思考力がガクッと低下する「脳みその曲がり角」が研究で判明、脳のエネルギーを維持するサプリとは?

若い頃のスキンケアが急に通用しなくなる年齢を「お肌の曲がり角」と呼ぶことがありますが、同様に脳の衰えも非線形で、ある年齢になると急激に機能が低下し始めることが、約2万人の脳をスキャンする研究で判明しました。この研究ではまた、サプリメントや食事で代謝が衰えた脳にエネルギーを供給することで効果的に老化を食い止められる可能性があることもわかりました。
Brain aging shows nonlinear transitions, suggesting a midlife “critical window” for metabolic intervention | PNAS
https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2416433122
Study Reveals Critical Age When Your Thinking Begins to Decline : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/study-reveals-critical-age-when-your-thinking-begins-to-decline
2025年3月3日に米国科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載された研究で、アメリカ・ストーニーブルック大学のリリアンヌ・ムヒカ・パロディ氏らの研究チームは、UKバイオバンクを含む4つの大規模調査で収集された脳検査のデータセットを分析しました。
合計1万9300人を対象とした脳スキャンによると、脳の変化は44歳前後から目立ち始め、67歳で最も急速に進み、90歳頃に落ち着くという経過をたどるとのこと。研究チームは、細胞にエネルギーを取り込ませるホルモンである「インスリン」の効きにくさ、つまりインスリン抵抗性による神経細胞ネットワークの破綻が脳の衰えの原因ではないかと考えています。

ムヒカ・パロディ氏は「脳の老化がいつ、どのように加速するかを正確に理解することで、介入のための戦略的なタイミングを知ることができます。私たちは、脳がエネルギーを得られにくくなるものの、不可逆な損傷はまだ発生していない、つまり『破綻の前の曲がり角』となる中年期の重要な時期を特定しました」と述べました。
また、研究チームが遺伝子解析を行ったところ、グルコース輸送体「GLUT4」と脂質輸送体「APOE」に関連する活動が脳の機能低下と相関していることがわかりました。特にGLUT4はインスリンに反応して細胞にエネルギーを供給するのに重要な役割を果たしていますが、インスリン抵抗性により脳細胞がエネルギー源であるブドウ糖を取り込めなくなると、シグナルを伝達する脳のネットワークが崩壊してしまいます。
一方、遺伝子解析ではケトン/乳酸輸送体「MCT2」の活動が脳機能の低下と逆相関していること、つまり脳の老化の影響はニューロンに乳酸やケトンを供給することで緩和されている可能性があることも突き止められました。

脳の主要なエネルギー源はブドウ糖ですが、脳細胞にブドウ糖を取り込ませるインスリンは加齢に伴うインスリン抵抗性によって働きが鈍ってしまいます。一方、代替エネルギー源となるケトン体の供給はインスリンの働きに左右されないので、加齢に伴う代謝低下の潜在的な治療薬として有望です。
そこで、研究チームが21~79歳の被験者101人にケトンサプリメントを投与する実験データを検証したところ、最も急速に脳神経ネットワークが不安定化する40~59歳の時期に介入の効果が最大化されることがわかりました。
ケトン体の機能について、ムヒカ・パロディ氏は「中年期の人のニューロンは、燃料不足により代謝的なストレスを受けて苦境に立たされますが、まだ生き残っています。従って、この重要な時期に代替燃料を供給することにより、機能が回復する可能性があります。この年齢を過ぎて、ニューロンが長期にわたって飢餓状態に置かれると、介入の効果が低下してしまうかもしれません」と説明しています。

研究チームによると、断食や低炭水化物/高脂肪ダイエットによって内因的に生成されたケトン体でも、サプリメントとして外因的に投与されたケトン体でも、インスリン抵抗性によって誘発されるニューロンの機能低下を緩和する効果が期待できるとのこと。
論文の筆頭著者であるストーニーブルック大学のボトンド・アンタル氏は「これは、脳の老化防止についての考え方におけるパラダイムシフトです。重大な損傷が発生するまで表面化しない認知症状が発生するのを待つのではなく、神経代謝マーカーを通じてリスクを抱えた人を特定すれば、重要な時期に介入を行うことができるでしょう」と話しました。
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