月にも土星のようなリングがあったかもしれないとの研究結果、「現在の太陽系の衛星に環がない謎」が一層深まる

土星などの惑星には美しい「環(わ)」があるほか、太古の地球にも環があったかもしれないとの研究も報告されています。しかし、準惑星や小惑星にさえ環を持つものがあるにもかかわらず、太陽系に約300個もある衛星には、環を持つものが1つも見つかっていません。この謎に切り込む詳細なシミュレーションを行った結果、事実とは異なり「多くの衛星に環があるはず」だということが判明したとの論文が発表されました。
The missing rings around Solar System moons | Astronomy & Astrophysics (A&A)
https://www.aanda.org/articles/aa/full_html/2024/11/aa49453-24/aa49453-24.html
Earth's moon could've had Saturn-like rings, new study hints | Live Science
https://www.livescience.com/space/the-moon/earths-moon-couldve-had-saturn-like-rings-new-study-hints
Wait a Minute. Why Don't Any of The Solar System's Moons Have Rings? : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/wait-a-minute-why-dont-any-of-the-solar-systems-moons-have-rings
環を持つ惑星として最も有名なのは土星で、大小さまざまな氷や岩の塊でできたこれらの環は、重力の作用により環の崩壊を防ぐ羊飼い衛星によって調整されながら、数千もの細く繊細な同心円を形成しています。
また、観測技術の発達により、木星の軌道の外にあるケンタウルス族の小惑星カリクローなど、惑星以外にもさまざまな天体が環を持っていることが判明しています。

by ESO/L. Calçada/M. Kornmesser/Nick Risinger
しかし、惑星の周囲を回る衛星には、環を持つものがありません。以前、木星の衛星のレアが環を持つ可能性が指摘され、画期的な発見として話題になりましたが、後に誤報だったことがわかりました。
この疑問について、チリにあるアドルフォ・イバニェス大学の天体物理学者のマリオ・スセルキア氏は「太陽系の巨大惑星や、ケンタウロス族の天体や、太陽系外縁天体にも環があるのに、なぜ太陽系の衛星には環がないのでしょうか。環はそれほど珍しくないことを考えると、この謎は直感に反するように思えたので、衛星の周囲での環の形成や、長期的な安定を妨げる根本的で力学的な理由があるかどうかを知りたいと考えました」と話しました。
スセルキア氏らの研究チームは、2022年の研究で、少なくとも単独で浮かぶ衛星の周囲には環が形成されうることを確かめています。しかし、この研究では惑星や他の衛星などの重力の影響は考慮されていませんでした。
そこで、2024年10月30日に学術雑誌のAstronomy and Astrophysicsで発表した研究で、スセルキア氏らは地球・木星・土星・天王星・海王星の5つの惑星を選び、これらの惑星が持つすべての衛星に環を追加して、その環が100万年の間に他の衛星や惑星の重力の影響を受けながらどのように変化するかをシミュレーションしました。
その結果、土星の主要な衛星としては最も親惑星に近い軌道を周回しているミマスのような例外を除き、多くの衛星の環は長期的に安定することがわかりました。例えば、地球の衛星、つまり月が安定した環を保持する可能性は95%だったとのこと。

by ESO/L. Calçada/Nick Risinger
太陽系の衛星に環がないことを裏付けるどころか、環があるはずだということを示す予想外のシミュレーション結果について、スセルキア氏は「他の衛星や親惑星が環を乱す過酷な重力環境にある衛星が、このような安定した環を維持できるとは予想していませんでした。この厳しい環境は、衛星の環を破壊するどころか、むしろ土星の環に似たしま模様や波紋のような構造を作り出し、環に素晴らしい美しさを与えるものだったのです」と話しました。
このシミュレーションにより、現実の衛星に環がない原因は他の衛星や惑星による複雑な重力の作用ではない可能性が強まりました。そのため、現在の衛星に環がないのは、太陽からの放射線や親惑星の磁場から発生する荷電粒子など重力以外の要因が関係しているのではないかと、スセルキア氏らは考えています。
衛星の中には、過去に環があったことを示唆する痕跡を持つものもあります。例えば、土星の衛星であるイアペトゥスには赤道に沿うようにして連なる巨大な尾根があり、これはちょうど土星の輪が少しずつ土星に落下しているのと同様に、過去に存在していたイアペトゥスの環が地表に落下してできたものの可能性があります。

また、前述のレアの周囲にはかつて環だったものの名残として小さなデブリが漂っているとの説がありますが、今回の研究結果はこの説の裏付けにもなっています。
スセルキア氏らの研究チームは、探査の範囲を太陽系の外に広げ、環のある衛星が惑星の周囲を回っている別の星系を見つける研究に着手しています。
「衛星が環を持つ他の世界の住民が、一体どんな神話や物語を作るのか考えずにはいられません。もし私たちの月に環があったら、私たちの物語や文化はどうなっていたでしょうか。可能性は無限です」とスセルキア氏は語りました。
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