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キーボード一体型PC「Raspberry Pi 500」の安定性が抜群だったので冷却性能の秘密を探るべくバラバラに分解してみたよレビュー


2024年12月9日(月)に登場したキーボード一体型PC「Raspberry Pi 500」の安定性を検証してみたところ、「8時間にわたって全CPUコアに100%の負荷をかけ続けてもCPU温度が60度前後に保たれて動作周波数も安定し続ける」という驚異的な安定性を示しました。いったいどんな仕組みでCPUを冷却しているのか気になったので、Raspberry Pi 500をバラバラに分解して内部構造を確認してみました。

Raspberry Pi 500 – Raspberry Pi
https://www.raspberrypi.com/products/raspberry-pi-500/

Raspberry Pi 500はRaspberry Pi 5と同等性能のチップを搭載したキーボード一体型PCです。Raspberry Pi OSを書き込み済みのmicroSDカードも付属しているため、箱から出して即座に使うことが可能。Raspberry Pi 500がどんなデバイスなのかは、以下の記事を読むとよく分かります。

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Raspberry Pi 500は空冷ファンを搭載していないのですが、驚異的な安定性を備えています。以下のグラフは「CPUの全コアに100%の負荷をかけ続けた際のCPU動作周波数とCPU温度の推移」を示したもので、横軸が時間(単位は100ミリ秒)、緑色の線がCPU動作周波数の推移、青色の線がCPU温度の推移を示しています。グラフを見ると、約8時間負荷をかけ続けてもCPU温度が60度前後を維持して動作周波数もスペック通りの2.4GHzを保っていることが分かります。つまり、Raspberry Pi 500は空冷ファンなしでCPUを十分に冷却できているというわけです。


いったいどうやってCPUを冷却しているのか確かめるために、Raspberry Pi 500を分解してみます。なお、Raspberry Pi 500は記事作成時点では技適未取得なので、安定性検証前に「技適未取得機器を用いた実験等の特例制度」の申請を行ったほか、分解前に廃止届出を済ませています。

Raspberry Pi 500を観察したところ、ネジ穴などは見つからなかったので、隙間に細いヘラを突っ込んでキーボードのカバーを取り外すことにしました。


側面からヘラを挿入してこじ開けます。


側面の隙間が広がりました。


隙間が広がった部分を起点にキーボードカバーを取り外します。


キーボードカバーを取り外すとこんな感じ。カバー側と基板側はケーブルでつながっていましたが、ケーブルは特に何もせずともスルッと外れました。


キーボードカバーの裏側には「USA」「美国(アメリカ)」などと記されたラベルが貼られています。また、ラベルにはQRコードもプリントされています。


QRコードには「Pi 500 R1 USA」という文字列が記録されていました。今回分解しているRaspberry Pi 500はUS配列のものなので、このラベルはキーボード配列を示しているのかも。


基板側は大きな金属製カバーで覆われていました。


有線LANポートの上部にはブロック状の物体が貼られています。


テスターで確認すると、金属製カバーとブロック状の物体の間は電気が通るようになっていました。


金属製カバーは4個のネジで固定されています。


ドライバーでネジを外します。


ネジを取ったらカバーを外します。


カバーが外れて基板が現れました。


金属製カバーとSoCが接触する部分にサーマルパッドが貼られていました。つまり、金属製カバー全体が巨大なヒートシンクの役割を果たし、CPUの冷却効率を上げ、優れた安定性を実現しているというわけです。


CPUの安定性の秘密は分かりましたが、基板上のチップの詳細が気になるので分解を続けます。基板とケースは2カ所のツメで固定されています。


基板をひねると簡単に外れました。


ケースはこんな感じ。底面に通気孔が設けられています。


分解完了。最初のカバーをこじ開ける作業が難しいですが、内部はネジが4個しかないシンプルな構成でした。


Raspberry Pi 500の基板はこんな感じ。


SoCはBroadcomの「2712ZPKFSB00D0T」です。内部にArmのCortex-A76が4コア搭載されています。


RAMはMicron製。


これはRaspberry Pi独自開発のI/Oコントローラー「RP1」です。


イーサネットコントローラーはBroadcomの「BCM54213PE」を採用。イーサネットコントローラーの右隣に配置されている端子はUART端子と思われます。


電源管理チップはDialogの「DA9091」です。


Bournsのトランスも搭載されていました。


基板の左側には未実装の部分がたくさんあります。


未実装の部分に「PoE」という表記を発見。将来的にPoE対応版のRaspberry Pi 500が登場するのかも。


基板の右側にはM.2規格のSSDなどを取り付けられそうなスペースが設けられています。ただし、端子は未実装。いずれM.2 SSD対応版が登場する可能性があります。


キーボードとの接続部分はこんな感じ。端子の左側に処理チップが実装されています。


処理チップはRaspberry Pi製マイコン「RP2040」でした。


無線コントローラーもあります。Raspberry Pi 500は「Wi-Fi(IEEE 802.11b/g/n/ac)」と「Bluetooth 5.0」での通信に対応しています。


基板の裏面はこんな感じ。


アンテナはProAntの技術を使っているそうです。


Raspberry Pi 500の価格は90ドル(約1万3600円)で、日本語配列版も今後数カ月以内に登場予定です。なお、日本の代理店のひとつであるスイッチサイエンスでは税込2万130円で販売される予定です。

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in レビュー,   ハードウェア, Posted by log1o_hf

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