サイエンス

鼻うがいは風邪やアレルギーを予防してウイルス感染症の感染拡大を防ぐ


ウイルス性上気道感染症、いわゆる風邪は誰もが罹患(りかん)する病気で、一般的な人は年に3回発症し、症状は平均9日間続きます。風邪には抗生物質が効かず、市販薬のほとんども効果は控えめです。そんな風邪の予防に、「鼻うがい」が効果的であるという研究結果が公表されています。

Recent studies prove the ancient practice of nasal irrigation is effective at fighting the common cold
https://theconversation.com/recent-studies-prove-the-ancient-practice-of-nasal-irrigation-is-effective-at-fighting-the-common-cold-266659


鼻うがい(鼻腔洗浄)は、生理食塩水を使用して鼻腔を洗浄する行為です。鼻うがいは病気の期間を短縮するだけでなく、他の人へのウイルス感染を減らし、抗生物質の必要性を最小限に抑え、患者の入院リスクを低減する可能性が示唆されています。また、鼻うがいにかかる費用もわずかで、処方せんも必要ありません。

オールド・ドミニオン大学医学部の非常勤助教であり、開業医でもあるメアリー・J・スコルブタコス氏は、「私は家庭医として、風邪の患者さんを毎日診ています。生理食塩水による鼻うがいを初めて勧めると、患者さんはたいてい懐疑的な反応を示します。しかし、この治療法で人生が変わったと言う人が何人もいます。上気道感染症の治療だけでなく、アレルギー、慢性的な鼻づまり、後鼻漏、再発性副鼻腔炎の管理に役立ちます」と語っています。

鼻うがいは、5000年以上前から存在するインドの伝統医療であるアーユルヴェーダに由来するものです。

鼻うがいの効果を調査する研究では、ポンプ式ボトルを用いて鼻うがいを行うケースもあれば、伝統的なネティポッドを用いて鼻うがいを行うケースもあります。

ネティポッドの歴史は15世紀にまでさかのぼり、2012年にオプラ・ウィンフリー・ショーでネティポッドを用いた鼻うがいが実演されたことで、アメリカで大きな注目を集めたそうです。ただし、インドだけではなく古代ギリシャやローマでも鼻うがい用の器具が存在したことが確認されており、1902年発行の医学誌・The Lancetでも鼻うがいが取り上げられています。


生理食塩水にはいくつかの重要な利点があり、まずは鼻腔内の老廃物を物理的に洗い流します。老廃物には粘液やかさぶただけでなく、ウイルス自体やアレルゲン、その他の環境汚染物質も含まれます。

また、生理食塩水は淡水に比べてpH値がわずかに低いです。その酸性度はウイルスにとって住みにくい環境を作り出し、ウイルスの増殖を困難にします。

さらに、生理食塩水は鼻腔の表面を覆う繊毛と呼ばれる微細な毛状の突起からなる自然防御システムの一部の働きを回復させるのに役立ちます。繊毛は協調して運動し、エスカレーターのように働き、ウイルスやその他の異物を体外に排出します。生理食塩水を用いた鼻うがいは、このシステムを効果的に機能させるのに役立つわけです。


2024年にThe Lancetに掲載された1万1000人以上を対象とした研究では、何かしらの感染症などの症状の初期兆候が現れた時点で生理食塩水を用いた鼻うがいを1日最大6回行うことで、症状のある期間を平均2日間短縮できることが示されました。

より小規模な研究では、鼻うがいにより病気の期間が最大4日間短縮可能であると報告されています。

また、鼻うがいが感染拡大の予防に役立つことも示されており、入院患者を対象とした研究では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染した後、16時間にわたって4時間ごとに鼻うがいを実施したところ、新型コロナウイルスのウイルス量が8.9%も減少することが明らかになりました。一方、鼻うがいを行っていない対照群は、感染後16時間でウイルス量が増加し続けました。


アレルギー性鼻炎(花粉症)の患者が定期的に鼻うがいを実施する場合、抗アレルギー薬の使用量を62%削減できることも示されました。また、慢性的な鼻づまりや後鼻漏、再発性副鼻腔感染症にも効果的であることが示されています

鼻うがいをすると患者の症状が早く良くなるだけでなく、抗生物質耐性の主な原因となる不必要な抗生物質の処方を減らすことも可能です。抗生物質が呼吸器感染症の期間を短縮したり、重症度を軽減したりしないことは周知の事実です。しかし、研究によると患者は抗生物質の処方せんを持って診察室を後にすると、より満足感を得られることが示されています。

また、呼吸器感染症の患者4万9000人以上を対象とした研究では、患者の42.2%に抗生物質が不必要に処方されていることが明らかになりました。

上気道ウイルス感染症の初期に、抗生物質で症状が改善する傾向がある理由のひとつは、抗生物質のオフターゲット抗炎症作用によるものです。しかし、この効果は生理食塩水による鼻うがいと併用できるイブプロフェンやナプロキセンなどの抗炎症薬と併用することで、より効果的になります。

そのため、スコルブタコス氏は「鼻うがいは安価で効果的で、科学的根拠に基づいた代替療法であり、病気の期間を短縮するだけでなく、病気のまん延を防ぎ、不必要な抗生物質の必要性を最小限に抑え、病院に行かなくて済むようにします」と語りました。

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in サイエンス, Posted by logu_ii

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