「インフルエンザ患者と健康な人が数日間一緒に過ごす実験」で新たな感染者が現れなかった理由とは?

インフルエンザウイルスは非常に感染力が高いことで知られ、感染者のせきやくしゃみなどで放出されるエアロゾルに加え、汚染されたドアノブやスマートフォンなどを通じて感染します。そんなインフルエンザウイルスに感染した人と健康な人を同じ空間に集め、数日間一緒に過ごしてもらうという実験が行われましたが、意外にも健康な人への感染拡大がみられなかったと報告されています。
Evaluating modes of influenza transmission (EMIT-2): Insights from lack of transmission in a controlled transmission trial with naturally infected donors | PLOS Pathogens
https://journals.plos.org/plospathogens/article?id=10.1371/journal.ppat.1013153

Why a flu transmission experiment didn’t spread the flu
https://theconversation.com/why-a-flu-transmission-experiment-didnt-spread-the-flu-273859
インフルエンザウイルスの感染が広がる要因については、「感染者が排出するウイルスの量」「部屋の温度や湿度」「感染者との距離」などさまざまなものがあります。そこでアメリカのメリーランド大学医学部などの研究チームは、自然にインフルエンザへ感染した人を用いた実験を行いました。
実験にはインフルエンザウイルスの感染者(ドナー)と健康な被験者(レシピエント)が参加し、お互いが混ざった状態でホテルの一室で過ごしてもらいました。実験は2つのバージョンで実施され、1つは「ドナー1人とレシピエント8人」という人数構成で、もう1つは「ドナー4人とレシピエント3人」という人数構成でした。ドナーの年齢は20~22歳で、レシピエントの年齢は25~45歳でした。
ホテルの室内はインフルエンザの感染が起こりやすいと考えられる温度(セ氏22~25度)と湿度(20~45%)に保たれ、窓やドア、ファンの空気漏れといった主要な空気の通り道をすべて閉鎖し、意図的に換気の質が低下させられていました。
被験者らはこの状態で3~7日間にわたり、同じ室内で一緒に過ごしました。被験者らは近距離でカードゲームをしたり、ダンスやヨガのクラスに参加したりしたほか、マーカー・マイク・タブレット端末などの物品を共有したとのこと。
研究チームはドナーの呼気や唾液、口腔(こうくう)をぬぐった綿棒などのウイルス濃度を測定することで感染経路をモニタリングしました。また、共有物や空気中のウイルス粒子が検査されたほか、被験者からせき・くしゃみ・頭痛といった一般的なインフルエンザの症状を記録しました。

実験の結果、ドナーから採取した複数の検体で感染能力のあるインフルエンザウイルスが見つかりましたが、レシピエントからはウイルス陽性反応が出ませんでした。軽度の頭痛などの症状を訴えるレシピエントが数人いましたが、いずれの患者からもインフルエンザウイルスに感染した証拠は出ませんでした。
ドナーとレシピエントが密接な環境で過ごしていたにもかかわらず感染が拡大しなかった理由として、研究チームは「ドナーからのウイルス排出量が少なかったこと」「レシピエントに部分的な免疫があったこと」「室内の空気が循環していたこと」の3つを挙げています。
一般に、インフルエンザの流行は子どもに原因があるとみられていますが、今回の実験参加者はいずれも成人でした。ドナーが感染した株や年齢、あるいはせきやくしゃみといった症状がほとんどみられなかった点が、インフルエンザウイルスの放出量が少なかった要因の可能性があります。
また、成人のレシピエントはこれまでに何度もインフルエンザシーズンを乗り越えており、その過程である程度の免疫が付いていたことも考えられます。また、何人かのレシピエントはインフルエンザワクチンの接種経験があり、1人は実験が行われたシーズンにもワクチンを接種していました。
室内の温度や湿度はインフルエンザウイルスが感染しやすい状態に設定されていましたが、室内にあったファンによる強力な空気循環が、ウイルスを含んだ空気を拡散していた可能性もあります。つまり、ウイルスはドナーの周囲に滞留せずに拡散され、結果としてレシピエントが吸い込むウイルスの量が減った可能性があるというわけです。

今回の実験から得られた知見を合わせると、せきやくしゃみがインフルエンザウイルスの感染拡大の主な要因であり、特に大量のウイルスを放出するスーパースプレッダーが大きな役割を果たしていると推測できます。また、インフルエンザウイルスにさらされた人々の免疫状態や、屋内空間の空気の流れも重要な要素だと考えられます。
もちろん、インフルエンザは世界中で毎年数億人以上が感染している危険な感染症であり、決して油断するべきではありません。特にせきやくしゃみを通じたエアロゾル感染のリスクが高いため、これらの症状がある患者は可能な限り隔離して、空気中へのウイルス拡散を防ぐためにしっかりフィットするマスクを着用する必要があります。また、換気の悪い空間では十分な換気と空気循環が必要です。
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in サイエンス, Posted by log1h_ik
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