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イギリスのオンライン安全法が施行される、小規模なサイト運営者をインターネットから事実上シャットアウトするものとして批判の対象に


イギリスで「オンライン安全法(Online Safety Act)」が成立し、2025年3月16日を期限として、プロバイダーは自社サービスがもたらす可能性のある被害を評価する義務を負いました。この法案は、過度な検閲を要求し、場合によっては年齢認証システムを設けなければならないなど、小規模なサイトを始めとしてプロバイダーに負担がかかりすぎるなどの点から批判が寄せられています。

Statement: Protecting people from illegal harms online - Ofcom
https://www.ofcom.org.uk/online-safety/illegal-and-harmful-content/statement-protecting-people-from-illegal-harms-online/


Time for tech firms to act: UK online safety regulation comes into force - Ofcom
https://www.ofcom.org.uk/online-safety/illegal-and-harmful-content/time-for-tech-firms-to-act-uk-online-safety-regulation-comes-into-force/

The UK Online Safety Bill: A Massive Threat to Online Privacy, Security, and Speech | Electronic Frontier Foundation
https://www.eff.org/pages/uk-online-safety-bill-massive-threat-online-privacy-security-and-speech

オンライン安全法は「ソーシャルメディア企業、検索エンジン、メッセージング、ゲームアプリ、出会い系アプリ、ポルノサイト、ファイル共有サイトに新たな安全義務を課すもの」と説明されています。

対象となるサイトは多岐にわたり、イギリスを市場の一つとして運営しているなどの前提で、ユーザーが別のユーザーに対してメッセージや画像を見せることができるものはおおむねオンライン安全法により規制されます。SNSはもちろん、オンライン掲示板なども対象です。


2023年10月に可決されたオンライン安全法は、イギリスの情報通信庁「Ofcom」のレビューを経て内容が調整され、翌年12月16日に「ガイダンス」の形で正式に発行されました。

このガイダンスでは、2025年3月16日を期限として、ウェブサイトやネットサービスを運営する「プロバイダー」へ自社サービスにおける違法と見なされる被害のリスクを評価する義務を負わせています。これに伴い、2025年3月17日以降、プロバイダーは規約に定められた安全対策を講じるか、違法なコンテンツや行為からユーザーを保護するための効果的な手段を用いる必要があり、プロバイダーが行動しない場合はOfcomによる強制措置が行われる可能性があります。

オンライン安全法により、プロバイダーは違法なコンテンツがないかどうかを監視したり、年齢認証を導入したり、エンド・ツー・エンドの暗号化にバックドアを設けなければならなかったり、あるいはコンテンツの追加や変更に法的な認可が必要になったりするなど、広範な規制が敷かれることになります。


この法律は、プロバイダーに負担を強いるものだとして、多数のテクノロジー企業から批判を集めています。

例えば、オンライン掲示板の「Wikipedia」はユーザーがコンテンツの編集や共同作業を行える点から「情報共有サービス」としてオンライン安全法の対象となっていて、リスク評価やコンテンツモデレーションの強化などを実施しなければなりません。このことについて、Wikipediaを運営するWikimedia財団は「ボランティア主導のコンテンツモデレーションを行うサイト、Wikipediaのような公益につながるウェブサイトを脅かしています」と述べ、法律によりウェブサイト運営者の負担が増加する点を懸念しています。

最大50万人が閲覧したというサイクリスト向けコミュニティサイト「LFGSS」の運営者は、「この法律は範囲が広すぎます。私のサイトが個人によって運営されていること、そして私がいかなる利益も追求せず慈善目的で運営していること、このサイトが人々の孤独を軽減し、自殺率を減らし、有意義な社会の構築を支援するために存在していることを法律は気にも留めません。法的な手続きを長期間にわたって行うのに必要な膨大な費用を払う余裕はありません」と述べ、期限日以降、運営している約300の小規模コミュニティと、LFGSSなどの大規模コミュニティを事実上終了させることを明かしています

電子フロンティア財団は「オンライン安全法は、イギリスをオンライン上で『世界で最も安全な場所』にするとしています。実際には、より強い検閲が敷かれたインターネットをもたらすでしょう。これは、イギリス居住者だけでなく、世界中のインターネットユーザーのプライバシーとセキュリティを損なう権限を政府に与える可能性があります。数年前から検討されていたにもかかわらず、オンライン安全法はプラットフォームとユーザー双方に対して何を要求しているのか曖昧なままであり、専門家や企業からは欠陥だと揶揄されています。オンライン安全法は、イギリスを世界で最も安全な場所にするという方針の真逆の結果を招くことになります」と非難しました。

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in ネットサービス, Posted by log1p_kr

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