ダークプールよりも闇が深いウォール街の「プライベートルーム」とは?

投資会社や保険会社といった機関投資家や大口投資家は、一般的な証券会社を通じた公開市場からは売買の動きが見えない「代替取引システム(ATS)」、通称ダークプールというシステムで株式の取引を行うことがあります。そんなダークプールよりもさらに透明性が低い新しい形態の非公開取引市場である「プライベートルーム」について、金融メディアのBloombergが解説しました。
Wall Street’s Dark Pools Grow Murkier with ‘Private Rooms’ - Bloomberg
https://www.bloomberg.com/news/features/2025-03-16/wall-street-s-dark-pools-grow-murkier-with-private-rooms

Bloombergによると、ダークプールは大規模な取引が株の相場に影響を与えないようにすることを主な目的としたものだとのこと。多くの場合、売り買いの希望価格である気配値は公開されているので、投資家はそれをヒントに、「買い注文が大量に入っていて株価が上がりそうだから、まだ売るのはやめておこう」といった判断をすることがありますが、気配値を隠してそのような判断をする材料を与えないようにすれば、取引を有利に進めることが可能になります。
この利点に加え、さらに誰がどの取引に参加できるかを細かく指定できる排他性を備えた、立ち入り制限付きの個室が「プライベートルーム」です。ある資産運用会社の電子取引責任者は、プライベートルームの使用感について「ブラックフライデーのセールをしているウォルマートに繰り出すのではなく、欲しい商品とそれを誰から買うのかを細かく決めてから買い物に行くようなものです。つまり、契約条件を自分でコントロールしているのです」と話しました。
プライベートルームがどのくらい使われているのかは不明で、比較的新しいため取引量は多くないといわれています。しかし、プライベートルームは企業の間で急速に浸透しつつあり、ある大手ATS企業のプライベートルームの取引量は競合企業9社のダークプールの取引量を上回るほどだとのこと。ダークプールの利用も増えており、アメリカでは取引所外の取引量が総取引量の過半を占めることが一般的になりつつあります。
そのことを示すグラフが以下。アメリカの株式市場における「取引所内」の取引量が黒線で、「取引所外」の取引が黄色の線で表されており、2つの取引量が2024年ごろを境に逆転しているのがわかります。

ダークプールは、公開市場である「リットプール」から離れた非公開のシステムで取引が行われることからつけられた名称です。ダークプールを使うと、注文の詳細が公開市場から見えないため、注文した取引が実行される前に不利な価格変動が起きるのを防ぐことができます。
しかし、ダークプールは匿名なので、誰でもダークプールに入ることができて、プール内の企業は取引相手が誰なのかを知ることができないという不便さがあります。一方、プライベートルームでは取引相手を指名できるため、そうしたダークプールの欠点が解消されています。
企業がプライベートルームを活用する理由は多種多様です。例えば、有色人種コミュニティから認定を受けた投資銀行であるCastleOak Securitiesは、自社と価値観を共有する企業と取引を行うため、少数民族が経営する証券会社だけが参加できるプライベートルームを利用しています。
一方でより迅速に、あるいはより優れた情報を持っている相手を出し抜けるようにプライベートルームを利用する投資家も増えており、プライベートルームの利用拡大が「幻の流動性」を生むとの批判もあります。

流動性とは、取引のしやすさのことで、一般的に市場で多くの人が活発に取引をするほど流動性は高くなります。プライベートルーム内で行われた取引も、ダークプール全体での取引量に合算され、市場に関する統計データに含まれます。しかし、実際には市場の中で広く行われる取引ではないので、取引がどれくらい活発に行われるかが過大評価されてしまい、一般的な投資家が判断を誤るリスクが高まります。
証券取引委員会は2018年に、ダークプールを手がけるATS企業にプライベートルームを設けているかどうかの開示を義務付けて、規制を強化しました。しかし、具体的にどこまで開示しなければならないのかは決まっていないので、いくつプライベートルームを開設しているのか、誰がそれを利用しているのかまではわからないのが実情です。
かつてニューヨーク証券取引所で働いていたというある投資会社の従業員は「最近は多くの企業がプライベートルームを設けています。プライベートルームは革新的で、今後も定着を続けるでしょう。そこでは、多くの人が知っている以上に、多くのことが行われているのです」と話しました。
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in メモ, Posted by log1l_ks
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