サイエンス

「集中できるアプリ」は本当に生産性向上に役立つのか?


スマートフォンは通知やアプリの誘惑で作業を中断させやすく、触っていない時でも視界にあるだけで集中しづらくなると指摘される一方で、アプリ開発者はタイマーやアプリのブロック、習慣のリマインダー、報酬といった仕組みを用いて「生産性の向上」を約束する集中アプリを生み出しています。カンタベリー大学の心理学・言語聴覚学スクールで講師を務めるドウェイン・アラン氏は、こうした集中アプリが注目される理由と、アプリの効果を判断する際のポイントを解説しました。

Focus apps claim to improve your productivity. Do they actually work?
https://theconversation.com/focus-apps-claim-to-improve-your-productivity-do-they-actually-work-271388


人々が物事に集中できない原因は、目標達成のために思考・感情・行動を監視して調整する「自己調整」がうまく働かない場面があるため。退屈・ストレス・面倒といった感覚が生じると不快さから逃れたくなり、気分転換のつもりでスマートフォンに手が伸びやすくなります。その結果、必要な作業から注意が外れてしまいます。

近年、「人間の集中力が低下した」と耳にすることがあるかもしれません。しかし、アラン氏は「科学文献は必ずしもその見方をしていない」と言います。一方でマルチタスクをこなしたり絶え間ない通知を確認したりといった習慣が注意散漫と結びつく可能性を示す研究は存在し、「人間の集中力が衰えたというより、現代の環境が集中力に強い負荷をかけるようになった」のだとアラン氏は説明しています。

こうした負荷に対応する手段として、ゲーム要素を組み込んだ集中アプリが登場しました。そのひとつである「Focus Friend」は、集中タイマーが実行されている間、画面の中の「豆」のキャラクターが編み物を続け、あらかじめ「開かない」と決めたアプリを作業中に開くと編み物がほどけてキャラクターが落ち込むという集中アプリ。集中を維持することができれば靴下やマフラーなどのゲーム内報酬が得られ、部屋の装飾などに使えます。


アラン氏は上記のアプリ設計が「どのように集中させるのか?」について複数の心理学的な原理を組み合わせている点を指摘しています。例えば、集中セッションの完了直後に報酬が得られることで「インセンティブ(人の行動を促す外部からの刺激や報酬)」が働きます。さらに、気が進まない作業をこなすことですぐに楽しい体験を得られるようにする「報酬の代替」も狙いのひとつ。

そして、集中タイマーを開始する行為は自分への小さな約束になり、連続記録を維持したい気持ちが「コミットメントと一貫性(一度決めたことや表明したことに対し、矛盾しないように一貫した行動を取りたがる心理傾向)」を後押しします。


また、部屋を飾り付けていくほど愛着が強まり、自分が作り上げたものを高く評価しやすい「IKEA効果」も働きやすくなるとアラン氏は述べています。

集中アプリが実際に有効なのかどうかを直接検証した研究は多くありません。スマートフォンの利用を減らすためのさまざまなアプリを調べた研究では「ゲーム化された集中アプリはユーザー評価が高い一方で利用頻度が低い傾向があり、スマートフォンの画面を白黒表示に切り替えるような単純な仕組みの方が有効な場合がある」と示されており、アラン氏は「App Storeでの高評価に加え、熱心なユーザーによる記事が数多くあることから人々がアプリを楽しく使っていることは分かるが、楽しさは必ずしも集中力や生産性の向上と直結しない」と述べています。


それでも、仕事中に反射的で抑えがたい衝動としてスマートフォンを確認したくなるのであれば集中アプリを試す価値はあるかもしれません。集中アプリを賢く使う方法として「いつ使うかと何に取り組むかを明確にして集中セッションを予定として確保する」方法をアラン氏は提案しています。

集中セッション中にスマートフォンを確認したくなった時には衝動や不快感を自覚して「重要なことを進める過程では不快さもある」と自分自身に言い聞かせること、1週間ほど使った段階で振り返りをして「これは自分の役に立っているのか、それとも自分がアプリに使われているのか?」と自分自身に問うことが大切だとアラン氏は述べています。

また、集中アプリには抜け道があります。集中アプリは作業の質までは評価しないため、価値の低い作業に時間を費やしても「集中した」と見なされる可能性があるのに加え、スマートフォンの設定次第ではアプリを簡単にだますことができる場合もあるとのこと。

集中アプリはスマートフォンを触る衝動を抑える助けにはなっても、スマートフォンがあることで注意散漫になるという要因そのものを解決できるとは限りません。アラン氏は「自分が何を感じているかに気づき、どう反応したいかを選び、本当に大切なものに集中し続けることを自分で決めること」が重要だとまとめています。

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in ソフトウェア,   サイエンス,   スマホ, Posted by log1b_ok

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