イタリアは著作権侵害対策プログラム「海賊版シールド」を推進しているが動画配信サービスの有料会員は増えていないとの指摘
導入から1年で数千ものIPアドレスとドメインをブロックしたというイタリアの著作権侵害対策プログラム「海賊版シールド(Piracy Shield)」について、確かに海賊版の利用者を減らすことには成功しているものの、海賊版利用者を有料会員に誘導できているわけではないと指摘されています。
LinkedInのBrian Turnbow: #piracyshield
https://www.linkedin.com/posts/brianturnbow_piracyshield-activity-7285318162466660352-17uq/
'Piracy Shield' Fails to Convert Pirates to Paying Subscribers, Data Suggest * TorrentFreak
https://torrentfreak.com/piracy-shield-fails-to-convert-pirates-to-paying-subscribers-data-suggest-250119/
海賊版シールドはイタリアの通信規制当局・AGCOMが導入を進めたもので、著作権を侵害するライブストリーミングを30分以内にブロックするようISPに義務付ける法律「legge 14 luglio 2023, n. 93」を実施するためにレガ・カルチョとAGCOMが提供したプラットフォームです。
2024年2月に導入されて以来、海賊版シールドは数千のIPアドレスとドメインへのアクセスをブロックしており、当初はサッカーの違法ライブストリーミングだけを対象としていたものを映画のプレミア上映やテレビのライブ放送などにも拡大しようという声が上がっているなど、当局からは「大成功」とみなされているとのことです。
同時に、関係者はさまざまな議論を通じて海賊版シールドの影響力を強化しようと努めていて、2025年1月にはクラウドやホスティング・ソリューションなどを運営するテクノロジー企業CDLANのブライアン・ターンボウ氏とAGCOMの担当者が電話会談を行いました。
ところが、この会談を終えたターンボウ氏は、当局の言う「成功」という言葉には違和感があると指摘しています。
AGCOMの調査結果を共有したターンボウ氏によると、海賊版シールドを導入して以来、主要なライブストリーミングサービスの1つ「DAZN」の視聴者は特に増加はしていないとのこと。
以下はAGCOMが共有した主要ストリーミングサービスのユーザー数(上)および視聴時間(下)です。DAZNはセリエAのコンテンツの権利を保有しており、海賊版シールドを積極的に活用しているサービスの1つですが、海賊版シールドが導入された2024年のDAZNのユーザー数と視聴者数は2023年と同じで、2022年と比べるとむしろ減少していることがわかります。
興味深いのは利用者が減少している一方で利用料金が値上がりしている点。ターンボウ氏は「ISPはサービス導入のためのコストを負担し、DAZNにとってはユーザーも視聴時間も増えず、ユーザーにとっては料金が上がったことになる」と指摘し、海賊版シールドの「成功」には疑問が生じると主張しました。
著作権についてのニュースを掲載するTorrentFreakはターンボウ氏の投稿を元に、「AGCOMの支援者は、海賊版シールドが機能するのは海賊版のドメイン名とIPアドレスをブロックし、これらのソースへのトラフィックを減少させるからだと指摘しています。しかし、確かにブロックされたサービスへのトラフィックは減少するかもしれませんが、人々はブロックされていない他のソースに移動しているかもしれません。一方で海賊版対策がなければDAZNの利用者はもっと減少していたという見方もできます」と指摘しました。
海賊版シールドをめぐっては、導入から2カ月後に「海賊版シールドの逃げ道を作っている」としてアメリカ企業のCloudflareがAGCOMに訴えられましたが、後に「Cloudflare側の意識的な共謀の証拠は見つからない」として訴えは棄却されています。
TorrentFreakは「専門家からは、ドメインとIPアドレスを削除するメカニズムが整備されていないままブラックリストに登録され、イタリアからアクセス可能なIPアドレスが不足するのではないかという懸念の声が上がっています。この1年で何かがわかったとすれば、透明性やフィードバックが欠如していると、結果的に逆効果になる可能性があるということです」と述べました。
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