サイエンス

低電圧の電流を流すウェアラブルデバイスがロングCOVID患者の症状を緩和できる可能性


世界中で新型コロナウイルスの変異株との戦いが続く中、ロングCOVIDは世界中の何百万人もの人々の日常生活を妨げています。アメリカでは成人の13人に1人が痛み、疲労、運動能力の低下といったロングCOVIDの症状を経験しており、科学者たちはその症状を和らげるための解決策を模索しているそうです。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の医療機関であるUCLA Healthとベイラー医科大学の研究チームは、ロングCOVIDの救済策としてウェアラブルデバイスの使用を検討しています。

Transcutaneous electrical nerve stimulation for fibromyalgia-like syndrome in patients with Long-COVID: a pilot randomized clinical trial | Scientific Reports
https://www.nature.com/articles/s41598-024-78651-5


Wearable device provides immediate relief to long-COVID patients - Earth.com
https://www.earth.com/news/wearable-device-provides-immediate-relief-to-long-covid-patients/

2024年11月、UCLA Healthとベイラー医科大学の研究者が、低電圧の電流を流す経皮的電気神経刺激(TENS)デバイスを活用してロングCOVIDの痛み・疲労・運動障害を軽減する治療法を査読付き学術誌のNature Scientific Reportsで発表しました。


研究チームはロングCOVIDの症状として「慢性的な筋骨格系の痛み」「疲労」「歩行障害」に悩む25人の被験者を集め、2つのグループに分けています。片方のグループには高用量TENSデバイスを使用してもらい、もう片方のグループにはプラセボ効果か否かを調べるために低用量デバイスを使用してもらいました。被験者は4週間にわたって毎日3~5時間与えられたデバイスを使用し、「慢性的な筋骨格系の痛み」「疲労」「歩行障害」が使用前と使用後でどのように変化したかを調査しています。

調査の結果、高用量TENSデバイスを利用したグループは、プラセボ群と比べて痛みが26.1%軽減しており、歩行速度も8%向上するなど、大きな改善が見られました。「この研究結果は、ロングCOVIDが日常生活に与える影響を軽減するために、TENSデバイスが役立つ可能性があることを示唆するものです」と、サイエンス系メディアのEarth.comは記しています。


UCLA Healthの高度外科・介入技術センターの研究ディレクターであるビジャン・ナジャフィ博士は、TENSデバイスについて、「ウェアラブルTENSシステムは痛みや疲労を即座に緩和し、日常の活動に簡単に取り入れることができるという強みがあります」と言及。また、ウェアラブルTENSシステムはユーザーが日常のルーチンに簡単に組み込むことができるため、調査期間の「使用率も高かった」と語りました。

ただし、「この研究は何百万人もの人々に影響を与え続けているロングCOVIDの症状を管理するための効果的で非侵襲的な解決策を見つける希望を与えてくれます。しかし、サンプルサイズが限られているため、これらの調査結果を確認するにはさらなる研究が必要です」と述べ、さらなる研究が必要であることを強調しています。

また、ナジャフ博士はロングCOVID以外の分野でもTENSデバイスの幅広い応用を予見しており、「今回の研究は、ロングCOVIDによって引き起こされる痛みや疲労の管理に焦点を当てていますが、他の呼吸器疾患の患者、集中治療室(ICU)での長期入院を経験し入院後に衰弱した患者、線維筋痛症や化学療法関連の副作用など、慢性的な疲労や痛みを伴う症状の対処にも応用できる可能性があります」と語りました。


なお、ナジャフ博士はTENSデバイスのロングCOVID以外への応用について、デバイスの有効性を包括的に調査するためにさらなる研究が必要であるとも語っています。

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in サイエンス, Posted by logu_ii

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