「海賊版対策は十分な成果を上げていない」とEUの委託調査で指摘される、目指すべきは「30分以内」のリアルタイムブロック

権利保有者たちはEUの欧州委員会に対し、スポーツやイベントのライブ配信における著作権侵害に対処するため、緊急かつ断固とした措置を講じるよう長年求めてきました。EUは加盟国に対し具体的な勧告を発表し、一部の加盟国は海賊版の取り締まりを強化しましたが、欧州議会の法務委員会が委託した新たな調査では「現状のEU全体の対応は十分ではない」と指摘されています。
Countering online piracy of sports and broadcast in the EU | Think Tank | European Parliament
https://www.europarl.europa.eu/thinktank/en/document/IUST_STU(2026)783147
EU Study: Block Live Sports Piracy in 30 Minutes, Across DNS Resolvers, VPNs and CDNs * TorrentFreak
https://torrentfreak.com/eu-study-block-live-sports-piracy-in-30-minutes-across-dns-resolvers-vpns-and-cdns/
EUでは2023年に欧州委員会がオンライン海賊版のライブ配信に対する迅速な対策を加盟国に促す勧告を出しました。しかし、この勧告には法的拘束力がなく、加盟国によって実際の対策に大きな違いが生じています。例えば、イタリアの「海賊版対策法」では「海賊版シールド(Piracy Shield)」というプログラムが導入されており、導入から1年で数千ものIPアドレスとドメインをブロックしたとされている一方で、リアルタイムの海賊版対策を整備していない加盟国もあります。
欧州議会法務委員会(JURI)の要請を受けてイタリア・サレルノ大学のジョバンニ・マリア・リッチョ教授が執筆した、「EUにおけるスポーツおよび放送のオンライン著作権侵害対策」と題された報告書が公開されました。報告書でリッチョ教授は「ライブコンテンツの著作権侵害に対する現在のEUの対応は断片的で、ライブ放送のスピードと技術的な複雑さに十分に対応できていない。既存の規則は有用な手段を提供するものの、加盟国全体で一貫性のあるタイムリーな執行を保証するには至っていない」と指摘しています。

調査で特に重視されているのが、スポーツ中継などの「ライブ海賊版」に対するリアルタイムのブロッキングです。ライブ配信の海賊版は、映画や音楽などと異なり、試合やイベントが終了した後では海賊版対策の価値が大きく低下します。そのため、違法配信を発見してから短時間でアクセスを遮断することが重要になります。
そこでリッチョ教授は、ストリーミング仲介業者に対して一定時間内に迅速な削除措置を講じることを義務付けるべきだと提言しています。対象は通常のISPに限らず、DNSリゾルバー・VPN・CDN・専用サーバーなど、違法コンテンツの配信に関わる複数の仲介事業者まで広げることが提案されています。また「迅速な削除処置」の一例として、イタリアの海賊版シールドに倣って、「権利者による申請から30分以内にブロックする必要がある」という時間制限を挙げています。

また、イタリアでは通信規制当局のAGCOMが海賊版サイトのブロック手続きを監督しています。報告書はこれをモデルとして、各EU加盟国にも独立した行政機関を設置し、ブロッキングの監督や執行、各国間の調整を担わせることを提案しています。
一方でリッチョ教授は「IPアドレスとDNSによるブロッキングは、本質的に粗雑な手段に過ぎず、同じインフラを共有する合法的なサービスから違法なストリーミングを確実に区別することはできない」と指摘しています。実際に、海賊版シールドが適切なチェックが足りていないにもかかわらず対象IPアドレスをただちにブロックしたことで、複数の学校サイトや通信会社、チケットサービスなどがアクセス不可になるという問題も発生しています。
著作権侵害対策のドメインブロックのミスでGoogleドライブが12時間以上使えなくなる事態が発生 - GIGAZINE

こうした「過剰ブロッキング」などの問題を警告しつつも、リッチョ教授は海賊行為防止策をEU全域に展開することを推奨しています。素早いブロッキングと過剰ブロッキング対策を両立する対策として、ライブ配信の期間のみブロックを限定すること、司法または行政による監督を維持すること、EU司法裁判所が定めた比例原則を遵守することなどの安全策を提案しています。
最後に、リッチョ教授は「スポーツを合法的に視聴することが費用のかかる面倒なことであれば、どれだけブロックしても海賊行為を根絶することはできない」と報告書に記した上で、分散的で高額な視聴サービスが海賊行為を助長する原因の1つと指摘しています。
なお、今回の報告書は第三者による助言であり、法律や規則に直接影響しません。ただし、今回の報告書は欧州委員会による「デジタル単一市場における著作権指令の見直し」が進行中の段階で発表されたため、見直し内容への影響が注目されています。
・関連記事
Googleが欧州委員会に「海賊版サイトをDNSリゾルバ・VPN・共有IPアドレスでブロックすると重大な損害をもたらす」と提言 - GIGAZINE
Cloudflareが26億円相当の罰金判決を不服として控訴、イタリアの海賊版シールドを「オープンインターネットを危険にさらす」と批判 - GIGAZINE
著作権侵害対策のドメインブロックのミスでGoogleドライブが12時間以上使えなくなる事態が発生 - GIGAZINE
イタリアは著作権侵害対策プログラム「海賊版シールド」を推進しているが動画配信サービスの有料会員は増えていないとの指摘 - GIGAZINE
「海賊版被害は減少していく」とユーロポールが予測 - GIGAZINE
・関連コンテンツ
in ネットサービス, Posted by log1e_dh
You can read the machine translated English article An EU-commissioned study points out that….






