VR環境で味覚を再現する「棒付きキャンディ型インターフェース」が開発される
香港城市大学の研究チームが、バーチャル環境で味を再現できる「棒付きキャンディ型インターフェース」を開発したと報告しています。この装置は棒付きキャンディの形をしながら、ユーザーがバーチャル空間を探索しつつさまざまな味を体験できるように設計されているとのことです。
Miniaturized, portable gustation interfaces for VR/AR/MR | PNAS
https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2412116121
A lollipop interface for simulating taste in virtual environments
https://techxplore.com/news/2024-11-lollipop-interface-simulating-virtual-environments.html
仮想現実(VR)技術は長年にわたり、人間の感覚を仮想環境に取り入れようと努めてきました。聴覚や視覚についてはさまざまなデバイスが開発されており、触覚や嗅覚を再現するインターフェースの開発も進められてきていますが、味覚については再現が困難とされてきました。
従来の研究では化学物質を使った方法、熱を利用した方法、電気刺激を用いた方法が研究されてきましたが、いずれも技術的な課題が多かったとのこと。そこで、香港城市大学の研究チームは「生物学的に安全なヒドロゲルとイオンを利用した方法」の研究を進めました。この方法は安全で、消費電力が少なく、より正確な味覚フィードバックが可能というメリットがあります。
研究チームは、装置の小型化を実現するため、超薄型のプリント基板を2層使用し、その上に最適化されたレイアウトで部品を配置しました。完成した装置は8cm×3cm×1cmのサイズで、重さは約15gで、一般的な棒付きキャンディと同程度の大きさになっています。
装置はリチウムイオンバッテリー、マイクロコントローラー、Bluetoothモジュール、抵抗器、コンデンサー、MOSFET、そして線形レギュレーターで構成されています。基板は3Dプリントされた棒付きキャンディ状のナイロン製ケースに収められており、バーチャル環境内のGUIを通じて、ワイヤレスでフレーバーチャンネルを制御可能だとのこと。
味を生成する9つのチャンネルには、フレーバー付きのヒドロゲルが充填されています。このゲルはアガロースとミネラルウォーター、特定のフレーバーエッセンスを混ぜて作られており、ターゲットとなるゲルに電流を流すことで、フレーバー成分が棒付きキャンディ型インターフェースの外側に届けられ、ユーザーが舐めることで味を感じることができるようになっています。さらに、味覚の知覚を強化するために、7種類の香料も使われています。
研究チームは、この棒付きキャンディ型インターフェースには味覚検査への応用や食料品のオンラインショッピングでの味見機能、家庭教育への応用などが期待できると述べています。
ただし、研究チームによると、化学物質を含んだヒドロゲルが時間とともに縮小してフレーバーが切れてしまうため、使用時間が約1時間に制限されているとのこと。研究チームは今後、より多くのフレーバーを追加し、棒付きキャンディ型インターフェースの使用可能時間を延長する方法の探究を今後の課題としています。
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