ADHDに関するTikTok動画の多くに誤情報が含まれており若者のADHDに対する認識をゆがめている

ADHD(注意欠如・多動症)は注意力を持続させることが困難であったり、落ち着きがなかったり、順序立てた行動が苦手だったりするなどの特性がみられる発達障害のひとつです。そんなADHDに関するTikTok動画の多くに誤情報が含まれており、若者のADHDに対する認識に悪影響を及ぼしていることが、新たな研究で判明しました。
A double-edged hashtag: Evaluation of #ADHD-related TikTok content and its associations with perceptions of ADHD | PLOS One
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0319335

ADHD misinformation on TikTok is shaping young adults’ perceptions
https://news.ubc.ca/2025/03/adhd-misinformation-on-tiktok/
TikTok Misinformation Is Warping Young People's Understanding of ADHD : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/tiktok-misinformation-is-warping-young-peoples-understanding-of-adhd
ショート動画共有SNSのTikTokは若年層を中心に強い人気を集めており、世界中で十数億人もの月間アクティブユーザーが存在しています。TikTokで共有されている動画の中には完全に娯楽目的のものもあれば、ニュースや医学的なトピックを扱ったものもあり、ADHDに関する動画も多数投稿されています。
カナダのブリティッシュコロンビア大学の研究チームは、「attention deficit hyperactivity disorder(ADHD)」のタグが付けられたTikTok動画のうち、最も視聴されていた上位100本を分析しました。これらの動画は、合計で5億回以上再生されていたとのこと。
分析の結果、これらの動画内で行われていたADHDの症状に関する主張のうち、実際にADHDを診断するための臨床ガイドラインに一致したものは半分以下であることが判明。つまり、ADHDに関するTikTok動画の多くに、何らかの誤情報が含まれていたというわけです。
多くの動画で、クリエイターはADHDにまつわる個人的な体験を共有していましたが、これらの体験が必ずしもすべてのADHDの人に当てはまるわけではなく、ADHDではない人にも当てはまる可能性について説明していませんでした。この説明が欠如していることにより、視聴者が誤って「自分も同じような経験があるし、きっとADHDなんだろう」と自己診断してしまったり、ADHDの症状について誤認してしまったりするリスクが高まります。
また、若者がADHD関連のTikTok動画を視聴すればするほど、一般集団におけるADHDの有病率と重症度の両方を過大評価する可能性が高まり、動画を他人に推奨する傾向が強まることもわかりました。確かにADHDは小児期に診断される最も一般的な神経発達障害のひとつで、多くの場合は成人期まで症状が続きますが、診断される子どもの割合は3~7%であり、成人では2.5%程度とのことです。

さらに研究チームは、2人の臨床心理士にADHDのタグが付いた人気のTikTok動画上位100本を見てもらい、精度やニュアンスに基づいてスコアを付けてもらいました。その後、このスコア付けでトップ5に入った動画とワースト5に入った動画を、心理学の入門コースを受講した学部生843人に見せて、動画を評価するように依頼しました。
臨床心理士らはベスト5の動画に平均「3.6」のスコア(高いほど優れている)を付けましたが、学部生らは同じ動画に平均「2.8」のスコアを付けました。一方、臨床心理士らはワースト5の動画に平均「1.1」のスコアを付けましたが、学部生らは平均「2.3」と大幅に高いスコアを付けたことが判明。これは、多くの学部生らが動画に含まれる誤情報を見過ごしており、動画の正確性や品質について過大評価していることを示唆しています。
論文の筆頭著者で臨床心理学の博士課程学生であるヴァシリア・カラサヴァ氏は、「TikTokは意識を高め、偏見を減らすための素晴らしいツールになる可能性がありますが、欠点もあります。逸話や個人的な経験は強力ですが、文脈が欠けているとADHDやメンタルヘルス全般についての誤解につながる可能性があります」と述べました。
研究チームは、臨床心理士やその他のメンタルヘルスの専門家らが、ADHDに関するTikTok上の議論でより積極的な役割を果たすことができると指摘。専門家が支援する正しいTikTok動画を提供することで、ADHDやメンタルヘルスに関する誤情報に対抗し、若者がより信頼性の高いリソースにアクセスするようにできるとのこと。
論文の上級著者であり、ブリティッシュコロンビア大学の心理学教授を務めるアモリ・ミカミ氏は、「一部の若者は、アクセスの障壁やメンタルヘルスの専門家と接した際の否定的な経験から、TikTokを利用しています。また、誰が臨床心理士にかかることができるのかという公平性の格差に対処することも、私たちの責任です」と述べました。

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in ネットサービス, サイエンス, Posted by log1h_ik
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