「金」価格高騰の一因となっている中国の国内事情とは?
近年では国際社会での政情不安などを理由に安定資産である金の価格が上昇傾向にあり、記事作成時点では1gあたり1万4000円を超えています。こうした金価格の高騰の一因である中国での経済情勢について海外メディアのBloombergが解説しています。
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近年の金価格高騰の背景には、中国国内の経済状況の悪化があります。その中でも最も深刻なのは、不動産市場の崩壊で、住宅が重要な資産とされている中国では、これまで多くの人々が住宅に資産を集中させてきました。しかし近年では、不動産バブルの崩壊により住宅価格が暴落し、多くの中国国民の資産価値が大幅に減少しました。
これを受け、政府は借入コスト削減を目的とした大規模な対策を導入。しかしその効果は限定的で、不動産市場の低迷は記事作成時点でも続いているとのこと。
また、中国国内では失業率の増加や賃金の低下につながる雇用不安や、物価上昇や生活費の高騰に対し、賃金の上昇が追いついていないという賃金不安、将来的な中国経済の成長鈍化に対する不安などがはびこっているそうです。
こうした経済的な不安から、中国の人々は自身の資産を守るために、安定資産とされる金に目を向けるようになりました。特に中国の消費者は金宝飾品を伝統的に価値の保存手段と見なしており、「世代を超えて受け継がれる資産」として金を購入してきました。
世界最大の金小売市場である中国では2023年に1000トン以上の金を主に宝飾品として購入しています。
しかし、2024年10月には金価格が過去最高値を記録し、中国の宝飾品バイヤーはその価格から購入を控えるようになりました。一方、中国の富裕層は世界経済に対する根強い不安から、保管費用や手数料を負担してでも延べ棒などの地金を買い求めるようになり、金価格の上昇に拍車をかけています。
さらに中国を取り巻く国際情勢も金価格の高騰に影響を及ぼしています。2022年にロシアがウクライナへの侵攻を開始した際には、アメリカやEUなどの西側諸国がロシアの金融資産を凍結する制裁を下しています。この措置では、ロシア政府や企業、そして一部の富裕層が海外に保有する銀行預金や証券、不動産などが凍結され、自由な使用や売却が不可能となりました。
この結果、ロシアとの関係が深い中国を含む多くの新興国が、自国も同様の制裁を受ける可能性があるという懸念から、基軸通貨であるドルへの依存を減らすことを検討し始めます。中国の中央銀行である中国人民銀行は2023年から2024年にかけて18カ月間、金準備を積極的に増やし、ドルからの分散を図りました。
また、ドナルド・トランプ次期大統領は中国からの輸入への追加関税を示唆しており、アメリカと中国間の貿易摩擦のさらなる激化が懸念されています。
こうした経済的・政治的要因が複合的に作用することで、中国における金の需要が増加。結果的に金価格の高騰につながっているとのことです。
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