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既存の金融システムを塗り替える暗号資産の「分散型金融(DeFi)」のメリットとデメリットとは?


ビットコインに次いで2番目に高い時価総額を誇る暗号資産のイーサリアムは、スムーズに契約の締結や履行を行うプロトコルであるスマート・コントラクトを念頭に開発されたことから、金融システムとの親和性が高い暗号資産として注目集めています。そんなイーサリアムの特徴の1つである「DeFi(Decentralized Finance:分散型金融)」について、スイス・バーゼル大学でフィンテックを教えているファビアン・シェア教授が解説しました。

Decentralized Finance: On Blockchain- and Smart Contract-Based Financial Markets | St. Louis Fed
https://research.stlouisfed.org/publications/review/2021/02/05/decentralized-finance-on-blockchain-and-smart-contract-based-financial-markets

DeFiとは、ブロックチェーンをベースにした金融インフラのことで、一般的にはイーサリアムに代表されるパブリックなスマート・コントラクトプラットフォーム上に構築されたプロトコルの集まりのことを指します。DeFiは証券会社などの仲介業者や銀行などの中央集権的な管理者を必要としない代わりに、分散型アプリケーション(DApps)とオープンなプロトコルに基づいています。そのため、透明性が高くアクセス権も平等であるという特徴を持っており、旧来の金融システムに代わるものとして期待されています。

by Marco Verch Professional Photographer

DeFiの中核であるスマート・コントラクトは、暗号技術の研究者であるニック・スサボ氏によって提唱されました。スサボ氏は、スマート・コントラクトを自動販売機に例えて、「自動販売機にコインを入れると、その価値に応じた製品が出てきます。同様に、スマート・コントラクトにはコインを持つ誰もが参加できます」と説明しています。

スマート・コントラクトは参加が容易な上に、セキュリティも高いという長所を持っています。なぜなら、スマート・コントラクトが行われるブロックチェーンの各参加者が取引を検証できるようになっているため、従来の集中型コンピューティングに比べて非効率的な反面透明性が高く、恣意的な介入のリスクも最小限度だからです。

こうしたメリットを持つため、DeFiは急速に普及が進んでいます。以下は、DeFi関連のスマート・コントラクトに紐付けられた資産のグラフです。ドルベースの資産額を表す薄い水色の線を見ると、DeFiの規模が2020年末から2021年にかけて100億ドル(約1兆486億円)を突破していることが分かります。

by DeFi Pulse

一方、DeFiには次のようなデメリットもあります。

◆セキュリティキーの存在
DeFiのプロトコルには管理者キーが使われており、事前に定義された少数のグループがこのキーを使って契約の内容を更新したり、緊急時に契約を差し止めたりすることができます。これがDeFiの安全性の一端を担う予防策になっていますが、キーの保有者が悪意を持っていたり、悪意ある第三者の手にキーがわたる危険性もあると、シェア教授は指摘しています。

依存関係
DeFiでは多種多様なスマート・コントラクトや分散型ブロックチェーンアプリケーションが相互作用しており、これが既存のサービスから新しいサービスを生み出すことを可能にしています。この性質はDeFiの特徴の1つであるオープン性から来ていますが、「特定のプログラムに問題があるとそのプログラムと関係がある別のプラグラムも影響を受ける」という依存関係の問題の原因にもなります。また、スマート・コントラクトの多くは外部データに依存しているため、ここから依存関係の問題が持ち込まれるケースもあります。

◆悪用
暗号資産を規制する当局に共通する懸念の1つが、犯罪行為への悪用です。この点についてシェア教授は「状況は複雑です。DeFiの長所である透明性が犯罪利用を抑制することもあれば、匿名性が犯罪者にプライバシーを提供するおそれもあるからです」と指摘しています。

2021年1月にはアメリカのジャネット・イエレン財務長官が公聴会で「仮想通貨の多くが主に違法な資金繰りで使われている」と発言するなど、DeFiであるとないとにかかわらず、暗号資産には違法行為に悪用されるとの懸念がつきものだと指摘されています。

「仮想通貨の多くが犯罪組織に使われている」とアメリカ財務長官候補が発言、しかし「事実は異なる」という指摘も - GIGAZINE


スケーラビリティ
シェア教授は、「ブロックチェーンの分散化とセキュリティはスケーラビリティとトレードオフの関係にあります」と指摘。イーサリアムは比較的分散的でセキュリティ寄りであるため、スケールアップして需要に追いつくのが困難だという問題に直面しているとのこと。前述の通り、集中型コンピューティングを採り入れれば効率は上がりますが、そうすればDeFiやスマート・コントラクトの長所も損なわれかねないため、今後は拡大の一途をたどる需要にどのように追いつくかが課題になるとみられています。

こうしたメリットとデメリットを踏まえて、シェア教授は「DeFiは大きな可能性を秘めている一方で、一定のリスクも帯びています。しかし、そのような問題が解決すれば、DeFiは金融業界にパラダイムシフトをもたらし、より強固かつオープンで透明性の高いインフラの構築に貢献するでしょう」と述べました。

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in ソフトウェア,   ネットサービス,   セキュリティ, Posted by log1l_ks

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