レビュー

ヘリウム充填HDDの中身が気になったので実際にバラバラ分解してみたレポート


インターネットの普及によって大量のデータがやりとりされる現代社会で、「データの保存」という重要な役割を担っているのがハードディスクドライブ(HDD)。「ヘリウム充塡(じゅうてん)」「HAMR」「MAMR」など、今なお最先端の研究が進められているHDDですが、実際にその中身を見る機会はあまりありません。また、HDDをそのまま売却してしまったことによる情報流出事件が示すとおり、HDDの構造を理解することは機密情報の保全にもつながります。というわけで、実際にHDDをバラバラに分解し、中身がどうなっているのか確かめてみました。

今回バラバラに分解するHDDはこれ。中古の動作品として1万5000円で購入した、WDのヘリウム充塡モデル「WD80EFZX」です。


NAS向けと位置づけられている「WD Red」シリーズの旧モデル。記事作成時点での最新モデルは「WD80EFAX」です。


裏面はこんな感じ。表面の金属プレート下に多数のネジがあるため、裏面にネジはあまりありません。


まずは表面のシールを剥がします。新品の場合、この時点で保証は無効になります。


金属プレートが姿を現しました。


表面の白いシールを剥がすと……


ピンが姿を現しました。このピンを抜くと内部のヘリウムが抜ける構造になっています。


いったんこの状態で動作を確認してみます。


以下がCrystalDiskInfoのスクリーンショット。ヘリウムレベルに変化はなく、この時点では通常使用が可能でした。


金属プレートを除去するため、カッティングディスクを装着したミニルーターを用意。


直下に部品がある領域を避け、プレートを削っていきます。


ある程度削れたら……


ラジオペンチで削った部分を広げます。


ドライバーでさらに穴を拡張。


5mm程度の穴が開きました。


開けた穴からラジオペンチでプレートをつかみ、剥がしていきます。


ちょうど旧デザインのコンビーフ缶を開けるようにして、プレートを巻き取っていくと……


いくつかネジが姿を現しました。プレート下には空気を遮断して金属同士を接着する嫌気性の封着剤が使われているようです。


接着剤が強力で、思ったよりも剥がすのが大変。


きれいにプレートを除去するのに、1人で作業すると15分ほどかかりました。


この時点でHDDの動作確認をしてみます。


起動した時点でヘリウムレベルは「1」となっており、ヘリウムは抜けている状態。起動直後は不良セクタを増やしつつもデータの読み書きができていましたが、30分ほど経過するとOSごと不安定になってしまいました。


通常使用はできなくなってしまったので、心置きなくHDDを分解していきます。


トルクスドライバーでHDD表面のネジをすべて外します。


ふたを開けると……


HDDの内部にアクセスすることに成功。


ふたの周囲はゴムでシールされており、ヘリウムを漏らさないように密閉する工夫がなされています。


気になるのは、ふたに付いている謎のフィルタのような部分。


ペンチでこじ開けてみると……


活性炭のようなものが出てきました。


HDD本体を分解すべく、プラッタを固定している部品をトルクスドライバーで取り外そうとしましたが……


非常に固く締められており、取り外すのにかなり苦戦。特に最後のネジについては、まったく外れる気配がありません。


手元にあるトルクスドライバーが3つともねじ切れてしまいました。プラッタの取り外しはいったん諦め、別の部品を取り外していきます。


HDD基板とアームの接続部にあるネジを取り外して……


裏側の基板を固定しているネジも取り外し。


基板が外れました。


表面のウレタンを剥がすとこんな感じ。


基板中央のチップに貼られた放熱シートを剥がすと、シリコンがむき出しになりました。


基板とアームの接続部はこんな形状。本体の裏表にある剣山のようなソケットに、基板とアームのコネクタを接続するようになっています。


分解の過程で内部のゴミやチリを除去するためのフィルターが脱落。今回分解したWD80EFZXにはフィルターが2つ備わっていました。


続いてヘッドの位置決め装置のネジを取り外します。


この部品は非常に強力な磁石となっており、ネジが外れても部品そのものを取り外すのに苦労します。


取り外し後は他の金属に近づけないよう注意。誤って指を挟みケガをする恐れがあります。


この部品が上下に2つあり、ヘッドとアームを構成する部品を挟み込む構造になっています。


ヘッドとアーム部分はこんな感じ。


これがプラッタ上のデータを読み書きするためのヘッドです。今回分解したHDDは両面記録が可能なプラッタが7枚あるので、合計14のヘッドがあります。


アームの位置を操作するボイスコイル。先ほどの強力な磁石でコイルをはさみ、電気を流すことでアームの位置を制御しています。


磁気ヘッドからの信号は非常に繊細であるため、プリアンプで信号を増幅します。


HDD本体の部品は、残すところプラッタとスピンドル部分のみとなりました。


トルクスドライバーでどうしても外れなかった最後のネジは、ドリルで破壊し無理やり除去することに成功。


まずはスピンドルモーター上部の部品を取り外します。


プラッタを取り外し。


プラッタの間にはワッシャ状の部品があります。


プラッタをすべて取り外しました。これらの部品は非常に高精度な切削技術で加工されています。


スピンドル部分はこんな感じ。


というわけで、スピンドル部分以外は特殊な工具がなくてもバラバラに分解することに成功。活性炭のようなものや嫌気性の接着剤など、ヘリウム充填モデルの特徴を発見することができました。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
ハードディスクが物理的にデータを記録している仕組みがわかるムービー「How do hard drives work?」 - GIGAZINE

WDのNAS向けHDD「WD Red」の記録方式が「RAIDに不向き」な仕様にこっそり変更されていたことが判明 - GIGAZINE

新しいHDDを使用する時に執り行うべき「儀式」とは? - GIGAZINE

「PlayStation 5(PS5)」の爆速動作の秘密を探るべく本体をバラバラに分解してみた - GIGAZINE

Microsoftの次世代ゲーム機「Xbox Series X」をバラバラに分解して中身をのぞいてみた - GIGAZINE

in レビュー,   ハードウェア, Posted by darkhorse_log

You can read the machine translated English article here.