サイエンス

人はハッピーエンドに固執するあまり自分に不利な決断をしてしまいがち


「終わりよければ全てよし」という言葉がありますが、研究者が実験を行ったところ、人はハッピーエンドに執着するあまり合理的とはいえない決断を下してしまうことがわかりました。何か決断を行うときはこのことを自覚し、直近の印象に左右されるのではなく長所と短所を挙げてじっくりと検討する必要があると研究者が呼びかけています。

Why our obsession with happy endings can lead to bad decisions
https://theconversation.com/why-our-obsession-with-happy-endings-can-lead-to-bad-decisions-148393

Retrospective Valuation of Experienced Outcome Encoded in Distinct Reward Representations in the Anterior Insula and Amygdala | Journal of Neuroscience
https://www.jneurosci.org/content/40/46/8938

ケンブリッジ大学の計算論的神経学者であるマーティン.D.ヴェスターガード氏らの研究チームは、27人のボランティアたちに仮想ギャンブルを行ってもらい、ギャンブルの最中の脳をスキャンしました。この実験でボランティアはコンピューター画面でサイズの異なるコインが複数のポットに入る様子を見せられたとのこと。なお、ギャンブルの勝利条件は最も多くのコインを集めたポットを選択することでしたが、その一方で、実験における「ハッピーエンド」は、最後に一番大きなコインがポットに入ることだと設定されました。そして、コインがポットに入る様子を見せられた後にボランティアにはどのポットを最も好むかが尋ねられました。

一連の様子を脳スキャンし、画像をコンピューター解析した結果、実験の最中にはボランティアの脳のうち2つの異なる部位が活性化したとのこと。


まず、実験の総合的な価値は扁桃体と呼ばれる部位で処理されました。扁桃体の活動は、不合理な行動を引き起こす情動反応を仲介するといわれていますが、一方で扁桃体は経済的節約戦略の結果を合理的に処理するとも評価されている部位です

しかし、最後に大きいコインが入らず、実験が「ハッピーエンド」で終わらなかった場合、扁桃体の意志決定への影響は島皮質の活動によって阻害されたとのこと。島皮質はネガティブな経験の処理に関連付けられている箇所であり、これはアンハッピーエンドが一部のボランティアに嫌悪感を引き起こしたことを意味しています。

実験において、優れた意志決定をする人は、最後に大きなコインが入るかどうかにかかわらず、最もコインを集めたポットを選びました。このような人々は総合的な価値判断を行う扁桃体で強い反応が見られました。一方で、自分にとって不利な意志決定を行う人は島皮質での反応が大きかったとのこと。言い換えると、優れた意志決定ができる人は、アンハッピーエンドなどの嫌な印象を無視することができるわけです。


このような脳のメカニズムは人の望むと望まざるにかかわらず存在し、広告やプロパガンダ、フェイクニュースを利用して人の興味関心を操作しようとする文化によって、その傾向が強化されるとのこと。そして外部のものが人の思考を操作しようとすればするほど、人々の意志決定能力が脅かされることになります。

人は直感に基づいて決断を下してしまいがちですが、ものごとの長所と短所を書き出して、衝動を乗り越えて意志決定を行う必要があると研究者は締めくくりました。

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log

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