「もし人間が翼を手に入れたら?」を科学者が真剣に考えるとこうなる

小さい頃、鳥が自由に羽ばたくのを見て「あんな風に空を飛びたい」と思ったことがある人は多いのではないでしょうか。そんな素朴な想像が現実のものになるとしたら、人はいったいどんな姿になるのかについて、サイエンス系ニュースサイトのLive Scienceが専門家に取材しました。
If humans could fly, how big would our wings be? | Live Science
https://www.livescience.com/health/if-humans-could-fly-how-big-would-our-wings-be

ノースカロライナ大学チャペルヒル校の生物学教授のタイ・ヘドリック氏によると、飛ぶのに必要な翼の大きさは主に体重で決まり、体重が70kgで身長が150cm以上の人間の場合、空を飛ぶのに必要な羽の翼開長、つまり広げた翼の端から端までの長さは6メートルだとのこと。
この数字は、マンチェスター大学で生物学を教えている上級講師であるロバート・ナッズ氏が2007年に発表した(PDFファイル)研究に基づいて算出されたもの。鳥類学を専門とする査読付き科学誌・Journal of Avian Biologyに掲載された論文の中でナッズ氏は、鳥の翼に関するパラメーターが体重に応じてどのように変化するかを考察し、方程式にまとめました。
その方程式を元に人間に必要な翼の大きさを計算したヘドリック氏は、「意外に小さいと思いました」とコメントしています。
なお、過去の地球には翼を広げると6メートルになる巨大な鳥が実在した可能性があることが、化石の研究により判明しています。
翼幅が最大6メートルという「空を飛ぶことが可能な限界サイズの鳥」に関する研究結果が発表される - GIGAZINE

空を飛べる人間を想像する際、多くの人は背中から鳥の羽が生えた天使のような姿を思い浮かべます。しかし、ロサンゼルス郡立自然史博物館恐竜研究所の研究員であるマイケル・ハビブ氏によると、背中の翼を羽ばたかせるには独立した肩甲骨と、胸から背中までつながっている「飛翔(ひしょう)筋」が必要とのこと。残念ながら人間にはどちらもありません。
こうした点を踏まえると、人間には鳥の翼よりコウモリのような翼の方が適しているそうで、その場合は両手が翼幅6メートルになるまで巨大化し、指の間を飛膜が覆うことになります。

そして、実際に飛ぶには羽を動かすための筋肉も欠かせません。鳥の場合、全身の筋肉のうち平均16~18%は飛ぶためのもので、中には最大30%の筋肉を胸部に集中させている種もあるとのこと。
鳥に比べるとコウモリは筋肉量が全身に分散されていますが、それでもコウモリの翼を持つ人はかなり人間離れした姿になるようで、ハビブ氏は「胸は大きく張り出し、背中はとてつもなく引き締まった体形になるでしょう」と話しました。
また、飛行には「羽ばたく」「滑空する」「ホバリングする」「滑翔(かっしょう/ソアリング)する」などの要素があり、どれをメインにするかが翼の種類に関係しています。例えば、飛行中ずっと羽ばたく鳥は翼が短く頑丈ですが、気流に乗ってほとんど羽ばたかずに飛ぶ「ダイナミック・ソアリング」という飛び方で知られるアホウドリは体の大きさに比べて長い翼を持っています。ハビブ氏によると、体が比較的大きい人間も、あまり羽ばたかずに滑翔をする可能性が高いとのこと。
離陸の仕方も問題で、6メートルもある翼を派手に羽ばたかせると地面にぶつけてしまうので、ただ翼を上下させて飛び立つのは困難だと、ヘドリック氏は指摘します。
そこで、ハビブ氏は4本の手足で立ってからジャンプして飛び立つ「4本足離陸(クアドラペダル・ローンチ)」という方法を提案しました。ハビブ氏らが2010年に学術誌・PLOS Oneで発表した論文によると、2億年以上前に脊椎動物の中で最初に飛ぶ能力を進化させた翼竜も、翼を含めた4本の足で歩行したり飛び立ったりしていた可能性が高いとのこと。現代の吸血コウモリなども、よつんばいで歩いたり走ったりすることが知られています。

by Luke Holmes
このように、Live Scienceが2人の専門家に取材をしたところ、人間が空を飛べる翼を手に入れるとすると、その見た目は「両腕を広げると6メートルになる巨乳でマッチョなコウモリ人間」になるという結果でした。
ヘドリック氏は、「人間が飛ぶには鳥類が長い歳月をかけて獲得してきたような、多くの適応が必要になるでしょう」とコメントしました。
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