電気の代わりにコンピューター自身の廃熱を利用して計算を実行できるシリコン構造をMITの研究者らが開発

ハードウェアの廃熱はさまざまな問題を起こすことがあり、一般的に不要なものと見なされがちです。ところがマサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームは、電気の代わりに余剰熱を利用して計算を実行できるシリコン構造を開発したと報告しました。
Thermal analog computing: Application to matrix-vector multiplication with inverse-designed metastructures | Phys. Rev. Applied
https://journals.aps.org/prapplied/abstract/10.1103/5drp-hrx1

MIT engineers design structures that compute with heat | MIT News | Massachusetts Institute of Technology
https://news.mit.edu/2026/mit-engineers-design-structures-compute-with-heat-0129
MIT designs computing component that uses waste heat 'as a form of information' | Live Science
https://www.livescience.com/technology/computing/mit-designs-computing-component-that-uses-waste-heat-as-a-form-of-information
AIの発達などによってコンピューティング需要が増加する中で、よりエネルギー効率の高い計算手法についての注目が高まっています。そこで、MITの学生であるカイオ・シルバ氏らは、熱を情報そのものとして利用することで計算を実行するシリコン構造の開発に取り組みました。
シルバ氏らが使用したのは、2022年にMITの研究者であるジュゼッペ・ロマーノ氏らが開発した「特定の方法で熱を伝導するナノ構造を設計するソフトウェアシステム」です。このソフトウェアシステムは、必要な機能から逆算してそのタスクに最適な形状を設計する「逆設計」という手法を用いています。
今回の論文の共著者でもあるロマーノ氏は、「これらの構造はあまりにも複雑で、人間の直感だけで思いつくことはできず、私たちはコンピューターに設計を教える必要があるのです。だからこそ、逆設計は非常に強力な手法なのです」と述べました。
以下の画像は、ソフトウェアシステムが熱を用いた計算に最適なシリコン構造を設計する過程を示したもの。強力なアルゴリズムがグリッド内の各ピクセルを継続的に調整し、目標とする構造に到達するまで形状を厚さを繰り返し改良していきます。

研究チームは、ソフトウェアシステムを使用してちりの粒子と同程度の大きさの複雑なシリコン構造を設計し、熱伝導を利用して計算を実行できるようにしました。これはアナログコンピューティングの一種であり、「0」か「1」のデジタルビットの代わりに、連続した物理値(温度と熱の流れ)を使用して信号を処理するとのこと。
熱はシリコン構造を通じて高温の領域から低温の領域へと流れ、係数をエンコードする構造の形状を使用して行列乗算を実行します。研究チームが2列か3列のシンプルな構造をシミュレーションしたところ、多くの場合で99%以上の精度で計算を実行できたと報告されています。
シルバ氏は、「電子機器で計算する時は、多くの場合で熱が廃棄物となるため、できるだけ多くの熱を除去したいと思うことがあります。しかし今回は逆のアプローチを採用し、熱を情報そのものとして利用することで、熱を用いた計算が可能であることを示しました」と述べました。
なお、行列乗算は信号処理や機械学習で広く利用されている基本的な数学的手法ですが、今回開発したシリコン構造をディープラーニングなどの大規模アプリケーションに適用するには、数百万個ものシリコン構造をタイル状に並べる必要があります。また、入力端子と出力端子の距離が大きくなるにつれて精度が低下したり、デバイスの帯域幅に限界があったりする問題もあります。それでも、シリコン構造がマイクロエレクトロニクスにおける熱管理や温度勾配、熱源の検出といったタスクに応用できる可能性があるとのことです。
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in ハードウェア, サイエンス, Posted by log1h_ik
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