セキュリティ

敵対勢力が広告用の位置情報データを購入してアメリカ軍関係者を追跡・監視していたことが判明


中東や中央アジアなどを担当するアメリカ中央軍が、「敵対勢力が商用の位置情報データを悪用し、作戦地域にいるアメリカ軍関係者を標的化または監視しているという複数の脅威報告を受け取った」と説明したことが明らかになりました。

Exclusive: US military personnel are being targeted using location data, Pentagon letter shows | Reuters
https://www.reuters.com/business/media-telecom/pentagon-says-us-military-personnel-are-reportedly-being-targeted-using-location-2026-05-28/


US says troops were targeted with location data, as senator warns ad industry is a 'national security threat' | TechCrunch
https://techcrunch.com/2026/05/28/u-s-says-troops-were-targeted-with-location-data-as-senator-warns-ad-industry-is-a-national-security-threat/


スマートフォンアプリやウェブサービスを使っていると、広告の表示や効果測定のために位置情報が使われることがあります。例えば「近くの店舗の広告を出す」「広告を見た人が実店舗を訪れたかを測る」といった仕組みでは、端末から得られる位置情報が重要な材料になります。


しかし、アプリやサービス事業者などから集めたデータを整理して別の企業や組織に販売する事業者であるデータブローカーを通じ、広告に使われるはずの商用の位置情報データが売買されると、利用者本人が想定していない相手にも移動履歴が渡る可能性があります。商用の位置情報データは氏名が直接付いていない場合もありますが、同じ端末が毎晩戻る場所や毎日通う場所を追うことで、自宅や勤務先、行動パターンを推測できる場合があります。

ロイターによると、アメリカ中央軍はロン・ワイデン上院議員に宛てた2026年4月14日の書簡で、敵対勢力が商用の位置情報データを悪用し、作戦地域にいるアメリカ軍関係者を標的化または監視しているという複数の脅威報告を受け取ったと説明したとのこと。書簡では具体的な事例や被害の詳細は示されていない模様。

ワイデン上院議員と超党派の議員グループは、戦闘が行われる地域でアメリカ軍関係者が商用の位置情報データによって標的化されたことをアメリカ当局が公式に認めた初めての例だと述べています。議員グループはアメリカ国防総省に送った書簡で、商用の位置情報データからアメリカ軍関係者が集まる場所や生活パターンが特定される可能性があると警告しました。

敵対勢力は商用の位置情報データを使って、ミサイル、ドローン、路肩爆弾による攻撃の標的選定やスパイ対策に利用できる可能性があります。軍関係者の居場所や移動パターンが分かれば、攻撃だけでなく、関係者への接触、尾行、情報収集にもつながるおそれがあるわけです。


商用の位置情報データを巡る問題は以前から指摘されていました。ロイターによると、2016年にはアメリカの防衛請負業者が商用の位置情報データを使い、特殊作戦部隊がアメリカ国内の基地からシリアの機密性の高い拠点へ移動する様子を追跡できたと報じられています。また、Wiredとドイツの報道機関2社は、データブローカーが集めた数十億件規模の座標データを基に、ドイツ国内にあるアメリカ軍や情報機関の関連施設周辺で働く人々の詳細な移動を明らかにしました。

議員グループは、アメリカ国防総省が軍関係者を保護するためにより早く対策を取るべきだったと批判しています。軍支給端末にひも付く広告IDを無効化すること、作戦地域のスマートフォンで位置情報共有を自動的にオフにすること、政府支給端末でGoogle Chromeの利用を避け、よりプライバシー保護を重視したブラウザへ移行することなどが対策として提案されました。

元アメリカ陸軍特殊部隊将校で、書簡に署名したパット・ハリガン下院議員は、Chromeのようなブラウザは利用者データを収集・共有する構造で作られていると述べ、政府支給端末に残り続けるたびに敵対勢力へ武器を渡しているようなものだと指摘しました。一方で、GoogleはChromeについて業界をリードするセキュリティを備えていると説明し、データブローカーに対するより強いルールと保護策を長く支持してきたと述べています。

アメリカ国防総省はロイターに対し「議員に直接回答する」と説明したものの、詳細は明らかにしなかったとのこと。ワイデン上院議員は「広告技術業界を国家安全保障上の脅威として扱い始めるべき時期に来ている」と述べました。

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