サイエンス

宗教的な集まりに参加することに直接的なメンタルヘルス改善効果はないとの研究結果


数十年にわたるさまざまな研究で、宗教的な行事や集会への参加と良好なメンタルヘルスとの間に強い相関関係があることが示唆されてきました。ところが、長期的なデータを分析した新たな研究では、宗教儀式への参加には直接的なメンタルヘルス改善効果はないことが明らかとなっています。

Religious service attendance and common mental disorders and well-being: Causal effects based on a longitudinal marginal structural model approach.
https://psycnet.apa.org/doiLanding?doi=10.1037%2Frel0000581

Does going to religious services actually improve your mental health?
https://www.psypost.org/does-going-to-religious-services-actually-improve-your-mental-health/

宗教行事への参加とメンタルヘルスに関する多くの研究では、宗教的な集まりに参加することで「コミュニティ形成による社会的支援の増加」「不健康な行動の減少」「ポジティブな感情の増加」などが生じ、メンタルヘルスが改善すると示唆されてきました。これに基づき、一部の医療専門家やメンタルヘルス関係者は、教会や寺院などで行われる行事への参加を推奨してきました。


しかし、これらの研究の多くはある一時点の状態を捉えた横断研究であり、実際に宗教行事への参加がメンタルヘルスの改善を引き起こしたのかどうかはよくわかっていませんでした。また、宗教行事以外の生活要因がメンタルヘルスの改善を引き起こした可能性も否定されていなかったとのこと。

そこでイタリア・ボローニャ大学の心理学者であるガブリエレ・プラティ氏は、宗教行事への参加と他の生活要因を切り離すため、さまざまな交絡因子を調整した分析を行いました。交絡因子とは、想定される原因と結果の両方に影響を与え、直接的な関連性があるかのような誤解を与える外部要因のことです。

たとえば、友人とのつながりを維持している人は宗教行事に参加する可能性が高まり、それと同時に友人とのつながりがうつ病の予防に役立っている可能性があります。この場合、うつ病予防の効果は友人とのつながりによるものですが、研究者がデータから友人とのつながりを交絡因子として排除しなければ、「宗教行事への参加がうつ病予防に役立った」ように見えてしまうというわけです。


今回の研究では、アメリカ全土に住む7108人を1990年代半ば~2014年頃にかけて追跡したプロジェクト・Midlife Development in the United States project(MIDUS)のデータが用いられました。このプロジェクトでは被験者がどれほどの頻度で宗教的な集会に参加しているのかや、うつ病や全般性不安障害などの精神疾患の診断記録、一般的な心理的幸福度などのデータが収集されました。

プラティ氏は、無作為化臨床試験の条件を模倣するように設計された高度な統計手法を用いて、年齢・性別・民族といった人口統計学的な要素と、宗教的な集会への参加という要素を分離。さらに、時間とともに変化する健康状態・経済状況・性格特性・友人関係といった交絡因子も調整して、より正確に宗教的な集会への参加とメンタルヘルスの関係を分析しました。

分析の結果、宗教的な集会に頻繁に参加することは、うつ病を発症する確率を変化させないことがわかりました。宗教的な集会に頻繁に参加する人とまったく参加しない人では、うつ病を発症する確率が同程度であり、全般性不安障害やパニック障害の発症についても同様の結果でした。

さらに、宗教的な集会への参加と全般的なメンタルヘルスとの間にも、統計的に有意な関連性はみられませんでした。頻繁に宗教的な集会に参加する人は、人生の目的意識や自己受容度が高いわけではなく、参加頻度が変わってもその後のメンタルヘルスには影響がなかったとのことです。


プラティ氏は、定期的に宗教行事に参加できる人は「健康な体」「安定した収入」「社交的な性格」など、メンタルヘルスの改善につながる他の要素を持っていることが多いと指摘。こうした要素によって、宗教行事に参加する人はメンタルヘルスが良好だという相関関係がみられたのだろうと主張しています。なお、今回の研究はあくまで被験者の自己申告に基づいており、結果には主観性による測定誤差が残っている可能性がある点には注意が必要です。

心理学系メディアのPsyPostは、「医療従事者は心理的苦痛の治療や予防策として、患者に宗教的なコミュニティへの参加を促すことがあります。しかし今回の研究は、そのような助言がメンタルヘルスのメカニズムを過度に単純化していることを示唆しています」と述べ、実際の証拠に基づいたアドバイスが重要だと主張しました。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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