サイエンス

集団で物を運びながら迷路を解く実験でアリが人間より優れていることが判明


社会性昆虫として知られるアリの集団としての知能は目を見張るものがあり、特に「自分たちの体よりはるかに大きいものを集団で持ち運ぶ」という行動ができるのは自然界において人間とアリだけだといいます。この共通の特徴を利用し、科学者が「迷路の中で大きな荷物を運ぶのが得意なのはどっちなのか?」という実験を行いました。

Comparing cooperative geometric puzzle solving in ants versus humans | PNAS
https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2414274121

Ants prove superior to humans in group problem-solving maze experiment
https://phys.org/news/2024-12-ants-superior-humans-group-problem.html

ワイツマン科学研究所のオファー・ファイナーマン教授らは、以下のように上下の線の長さがまばらな「I」の字の物体を作り、4つのついたてを設け、物体を左から右まで運べるかどうかをアリと人間で試しました。


アリ1匹、人間1人にそれぞれ試させて時間を計測したところ、この場合は圧倒的に人間の方が速かったそうです。ところが、集団で実施すると少し違った結果が見えてきました。


ファイナーマン教授らは、アリと人間の輸送パターンをできるだけ近づけるべく、人間が運ぶ物体に人数分の「ハンドル」を付けてそれを引っ張るよう指示しました。さらに人間を2つのグループに分け、片方は「好きなだけコミュニケーションを取ってもよいグループ」とし、もう片方は口頭でのコミュニケーションや身ぶり手ぶりすら許されない「コミュニケーションを制限したグループ」に設定しました。後者のグループは、アイコンタクトなどで気持ちが伝わらないよう、サングラスとマスクの着用が指示されました。

以下の図は、人間の結果を「コミュニケーション有り・集団(紫)」「個人(黒)」「コミュニケーション無し・集団(緑)」で示したものです。コミュニケーションを許可されたグループは試行回数を重ねるごとに速度が上昇し、1人で試した場合よりも早く正解にたどり着くことができましたが、コミュニケーションを制限されたグループは1人でやるよりも遅くなってしまいました。


この結果をアリと比べたところ、コミュニケーション無し・集団のグループは集団のアリよりも遅かったそうです。

人間がアリよりも遅かった理由は、ハンドルを操作するという特殊な運び方だったためです。ファイナーマン教授らによると、コミュニケーションを制限されたグループで誰かがハンドルを持って押したり引いたりすると、メンバー全員が力のかかる方に合わせて自分も力をかける傾向があり、これによって最短経路ではない方向に自然と進んでしまうことがあったとのこと。この力のかかり方は、実験に使われたアリが物を運ぶときの方法と同じでした。

加えて、コミュニケーションを制限されたグループはコミュニケーションが許可されたグループに比べて早く動き出そうとする「貪欲さ」が見られたそうです。具体的には計測開始から最短1秒以内に動き始めたとのこと。一方でコミュニケーションを許可されたグループは、計測開始から数十秒間は作戦会議を練る傾向にありました。


ファイナーマン教授は「グループとして行動するアリは賢く、全体は部分の総和よりも大きいのです。対照的に、集団を形成することで人間の認知能力が拡大することはありませんでした。アリのコロニーは実は家族なのです。共通の関心事を持っていて、協力が競争を大きく上回る、結束の固い社会なのです」と述べました。

なお、実験の様子は以下の動画でも見ることができます。

Humans Vs. Ants: The Maze - YouTube

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in サイエンス,   生き物,   動画, Posted by log1p_kr

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