OpenAIの動画生成AI「Sora」の早期アクセスが漏えい
OpenAIは2024年2月に発表した動画生成AIの「Sora」を一般向けには公開しておらず、一部の動画クリエイターなどにのみ早期アクセス権を付与しています。そんなSoraの早期アクセス権を取得した何者かが、Soraが誰でも利用できるようにフロントエンドを作成し、リークしました。
OpenAI's Sora video generator appears to have leaked | TechCrunch
https://techcrunch.com/2024/11/26/artists-appears-to-have-leaked-access-to-openais-sora/
現地時間の2024年11月26日、OpenAIの二重性とアートウォッシングな戦略に抗議するグループである「Sora PR Puppets」が、Soraの早期アクセス権を取得し、これを利用して誰でもSoraを使って動画を生成することができるフロントエンドを作成し、Hugging Faceで公開しました。
PR Puppet Sora - a Hugging Face Space by PR-Puppets
https://huggingface.co/spaces/PR-Puppets/PR-Puppet-Sora
このフロントエンドを調査したAIPRMのエンジニアであるTibor Blaho氏は、「これは本物のようです。初期テスターがHugging Faceを利用してOpenAIのSoraへのアクセスをリークしました」「なぜこれが本物だと思うのかというと、OpenAIのSora APIエンドポイントを使用して、Hugging Faceのスペース環境設定からハードコードされたリクエストヘッダーとCookieを含む動画生成をダウンロードしているからです」と投稿しています。
This looks real - early testers have leaked access to OpenAI Sora using Hugging Face Space https://t.co/Hx1vflGsx5 pic.twitter.com/HFDd3aDT8C
— Tibor Blaho (@btibor91) November 26, 2024
Soraのフロントエンドは記事作成時点ではシャットダウンされており、使用できなくなっています。しかし、このフロントエンドを利用したというテクノロジーメディアのTechCrunchは、「短いテキストの説明を入力するだけで、どのユーザーでも最大1080p(フルHD)解像度の10秒ほどの動画を生成できました」「キューはかなり長かったのですが、Xの複数ユーザーがサンプルをアップロードすることに成功しており、そのほとんどにOpenAIの特徴的なウォーターマークが付いていました」と指摘しています。
以下の動画はフロントエンドで生成された動画の作例。動画の右下にウォーターマークが配置されています。
Try it here:https://t.co/gnnkoj0jc2
— Kol Tregaskes (@koltregaskes) November 26, 2024
If Sora, it looks like an optimised version. Can generate up to 1080 10-second clips.
Suggest duplicating the space (if that works - my test didn't!).
One example: pic.twitter.com/npphRJgyrd
Conirmed: OpenAI Sora really has been leaked https://t.co/Vh1zzsKgPT pic.twitter.com/mAN1Z4vGsN
— Chubby♨️ (@kimmonismus) November 26, 2024
OpenAIはリークされたSoraのフロントエンドをシャットダウンするために、動画クリエイターに配布したすべての早期アクセス権を一時的に利用停止にしたという指摘もあります。なお、Soraの早期アクセス権が一時停止となったのは、フロントエンドが公開されてから3時間後だったそうです。
SoraをリークしたSora PR Puppetsは、OpenAIがSoraの早期アクセス権を取得したクリエイターに圧力をかけ、Soraに関する肯定的な意見だけを広めるよう促し、クリエイターの仕事に対して公正な報酬を支払っていないと主張。Sora PR Puppetsは「何百人ものアーティストがSoraの早期アクセスを通じ、1500億ドル(約23兆円)企業(OpenAI)のためのバグテスト、フィードバック、実験作業を無給で行っています。この早期アクセスプログラムは創造的な表現や批判というよりも、むしろ宣伝に重点が置かれているようです」と記しています。
More Sora: pic.twitter.com/8DRz1VTY7h
— Kol Tregaskes (@koltregaskes) November 26, 2024
また、Sora PR PuppetsはOpenAIが早期アクセスユーザーを厳しく管理しているとも指摘。同団体によると、Soraで生成された動画は、SNSなどに投稿される前にOpenAIの承認を受ける必要があるそうです。Sora PR Puppetsは「我々はAI技術を芸術ツールとして使うことに反対しているわけではありません。そもそも反対しているとしたら、恐らくこのプログラムに招待されてすらいないでしょう。私たちが同意できないのは、OpenAIのプログラムの展開方法と、公開される可能性のあるリリースを前に、このツールがどのように形作られているかです。OpenAIがよりオープンで、よりアーティストに優しく、宣伝活動を超えて芸術をサポートするようになることを願い、これを世界に公開しています」と記しています。
当初、Sora PR Puppetsはメンバーの名前を明らかにしていなかったものの、11月26日に同グループの理念に賛同する人の署名を公開しました。記事作成時点では134人のアーティストやクリエイターが署名しています。
DEAR CORPORATE AI OVERLORDS
https://openletter.earth/dear-corporate-ai-overlords-90668a95
これに対して、OpenAIの広報担当者は「Soraはまだ研究プレビューの段階にあり、より幅広い使用に向けて創造性と堅牢な安全対策のバランスを取るべく取り組んでいます」「アルファ版に参加した何百人ものアーティストがSoraの開発に携わり、新機能や安全策の優先順位付けに協力してくれました」「参加は任意で、フィードバックの提供やツールの使用は義務ではありません。私たちはこれらのアーティストに無料アクセスを提供できることを嬉しく思っており、助成金、イベント、その他のプログラムを通じてクリエイターをサポートし続けます。私たちはAIが強力な創造ツールになり得ると信じており、Soraを便利で安全なものにすることに尽力しています」とコメントしました。
また、OpenAIの広報担当者は早期アクセスに参加しているクリエイターは「Soraを責任をもって使用し、Soraに関する機密情報を共有しない」という点以外、OpenAIに対して「何の義務もない」と主張しています。ただし、この「責任をもって使用する」という文言が何を意味するのかは明らかになっておらず、OpenAIがどの情報を機密情報とみなすのかも明らかになっていません。
OMG OpenAI Sora has been leaked!
— el.cine (@EHuanglu) November 26, 2024
Free to use now on Huggingface, link in comment
It can be shut down anytime, try it now! It can generate 1080P and up to 10s video! And the results are incredible!
9 Examples: pic.twitter.com/rIJJv5TQTo
なお、OpenAIはSoraをハリウッドに売り込んでいることが報じられていましたが、記事作成時点ではOpenAIと大手制作会社の提携は発表されていません。
OpenAIがハリウッドにムービー生成AI「Sora」を売り込んでいると報道される - GIGAZINE
ただし、AI業界では2024年9月にRunwayがジョン・ウィックシリーズの制作会社であるLionsgateと契約を結び、同社の作品でカスタム動画モデルのトレーニングを開始。Stability AIは映画監督のジェームズ・キャメロン氏を取締役に迎えています。
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