月経周期は女性の認知能力に影響を与えないという研究結果

月経は生理とも呼ばれ、性的に成熟した女性において子宮内膜が剥がれ落ち、排出される過程で起きる出血のことを指します。月経の前後に下腹部のひどい痛みや吐き気などの症状が出る月経困難症(生理痛)を持つ人も多いものの、新たな研究では月経周期が女性の認知能力に影響する証拠はないことが判明しました。
Menstrual cycle effects on cognitive performance: A meta-analysis | PLOS One
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0318576

Menstrual Cycles Don't Affect Women's Cognitive Abilities, Study Finds : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/menstrual-cycles-dont-affect-womens-cognitive-abilities-study-finds
月経困難症は多くの女性に悪影響を及ぼしており、中には日常生活が困難なほどの腹痛や吐き気、出血、それに伴う貧血を経験する人もいます。しかし、月経周期が女性に及ぼす影響についての研究はタブーとされている時期が長く、かなりの数の実証研究があるにもかかわらず、月経周期と認知能力に関する定量的な研究は行われていなかったとのこと。
確かに、月経中の女性の体内ではエストロゲン・プロゲステロン・黄体形成ホルモンなどのホルモン分泌量が変動し、脳を含む全身の受容体に影響するとされています。しかし、これまでの「月経中の女性は認知能力が変わる」という説に、明確な科学的根拠はなかったそうです。
そこでオーストラリアのメルボルン大学で経営学助教を務めるDaisung Jang氏らの研究チームは、人間の月経周期を通じて認知能力を評価した102件の査読付き科学論文をレビューし、月経周期と認知能力の関連を分析するメタアナリシスを実施しました。

メタアナリシスでは4000人以上の月経中の女性から収集された、注意力・創造性・実行機能・知能・記憶・運動機能・空間把握能力・言語能力などの認知能力に関するテストのデータが用いられました。なお、「妊娠」「感染」「障害」「がん」などのキーワードに基づき、認知能力を混乱させる可能性がある変数を持つ論文は除外されたとのこと。
メタアナリシスの結果、月経周期による女性の認知能力の違いは小さく、一貫性がないため、ほとんど意味をなさないことが判明しました。つまり、女性の認知能力が月経に左右されるという証拠は見当たらなかったというわけです。
研究チームは、「認知能力に関する影響の欠如は、月経周期全体で発生する多数の文書化された生理学的変化を考えると、やや驚くべきことです」とコメントしています。今回の研究結果は、ホルモン分泌量の変動が微量であるため認知能力に影響しない可能性や、女性の脳が何らかの形で認知能力の低下を補っている可能性を示唆しています。

研究チームは、「生理学は認知能力を決定的に左右するものというわけではなさそうです。この結果は、誤解や俗説に対処し、差別的慣習に対処する上で重要な意味を持ちます。なぜなら、月経周期を理由に女性の思考能力を疑う科学的根拠は見つからなかったからです」と述べました。
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