人間の血液に「蚊を殺す毒」を含ませてマラリアの感染を抑えるアイデア、イベルメクチンの代わりとなる薬が発見される

マラリア対策には、マラリアを媒介する蚊の個体数を減らすことが有用です。新たに、高チロシン血症などの治療薬である「ニチシノン」を服用した人の血液が「蚊を殺す毒」として作用することがリバプール熱帯医学校の研究によって明らかになりました。
Anopheles mosquito survival and pharmacokinetic modeling show the mosquitocidal activity of nitisinone | Science Translational Medicine
https://www.science.org/doi/10.1126/scitranslmed.adr4827
Rare disease drug nitisinone makes human blood deadly to mosquitoes | News | Notre Dame News | University of Notre Dame
https://news.nd.edu/news/rare-disease-drug-nitisinone-makes-human-blood-deadly-to-mosquitoes/
血液に蚊を殺す毒性を付与するというアイデア自体は新しいものではなく、すでに抗寄生虫薬のイベルメクチンが同様の目的で使われています。しかし、イベルメクチンを多用する地域では蚊がイベルメクチンに対する耐性を獲得してしまうという問題があります。そこで、研究チームはニチシノンに着目して蚊に対する有効性を分析しました。
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ニチシノンは4-ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼ(HPPD)という酵素を阻害する効果を持っており、人間に投与すると人間にとって有害な疾患副産物の蓄積を防ぐことができます。HPPDは蚊にとっては血液を消化するうえで重要な酵素であり、蚊が「ニチシノンを服用した人間の血液」を吸って体内にニチシノンを取り込むと血液をうまく消化できなくなり死に至ります。
研究チームは、蚊を殺すのに十分な効果を発揮するニチシノン投与量を実験で確かめました。その結果、ニチシノンを1日2mg投与することで人間の血液に蚊を殺す効果を持たせられることが分かりました。
また、ニチシノンの殺虫効果はイベルメクチンよりも長期間持続することが明らかになったほか、イベルメクチンよりも効果的に蚊を殺せることも判明しました。
研究チームの一員であるリー・ラフス・ヘインズ氏は「将来的には、ニチシノンとイベルメクチンの両方を交互に使用することで蚊の駆除を有利に進められる可能性があります。例えば、イベルメクチンに対する耐性が残っている地域や家畜や人間にイベルメクチンがすでに投与されている地域ではニチシノンが効果的な可能性があります」と述べています。また、ニチシノンの使用が広まることで生産量が増加し、高チロシン血症などの患者がニチシノンを安価に入手できるようになるとも指摘されています。
研究チームは今後は野外実験などを実施し、最も効果的なニチシノン投与量を特定することを目指しています。
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in サイエンス, 生き物, Posted by log1o_hf
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