シャンプーで落とせる「e-タトゥー」を頭皮にプリントして簡単に脳波を測定できる新技術が登場
導電素材を頭皮に塗布して脳波を測定し、検査が終わったらシャンプーするだけで落とせる「電子タトゥー」を用いた脳波測定技術が発表されました。
On-scalp printing of personalized electroencephalography e-tattoos: Cell Biomaterials
https://www.cell.com/cell-biomaterials/fulltext/S3050-5623(24)00004-7
'Electronic' scalp tattoos could be next big thing in brain monitoring | Live Science
https://www.livescience.com/health/neuroscience/electronic-scalp-tattoos-could-be-next-big-thing-in-brain-monitoring
一般的な脳波検査(EEG)では、専門家が患者の頭に印をつけて長いケーブル付きの電極を取り付けたり、電極付きのキャップを頭にかぶせたりしますが、ジェルまみれの電極や長いケーブルで被験者の動きが制限されるこの方法は不便で時間がかかるものだと、アメリカ・テキサス大学オースティン校の工学教授のナンシュ・ルー氏は話します。
一方、ルー氏らが学術雑誌のCell Biomaterialsで発表した新技術では、導電性の素材でできたインクをロボットアームで頭皮に塗布することで、比較的短時間で準備が完了します。これまでのところ、ロボットアームは手動操作なので1時間ほどかかりますが、将来的に自動化されれば20分でプリンティングできる見通しとのこと。
実際にロボットアームで頭皮に「EEG電子タトゥー」がプリントされている様子は、以下の動画の再生開始から46秒の時点から見ることができます。
3D Printable EEG Electrode E-Tattoo - YouTube
インクの主成分は導電性素材である「PEDOT:PSS/ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン):ポリ(4-スチレンスルホン酸)」で、乾くと厚さ30マイクロメートルの薄膜になります。
この薄膜は人間の髪の半分ほどの厚みしかありませんが、短髪の被験者5人でテストしたところ、従来のEEG電極と同等の脳波測定機能があることが確かめられました。
しかも、EEG電極は剥離しやすく、およそ6時間でずれてしまうのに対し、新しい電子タトゥーは1日中脳の活動を記録することが可能だったとのこと。しかも、髪の毛にしっかりくっついてしまうEEG電極の接着剤とは異なり、電子タトゥーは用が済んだらアルコール綿でこするか、シャンプーで洗い落とすだけで簡単に除去することができました。
ルー氏らは今後、電子タトゥーが実際に神経疾患を持つ患者で有効なのかどうかや、髪の長さや髪質、肌のアレルギーの影響などを見極めたいと考えています。また、被験者が寝ても枕につかないインクを塗布できるプリンターを開発し、睡眠中の脳活動測定にも利用しやすくする計画もあるとのことです。
研究チームは論文に、「このイノベーションは長年の課題の多くを解決し、EEG用電子タトゥーの潜在的な用途を大幅に広げ、カスタマイズ性と正確性を両立させながら、患者の幸福度と医療労働を改善することにより、ニューロテクノロジーの歴史に新たな章を刻むでしょう」と記しました。
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