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動物を虐待せずに肉を食べようとするといくらかかる?


多くの人が肉料理をこよなく愛する一方、動物の愛護にも熱心で、インターネットではよく動物虐待に関連する話題やコンテンツが炎上しています。消費者の目に触れないところで家畜たちが悲惨な扱いを受けている実情について、教育系YouTubeチャンネルのKurzgesagtが解説しました。

This Is NOT An Anti Meat Video - YouTube


多くの食肉生産者はできる限り動物にいい暮らしをさせようと努力していますが、畜産業界がより低価格を求める市場圧力にさらされているのも事実です。


Kurzgesagtは、「畜産は非常に複雑です」と前置きした上で、単純化のために欧米における畜産業を家畜の状態に応じて「適切」「監獄」「拷問キャンプ」の3つに分類しました。


最初に検証するのは、代表的な食肉のひとつである鶏です。地球上には約260億羽の鶏がおり、これは他のすべての鳥類を合計した数と同じです。一見すると鶏は知能が低いように見えますが、実際の鶏には社会性があり、コミュニケーションを取ったり、問題を解決したり、共感したりする能力を持っていることが知られています。


それにもかかわらず、世界では鶏卵用の鶏の約90%が拷問キャンプで飼育されています。


激しいストレスをかかえた鶏同士が傷つけ合わないように、多くの養鶏場ではくちばしを切り取る処置が行われています。欧米では、法律の規制や消費者の取り組みにより状況が大きく改善されつつありますが、それでも50%以上の鶏が狭いケージに閉じ込められているとのこと。


驚くべきことに、ケージのスペースを2倍にして、鶏たちの待遇を拷問キャンプから監獄に移しても、卵1個当たりの価格は0.3ユーロ(約47円)から0.32ユーロ(約50円)へと、たったの0.02ユーロ(約3円)しか値上がりしません。


さらに、鶏が小屋から屋外に出ることが許され、草木に接することができるようになったとしても0.37ユーロ(約57円)です。


親鶏の問題よりさらに残酷なのがオスのひよこの処分で、これにより毎年70億羽のひよこが生まれた直後に命を落としています。


フランスやドイツではこの慣行が禁止されており、メスのみが卵からかえるようになっています。これにより、卵1個当たりのコストは0.42ユーロ(約65円)となります。


卵1ダースに0.85ユーロ(約132円)多めに支払うことで鶏の待遇は大きく改善され、さらに0.6ユーロ(約93円)上乗せするとひよこの殺処分も防げる計算です。


鶏肉は卵より深刻です。肉用鶏の多くは急激に太るように遺伝子操作されており、死ぬまで内臓への負担や過体重による歩行困難などの問題に苦しみます。


正確な数字を出すのは困難ですが、もしアメリカの養鶏家が穏やかに成長する品種に切り替えた場合、胸肉1人前の価格は1.5ドル(約225円)から0.09ドル(約14円)ほど高くなり、1.59ドル(約239円)となります。


EUでは肉用鶏の90%が過密で暗く、換気も行われていない監獄や拷問キャンプに押し込められています。これらの鶏に30%広いスペースを与え、止まり木や日光や新鮮な空気にアクセスできるようにすると、肉1人前当たりさらに0.13ドル(約20円)かかります。


比較的まともな、つまり「適切」な環境で飼育されている肉用鶏は5%未満しかいません。鶏肉は非常に安価なので、まともな環境で育った鶏の肉は、部位次第では通常の倍近い価格になることが一般的とのこと。


続いて、豚について考えます。豚には犬並みの知能と社会性があり、遊び好きでよくペットにもされています。


しかし、ペットの豚と養豚場の豚の差は大きく、食用の豚の90%以上は拷問キャンプのような環境で飼育されています。こうした環境では、豚は敷き藁もないコンクリートの床で育てられ、必要とする環境とはほど遠い状況に置かれています。


極度のストレスにより豚同士のケンカが頻発するため、子豚は尾をかまれないように鎮痛処置もなく断尾され、母豚は「クレート」と呼ばれる狭い金属製の拘束具に閉じ込められます。このため、母豚は極度の苦しみを味わい、子豚は生後たった3週間で親から引き離されるという過酷な状況に置かれています。Kurzgesagtは「犬がそのように扱われているのを見たらどう感じるでしょうか」と問いかけました。


まず豚をクレートから解放し、扱いを拷問キャンプから監獄レベルに改善させると、豚肉1人前の価格は2ユーロ(約310円)程度から約0.2ユーロ(約31円)上昇します。


麻酔を使って痛みのないように処置をしても、肉1kg当たりの値上がりは0.01ユーロ(約2円)とほぼ誤差です。また、デンマークの研究によると、豚に30%広いスペースやより多くの敷き藁、その他の動物に優しい措置を講じても、1人前当たり0.2ユーロの追加料金が必要になるだけとのこと。


さらに1人前当たり0.4ユーロ(約62円)プラスすることで、豚が生涯のうち少なくとも40%は屋外にアクセスできるようになり、0.8ユーロ(約124円)増やすことで屋内で過ごす豚のスペースを4~5倍に増やすことができます。


そのような環境で飼育されているEUの豚は1%程度。それでも本当に適切な環境かどうかは判断がわかれますが、少なくともある程度まともな環境で育てることは豚肉1人前当たり1.2ユーロ(約186円)の追加費用で実現可能です。


最後に、牛について考えてみます。一般的な肉牛は生涯の3分の2を自然に近い屋外で放牧されて過ごすため、他の家畜に比べるとましな待遇を受けています。


しかし、余生はやはり悲惨で、短い生涯の3分の1を解体に向けて太らせる監獄もしくは拷問キャンプレベルの畜産場「フィードロット」で過ごすことになります。


アメリカでは、最期まで牧場で過ごせる牛は5%未満といわれていますが、ドイツの研究ではそのような状況を改善させても牛肉の価格は約15%程度しか値上がりしないことが示されています。


乳牛は肉牛より悲惨で、生涯のほとんどを屋内で過ごし、硬いコンクリートの床のせいで足の裏の傷や潰瘍といった問題に苦しめられます。


しかし、そのような環境が手頃な価格の牛乳を生産するのに必要かというと、そうではありません。例えばドイツの場合、屋外での放牧に切り替えても牛乳1リットルの価格が1ユーロ(約155円)から1.1ユーロ(約171円)に増えるだけとのこと。


ざっくりまとめると、よく食卓に並ぶ家畜の生活環境を拷問キャンプからまともなものへと改善するには、牛肉と牛乳では約15%、卵と豚肉では約50%、そして鶏肉では約100%の価格上昇が必要になるということになります。


いかにも高くなるように思えますが、先進国における食肉の価格は過去に類を見ないほど低くなっています。例えば、世界最大の肉消費国であるアメリカでは、平均して1カ月337ドル(約5万円)の食費のうち88ドル(約1万3200円)が肉、卵、乳製品に費やされています。これらが平均50%高くなれば、月あたり約43ドル(約6450円)の追加支出となりますが、それでも所得に対する比率は1987年とほぼ同じです。


ドイツでは、平均して月に約70ユーロ(約1万850円)が肉、卵、乳製品に費やされているので、それが50%上昇すれば約105ユーロ(約1万6300円)になることが想定されています。


Kurzgesagtは「消費者が購入する肉の約20%が廃棄されている状況も相まって、肉が安すぎるために期限内に消費されず、その価値が軽んじられている現実があります」と述べました。


個人の消費者が、動物の拷問を防ぐためにできることは、飼育に関するラベルをしっかり確認してから肉を買うことです。もしラベルがない場合は、ほぼ間違いなく拷問キャンプで飼育された動物の肉だと言えます。


もちろん、ラベルには問題もあります。一部の小売業者は、倫理的な肉を「ぜいたく品」として位置づけ、不必要に高い値札を貼っています。また、「オーガニック」「ナチュラル」「エコロジカル」などのラベルは動物福祉とは無関係なことが少なくありません。例えば、遺伝子組み換え作物の不使用などは動物やそれを食べる人間の健康にはなんら利益をもたらさず、不自然な環境で育てられる動物たちの肉を「ナチュラル」に見せるための目くらましです。


その上で、Kurzgesagtは「もし余裕があり、少なくとも拷問の伴わない肉を手に入れたいのであれば、ラベル表示のある商品を選ぶことが最善策です。また、可能であればオーガニック製品を選び、さらに時間に余裕があるなら地元の農場を調査して、自分の目で確認した上で肉を購入するのが望ましいでしょう」と述べました。


動物虐待を減らす上でヴィーガンになる必要はありませんが、親の世代と同じ金額で肉を買うのが難しいなら、肉の消費量を減らすのも手です。


なお、食べるのを控えた方が環境に優しい肉のほぼ唯一の例外はムール貝です。ムール貝は炭素を吸収し、水をろ過することで沿岸の海をきれいにする能力を持っている上に、中枢神経がなく痛みを感じることもない点で「苔(こけ)」に近い存在だとのこと。そのため、Kurzgesagtは「もっとムール貝を食べるべき」と推奨しました。

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in 生き物,   動画,   , Posted by log1l_ks

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