC用のGD-ROMドライブはほとんど手に入らないこともあって、ドリームキャストのゲームディスクからゲームデータを吸い出すことは事実上不可能だと考えられていました。


ドリームキャストにはオペレーティングシステム(OS)がありませんでした。ドリームキャストにはWindows CEのロゴがプリントされていますが、Sanglard氏によるとWindows CEはあくまでもDirectXやDirectSoundなどをドリームキャスト上で使用するための静的ライブラリであり、ほとんどのゲームでは使われていなかったとのこと。

ドリームキャストでゲームディスクを読み込む際、まず初めにGD-ROMの最後のトラックから、ブートストラップがドリームキャスト本体のRAMにロードされます。ブートストラップには「IP.BIN」というファイルが含まれていて、セガのライセンス画面を表示します。また、このIP.BINにはゲームの実行可能ファイルである「1ST_READ.BIN」の名前が含まれていました。


ドリームキャストにはMIL-CD再生機能が搭載されていました。MIL-CDとは「見るCD」を意味し、通常のCDプレーヤーでは音楽CDとして再生できる一方で、対応機器では独自のコンテンツを視聴できるというメディアです。セガの開発エンジニアはこのMIL-CD再生機能がハッキングの入り口になると気づいていたため、ゲーム本体がCD-ROMを検出すると1ST_READ.BINをスクランブルするように設計していました。このスクランブラーによって、ゲームコンテンツを違法コピーしたCD-ROMを読み込んでもドリームキャストでは実行できないようになっていました。


しかし、ドリームキャストのセガ公式開発システムであるKatana SDKが盗まれたことで、このスクランブルによるセキュリティが突破されてしまいました。このSDKにはスクランブルされた1ST_READ.BINを元に戻す逆スクランブラーが含まれていたため、ドリームキャストでCD-ROMからゲームを起動することが可能になったそうです。



あとは、1GBもあるゲームコンテンツをどうやって700MBのCD-ROMに収めるかという問題が残りますが、GD-ROMで使われているファイルフォーマットはCDと同じISO 9660を採用していたため、ムービーや音楽をダウンサンプリングしたり削除したりすることで容量を小さくまとめることができたとのこと。ただし、実際は1GBという大容量をフルに使っているゲームはそれほど多くなく、多くのゲームが複雑なプロセスなしに700MBというCD-ROMの容量内に収まってしまったそうです。結果として、ドリームキャスト本体に特別な改造をせずとも簡単に違法コピーのゲームROMを遊ぶことが可能になってしまったというわけです。

セガはこの後、ドリームキャストのバージョン2からMIL-CD再生機能を外しました。しかし時既に遅く、既に海賊版をプレイするためのツールが広まってしまっていた上に、2000年には1層で4.7GBという大容量を誇るDVD-ROMをメディアに採用したPlayStation 2も登場したことで収益は急落。セガは200万台というドリームキャストの在庫を抱え、2万9800円だった定価は最終的に9900円にまで値下げされ、ほぼ投げ売り状態になってしまいました。ドリームキャストの販売終了以降、家庭用ゲーム機の開発から撤退を表明したセガはゲームソフトの開発に専念しています。

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in ハードウェア,   ゲーム, Posted by log1i_yk