小惑星から宇宙探検用の食糧を作るというアイデア
「有人で深宇宙探査をするためには食事の問題を解決しなければいけない」ということで、イギリス・ウエスタン大学のエリック・ピレス氏らが、「小惑星を食事に変える」という論文を公開しました。
How we can mine asteroids for space food | International Journal of Astrobiology | Cambridge Core
https://www.cambridge.org/core/journals/international-journal-of-astrobiology/article/how-we-can-mine-asteroids-for-space-food/9EF3C4FA6F32368D09994EB7910C7035
Western research team creates possible food for space travel
https://news.westernu.ca/2024/10/eating-asteroids/
研究にはピレス氏のほか、大災害後の世界での食糧供給に関する書籍「Feeding Everyone No Matter What」を書いたジョシュア・ピアース氏、オンタリオ博物館のイアン・ニックリン氏が名を連ねています。
「小惑星を食料にする」という発想のもとには、ピアース氏による「プラスチックを食べるバクテリアからたんぱく質を採取し食料を作る」という研究があります。ピレス氏は「人間が深宇宙探査をするためには、宇宙から食べ物を得なければならない」と述べ、その食べ物のもとを小惑星に含まれる炭素に求めています。
プラスチックは、主に炭素と水素からなるので、プラスチックを食べるバクテリアに小惑星に含まれる炭素を与えようというわけです。
プラスチックから食料を作る流れの第一歩は、酸素を用いない化学反応の「熱分解」です。熱分解を経ると油分、ガス、固体が生成されます。このうち、油分を集めてバイオリアクターに供給し、バクテリアのエサとします。この給餌後のバクテリアが食料のもとになるというわけです。
計算したところ、2024年にサンプルが回収された小惑星のベンヌは、質量が約8550万トンあり、6人の宇宙飛行士に100年分の食料を供給可能だとのこと。
小惑星BennuのサンプルがJAXA相模原キャンパスに到着! | 宇宙科学研究所
https://www.isas.jaxa.jp/topics/003800.html
To Bennu and Back: Journey’s End - YouTube
また、ピアース氏はミシガン工科大学と組んで、国防高等研究計画局(DARPA)から資金提供を受けて、同様のプロセスでプラスチックから食料を作るプロジェクトにも取り組んでいます。
ピアース氏によると、食品医薬品局(FDA)の承認を得て、ワームとラットでの試食テストが行われており、成功が確認された場合は人間での研究に進むとのこと。ピアース氏は「生成されたものを人間が安全に食べられると証明されたら、最初に私が食べてみます」と名乗りを上げています。
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