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およそ100年の努力の末にエジプトがマラリア撲滅国に認定される


世界保健機関(WHO)が、エジプトをマラリア撲滅国と認定したと発表しました。エジプトは1920年代からマラリアの撲滅を目指してさまざまな取り組みを行っていました。

Egypt is certified malaria-free by WHO
https://www.who.int/news/item/20-10-2024-egypt-is-certified-malaria-free-by-who

マラリアは主に蚊に刺されることで感染する病気で、マラリア原虫と呼ばれる原生生物が赤血球に寄生することが原因で起こります。赤血球が破壊されるため、発熱や貧血、けん怠感を引き起こすほか、重症化すると脳症や腎症といった合併症が生じ、命の危険もあります。

ナイル川をたたえるエジプトでは、紀元前4000年頃から人々がマラリアに苦しめられていたことがわかっており、発掘されたミイラからもマラリアの痕跡が発見されています。人口の大半がナイル川沿岸に住むエジプトでは、1920年代にマラリアの罹患(りかん)率が40%に達したため、エジプト政府は住宅地付近での農作物の栽培を禁止しました。さらに1930年にはマラリアを届出疾患に指定し、診断・治療・監視に重点を置いた初のマラリア特化の診療所を開設しています。


1940年代になると、第二次世界大戦による人口移動、医療用品やサービスの途絶、そして媒介者となる蚊の一種であるAnopheles arabiensisが住み着いてしまった結果、エジプトのマラリア症例は300万件以上に急増したとのこと。そこで、エジプト政府は4000人以上の医療従事者を雇用し、16の診療所を設立して抵抗しました。

1970年、エジプト南端部のアスワン地区にアスワンハイダムが完成します。アスワンハイダムは農業と工業の近代化を目指すエジプトにとっては一世一代の建築プロジェクトでしたが、たまった水は蚊の繁殖地となり、エジプトに新たなマラリアの危険を呼ぶことにもなりました。そこで、エジプトはスーダンと協力し、マラリア発生を迅速に検知して対応するための公衆衛生監視プロジェクトを開始しています。

by Mig Gilbert

WHOによれば、エジプトでは早期の症例特定、迅速な治療、媒介動物の駆除が徹底して行われ、2001年までにマラリアは完全に制御下におかれていたとのこと。マラリア診断と治療はエジプト全土の住民に無料で提供されているそうです。

マラリア撲滅国として認定されるためには、蚊によるマラリアの国内感染連鎖が少なくとも過去3年にわたって全国的に断絶されたことが証明される必要があり、国は感染の再拡大を防ぐ能力を持っていることも実証する義務があります。これまでWHOの東地中海地域でマラリア撲滅の認定を受けているのはアラブ首長国連邦とモロッコで、エジプトが3番目。世界では合計44カ国・1地域がマラリア撲滅の認定を受けています。


WHOのテドロス・アダノム事務局長は「マラリアはエジプト文明と同じくらい古いものですが、ファラオたちを苦しめたこの病気は今やエジプトの未来ではなく人類の歴史の一部です。エジプトがマラリア撲滅国として認定されたことはまさに歴史的なことであり、古代の災厄を撲滅するというエジプト国民と政府の決意の証です」とコメントしています。

エジプトのハーリド・アブドゥル・ガッファール副首相は「本日マラリア撲滅証明書を受け取ったことは、旅の終わりではなく、新たな段階の始まりです。私たちは監視・診断・治療・総合的な媒介動物管理の最高水準を維持し、効果的かつ迅速な対応を維持することで、成果を維持するためにたゆまぬ努力をしなければなりません。エジプトがマラリアのない状態を維持するには、多分野にわたる継続的な努力が不可欠です」と語りました。

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in メモ, Posted by log1i_yk

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