サイエンス

メンタルをテクノロジーで改善する「テトリス法」と「アバター法」とは?


精神疾患を抱えた人に、「テトリス」や「アバター」を使った治療を実施する試みが行われています。それぞれどのような治療法なのかについて、経済紙のFinancial Timeが解説しています。

The new tech treatments that could improve mental health
https://www.ft.com/content/134bddde-23fe-4214-a3ee-ff0e131a5f71

テクノロジーとデジタルツールを使用した心理療法は年々増えつつあります。その理由としてFinancial Timesは「薬物やトークセラピーといった既存の治療法は限界に近づいているため」と考察。慈善財団Wellcomeのメンタルヘルス担当者は「新世代の技術は、より的を絞った、患者を変える可能性のあるものになると思います。私たちは転換期を迎えていて、5年後の心理療法は今とはまったく違うものになるかもしれません」と話し、既存の方法に代わる数多くの治療法が検討されていることを明らかにしました。


新しい治療法の1つが「テトリス」を使うものです。スウェーデン・ウプサラ大学のエミリー・ホームズ氏によると、テトリスは「嫌な記憶がフラッシュバックする」という患者に有効に働くといいます。

テトリスの有効性を確認する試験で、ホームズ氏は患者に自分の嫌な記憶をリストアップさせ、そのうち1つを思い浮かべてからテトリスを20分間プレイするよう指示しました。こうした行為を何回かに分けて繰り返したところ、4週間目に到達したところで、患者は嫌な記憶を思い出す回数が減ったということです。

ホームズ氏は「フラッシュバックの際に活動する器官の部位は、視覚や空間認識に使われる部位と同じです。テトリスで遊びながら他のことをしようとするとうまくいきません。嫌な記憶を思い出すか、テトリスに集中するかのどちらか一方しかできないのです。テトリスに集中することで、嫌な記憶を弱め、何かのきっかけで嫌な記憶を思い出す可能性が低くなります」と述べました。


もうひとつの「アバター」という治療法は、テクノロジーを使って患者の分身を作りだし、患者とアバターを対話させることで治療を試みるという方法です。

キングス・カレッジ・ロンドンのフィリッパ・ギャレティ氏らが行った「アバター」の試験では、頭の中で「内なる声」が聞こえるという患者約300人に対し、内なる声がどのようなものなのかを具現化してもらうという試みが行われました。ギャレティ氏らは患者の内なる声をアバターとして体現し、患者はセラピストの指示に沿って自身のアバターと対談しました。

この治療を16週間継続したところ、内なる声が聞こえることによる苦痛の改善がおおむね確認されたとのことです。また、自分の生活習慣に合わせて治療を延長した人は、内なる声を聞く頻度が以前より減少しました。

研究を主導したトーマス・ウォード氏は「内なるものをオープンにすることで、その声をコントロールするという選択肢を提供できます」と指摘。今後、この治療法をグローバルに展開できるかどうかを探っていくと話しました。


新しいテクノロジーが医療に使われ始めていることについて、メンタルヘルス財団のデイビッド・クレパス・キー氏は「ビッグデータとAIが発達したことで、リスクのある集団を特定し、より早い段階での医師の介入を可能にする可能性が増しました。このため、研究者はテクノロジーに注目しつつあります。アプリやウェアラブル端末をその他のテクノロジーと組み合わせることで、良好なメンタルヘルスを維持するイノベーションが生まれる可能性があります」と指摘しました。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
人はAR上のアバターも人間だと感じてしまうという研究結果 - GIGAZINE

難治性の幻聴にも効果的なアバターを用いる治療法「AVATARセラピー(アバター療法)」 - GIGAZINE

世界の大定番ゲーム「テトリス」には不安とストレスを軽減する効果があると判明 - GIGAZINE

心的外傷後ストレス障害(PTSD)の発症を防ぐのに「テトリス」が有効であることが明らかに - GIGAZINE

in サイエンス, Posted by log1p_kr

You can read the machine translated English article here.