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AIに踊らされず自分の思考を取り戻す方法とは?


ChatGPTやGeminiといった生成AIは非常に便利なものであり、仕事や日常の問題について調べたり解決法を探ったりする際、まずはAIに相談するという人も多いはず。ところが、AIに頼り過ぎると自分で思考するスキルが衰えた「cognitive atrophy(認知萎縮)」と呼ばれる状態になるリスクもあるとのこと。そこで、アイルランドのゴールウェイ大学でビジネス情報システムの准教授を務めるノエル・キャロル氏が、AIに踊らされすぎず自分の思考を取り戻す方法について解説しました。

Is AI hurting your ability to think? How to reclaim your brain
https://theconversation.com/is-ai-hurting-your-ability-to-think-how-to-reclaim-your-brain-272834


2025年11月、イギリスのウェスト・ミッドランズで開催されたサッカーのアストン・ヴィラFC(イングランド)マッカビ・テルアビブFC(イスラエル)の試合で、イスラエルサポーターの入場が禁止されました。

この決定はウェスト・ミッドランズ警察の報告書を元に、「過去の経緯から安全上のリスクが高い」と判断されたことが理由でした。ところが、警察の報告書にはMicrosoft Copilotが生成した「架空の試合」が含まれていたことが判明し、責任を追及されたウェスト・ミッドランズ警察のクレイグ・ギルフォード署長が辞職する事態となりました。

生成AIはあくまで膨大なデータセットで訓練された言語の計算機に過ぎず、何かを理解しているわけではないため、論理的に見える文章やアドバイスを生成したとしても、その内容が間違っていることは多々あります。しかし、ウェスト・ミッドランズ警察は調査や分析、報告書の作成などにAIを使った結果、裏付けを取るのを怠って大きな問題を引き起こしたというわけです。

ウェスト・ミッドランズ警察の事例は極端なものかもしれませんが、多くの人々が同様に思考をAIにアウトソーシングしているとキャロル氏は指摘。AIは多くの人々がやりたがらない思考・記述・創造・分析といった作業を代替していますが、これらのスキルは使わなければ減退する可能性があり、その結果として認知萎縮に陥る人々が増えているとのこと。


AIの利用によって愚かになったり怠惰になったりしたと語る人は大勢います。2024年の研究では、大学生における生成AIの利用は作業負荷の増加と時間的プレッシャーによって促進されており、AIの利用頻度が高いほど先延ばしや記憶力の低下、学業成績の低下と関連していることが明らかになりました。また、生成AIの誤った使い方が批判的思考や創造性、倫理的意思決定といったスキルを損なうとの研究結果もあります。

自分は適度にAIを利用していると考えている人でも、実は認知萎縮が進んでいる可能性があります。その兆候としてキャロル氏は、「タスクの初期段階で未完成なバージョンを作ってみようとしなくなった」という例を挙げています。


手作業で何かしらの解決策を探す場合、ホワイトボードやメモ帳、ナプキンの裏などに雑然とした関連事項を書き出し、問題点の把握や模擬的なブレインストーミングを行う人もいるはず。しかし、AIに頼り過ぎると「まず最初に自分で考えてみる」という過程がなくなり、「AIにプロンプトを送り、AIが返した答えを検討する」というやり方にシフトしていってしまうとのこと。

キャロル氏は、「あらゆるタスクでAIツールに出発点を与えてほしいと本能的に求めるなら、思考の最も重要な部分を省いていることになります。思考の最も重要な部分は構造や論理、新しい刺激的なアイデアを生み出すという重労働です」と指摘しています。

認知萎縮が進んでいる別の兆候としては、「フラストレーションの閾値(いきち)の低下」が挙げられます。たった60秒ほど自分で考えて答えが出なかっただけで「AIに聞いてみたい」という衝動に駆られるなら、曖昧さやフラストレーションへの耐性が低下している可能性があります。ハッキリした答えが見つからない中で行われる発散的思考は、独自の解決策を生み出す能力に必要ですが、フラストレーションの閾値が下がるとこの能力が損なわれてしまいます。

キャロル氏は、「AIが生成したアウトプットの妥当性を疑うことなく受け入れてしまうことはありませんか?あるいは、AI検索で確認しないと自分の直感を信じられなくなってしまうことはありませんか?これはあなたが意思決定者から承認者、あるいはもっと悪いことに、思考プロセスの受動的な傍観者へ移行しつつある兆候かもしれません」と警告しました。


AIに頼り過ぎることによる認知萎縮と戦うには、自ら考えて意思決定する能力を取り戻す必要があります。そのためには、日常生活においてわからないことや不確実性といった「摩擦」を取り戻し、不確実性を受け入れ、たとえ間違っていたとしても思考のプロセスから学ぶことをが必要です。キャロル氏が紹介する「AIに踊らされすぎず思考を取り戻す方法」が以下の4つ。

◆1:30分ルールを設ける
何かの問題に取り組む際にすぐAIインターフェースを開くのではなく、まず30分は自分の頭で考えてみることをキャロル氏は推奨しています。解決したい問題について潜在的な解決策・リスク・関係者といった項目を書き出したり、マーケティング戦略を考える際にターゲット層や倫理的リスクを明確にしたりするといった作業を自分ですることで、自分が出した答えにより自信が持てるようになります。

◆2:懐疑的になる
AIには依然としてミスや幻覚(ハルシネーション)が付き物であり、AIの出力を何の疑いもなく受け入れてしまうことは問題です。そのためキャロル氏は、AIを「たまに幻覚を起こすまったく信頼できない同僚」のように扱い、時にはAIの出力からミスや論理的誤りを探しだし、自分ならもっとうまくできると考えることが必要だと主張。「そうすることで脳は消費者モードからクリエイター兼編集者モードへと戻り、批判的思考力が研ぎ澄まされます」と述べました。

◆3:自分で考える領域を確保する
プライベートであろうと仕事であろうと、自分が楽しんで実行できるコアなタスクをひとつ選び、AIの助けを借りずにそれを完了させてみることも役立ちます。このようにAIが関与しない思考の領域を確保することで、複雑で終わりがないタスクに取り組む脳の能力を維持することができます。自分で考えることへの自信が取り戻せたら、次第にAIに頼らないタスクを広げていくことをキャロル氏は推奨しています。

◆4:AIを使う習慣について考える
キャロル氏はAIの使用による「習慣の見返り」があるのかを考えるべきだとしています。習慣の見返りとは、小さくてポジティブな習慣を長期的に実践することで得られる、健康や幸福感の向上といった長期的メリットのことです。AIツールの使用によって長期的に認知能力が上がるのか、それとも仕事の生産性が上がるだけなのかを把握することが重要です。キャロル氏は、「AIにアウトソーシングしたスキルと引き換えに新たな能力を獲得していないのであれば、あなたはアルゴリズムに屈しているのかもしれません」と述べました。

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in AI, Posted by log1h_ik

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