医学博士が「人さし指を切除しても問題ない理由」について語る
多くの人は人さし指を重要な機能を持つ指と認識しており、「人さし指の切断が必要になった場合でも、できる限り切断せずに維持したい」と考えるはず。ところが、マイアミ大学医学部のウィリアム・ホワイト博士は1980年に「Why I hate the index finger(なぜ私が人さし指を嫌うか)」と題したコラムを執筆し、「人さし指はそこまで重要ではなく、機能を損なった人さし指を負担をかけて維持し続けるくらいならば、切除した方がいい」と論じています。
Why I hate the index finger - PMC
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC2997957/
人さし指には「精密に動く器用な指」というイメージがありますが、ホワイト氏は「一般的に人さし指は不器用で、矢を放つことや銃の引き金を引くこと以外の行為で邪魔になります」と語っています。実際に、ある調査では、人さし指は手の他のどの指よりもけがをしていることが示されているとのこと。ホワイト氏は「多くの場合、人さし指のけがはその不器用さと頑固さが組み合わさって発生します」と述べ、人さし指にイメージされているほどの優位性はないと指摘しています。
人さし指の役割を示す具体的な動作としてホワイト氏はハンマーを使った釘打ちを例に挙げています。ホワイト氏によると、親指と人さし指でハンマーを摘まんだ場合、ほとんど釘を打つことはできないものの、中指を加えた場合や親指・薬指・小指でハンマーを持った場合、力強さや正確さが大幅に向上するとのこと。
また、人さし指がけがを負った場合、他の指の働きを妨げることも指摘されています。さらに、人さし指に対する腱移植や神経修復、骨折の治療は他の指に比べて困難であるとのこと。実際に、人さし指に対し屈筋腱を移植した際に、次第に指を曲げるための能力が失われる「伸筋ハビタス」という症例が発生し改善が見られない場合、痛みや感覚異常が発生し、最悪の場合人さし指を切断する必要があるそうです。
ホワイト氏は過去の症例として、人さし指に不快感を訴えるタイピストの女性が来院した時のことを振り返っています。ホワイト氏によると、この患者はホワイト氏の元を訪れるまでに人さし指に7度の手術を受けており、指先の感度がかなり落ちていたそうです。また、この患者の指節間関節は変形しており、常に伸展している状態でした。これを受けてホワイト氏はこの患者に対し人さし指の一部を切除することを提案。その後手術が行われ、患者の症状は改善したことが報告されています。
また、ホワイト氏は「人さし指を第2中手骨のあたりから切除すると、手の可動域が広がる」ということを報告しています。一方でこの部分を切除すると、物体を支える骨の構造物体を持ち上げるための力が弱まることを指摘しました。
ホワイト氏は「一度失った人さし指の感覚はほとんど戻りません。個人的には患者の機能不全を起こした人さし指は見るに堪えません。機能的な状態に戻すことができない場合は、人さし指を切断すべきだと私は考えています」「人さし指の切断は患者にとって早期の機能的復帰などの点で役立ちます」と述べ、人さし指に重度の問題を抱えている場合は無理に維持するのではなく、切断する方がメリットがあると訴えています。
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