OpenAIが「政治的に偏りのない」AIへの言及を削除するためひそかに政策文書を改訂
現地時間の2025年1月13日、OpenAIはアメリカ政府や同盟国と協力して構築できるアメリカのAIの未来の「経済的青写真」と称する政策文書を公開しました。この政策文書の草案では、「AIモデルはデフォルトで政治的に偏りのないものを目指すべき」と記されていたのですが、公開されたバージョンではこの記述が削除されていることが明らかになっています。
OpenAI quietly revises policy doc to remove reference to 'politically unbiased' AI | TechCrunch
https://techcrunch.com/2025/01/14/openai-quietly-revises-policy-doc-to-remove-reference-to-politically-unbiased-ai/
政策文書から「AIモデルはデフォルトで政治的に偏りのないものを目指すべき」という記述が削除されていることを発見したのは、AIPRMでリードエンジニアを務めるTibor Blaho氏。同氏によると、2025年1月9日に公開された政策文書の草案に存在した「AIモデルはデフォルトで政治的に偏りのないものを目指すべき」という記述が、1月13日に公開されたバージョンでは削除されていた模様。
OpenAI's Economic Blueprint has been updated on 2025-01-13 (compared to previous version from 2025-01-09) pic.twitter.com/MQnxP1OvPz
— Tibor Blaho (@btibor91) January 14, 2025
これについて、テクノロジーメディアのTechCrunchがOpenAIにコメントを求めたところ、同社の広報担当者から「文書を合理化する取り組みの一環として、記述が削除された」と説明されたそうです。なお、OpenAIのモデル仕様を含む、その他の文書では「客観性について述べている」と述べ、OpenAIのAIモデルは正しい客観性を有しているとアピールしました。
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OpenAIが政策文書から一部の記述を削除したことは、「偏ったAIに関する議論が政治的な地雷原となっていることを明らかにしている」とTechCrunchは指摘しています。
イーロン・マスク氏やデビッド・サックス氏など、ドナルド・トランプ次期大統領の協力者の多くは、AIチャットボットが保守的な見解を検閲していると非難しています。特にサックス氏は、OpenAIのChatGPTが「社会的不公正がプログラムされている」と述べ、政治的に敏感な主題について真実を語らないと批判していました。
マスク氏も、AIモデルのトレーニングに使用されているデータとサンフランシスコ・ベイエリアに存在する企業の社会的不公正を批判しており、「サンフランシスコ・ベイエリアでトレーニングされている多くのAIは、周囲の人々の哲学を取り入れています。そのため、これらのAIには社会的不公正や虚無主義的な哲学が組み込まれていると私は考えています」と語っています。
TechCrunchは「AIにおける偏見は解決困難な技術的問題でもあります。実際、マスク氏の保有するAI企業のxAIも、特定の政治的見解を他よりも支持しないチャットボットの作成に苦労しています」と報じました。
2024年8月に発表された論文でも、ChatGPTが移民・気候変動・同性婚などのトピックに関してリベラルな偏向を持っていることが指摘されています。
なお、OpenAI自身はこの種の偏向を「機能ではなくバグである」と主張しています。
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