縄文人のDNAを受け継いだ日本人はBMIが高いとの研究結果、狩猟採集民のDNAが現代では健康リスクになっている可能性
by Yutaka OKamoto
古代の日本に住む狩猟採集民である縄文人の遺伝子特性が、ボディマス指数(BMI)の高さと関係しているとの研究結果が報告されました。この研究ではまた、現代日本人は縄文人を含む3つの系統のDNAを受け継いでいるとする「三重構造モデル」を支持する知見も得られました。
Genetic legacy of ancient hunter-gatherer Jomon in Japanese populations | Nature Communications
https://www.nature.com/articles/s41467-024-54052-0
Genetic legacy of Jomon hunter-gatherers linked to increased BMI in modern Japanese - News & Events | Trinity College Dublin
https://www.tcd.ie/news_events/top-stories/featured/genetic-legacy-of-jomon-hunter-gatherers-linked-to-increased-bmi-in-modern-japanese/
Ancient hunter-gatherer DNA linked to higher BMI in modern Japanese people | Live Science
https://www.livescience.com/health/genetics/ancient-hunter-gatherer-dna-linked-to-higher-bmi-in-modern-japanese-people
ダブリン大学トリニティ・カレッジ医学部の中込滋樹准教授らの研究チームは、バイオバンクジャパンによって収集された日本全土に住む17万1287人の遺伝子データと、古代日本人およびユーラシア人のゲノム、UKバイオバンクに収録された東アジア人のゲノム、合計約25万のゲノムを用いた分析を行いました。
これにより、縄文人から受け継がれたDNAが80種類にわたる現代日本人のさまざまな特性とどう関係しているのかが検証されました。
その結果、日本人は平均して12.5%のDNAを縄文人から継承していることが判明。さらに、80種類の特性のうち縄文人のDNAと関連する唯一の特性はBMIだということもわかったことから、研究者らは「このDNAを持つ人は肥満のリスクが高くなる可能性がある」と論文に記しました。
中込氏はこの結果について「概して、これらの結果は古代の狩猟採集民であった縄文人の遺伝的遺産が、地理的な違いに関係なく、今日の人々全体のBMIに大きな影響を与え、結果として肥満リスクの増大に寄与している可能性があることを示唆しています。古代の狩猟採集民の祖先が現代の人々の健康に重要な役割を果たしている可能性が高いというのは、本当に重要な発見です。BMIの上昇との関連は、西洋諸国に住むアジア人の間での肥満率の格差の一部を説明するのにも役立つかもしれません」と話しました。
研究チームによると、縄文人の遺伝子は随意運動を行う骨格筋細胞で非常に活発であり、これは狩猟採集生活に必要な高い身体活動量に関連する適応の可能性を示唆しているとのこと。以前の研究では、縄文人の遺伝子のいくつかは骨密度を高める可能性も示されています。
研究チームは論文の中で「かつての狩猟採集社会ではプラスだった形質が、食生活と生活習慣の急速な変化により現代では病気のリスクにマイナスの影響を及ぼしている可能性がある」と結論付けました。
今回の研究はまた、日本人の起源そのものに関する洞察も提供しています。この分野では長年、1万6500年前にさかのぼる狩猟採集民であった縄文人と、北東アジアから移住してきた農民で構成された「2重構造モデル」が主流でしたが、近年はここに約1700年前の国家形成期である古墳時代に由来する東アジアの祖先も組み込んだ「3重構造モデル」も提唱されています。
地域と時代をまたいだ25万人以上のゲノムを分析した今回の研究では、この3重構造モデルを強く支持するデータが得られました。
日本人のDNAの由来について、中込氏は「日本列島全体にわたる3者構造の詳細な特徴を初めて示す私たちの分析は、2重構造仮説よりも広く一貫して適合しています。また、縄文人の祖先の割合にかなりのばらつきがあることも明らかになっており、これは現代日本の人々に見られる遺伝的祖先の連続性を反映しています」と話しました。
中込氏はまた、研究全体について「古代ゲノミクスの分野は急速に発展しており、今後様々な時代や地域にわたる多様な古代人類を対象とした研究が進めば、人類の過去が現代人のゲノムや表現型の変異をどの程度形成してきたかについて、より包括的な理解が得られるでしょう。私は日本であれ世界であれ、まだまだ発見すべきものがたくさんあると確信しています」と述べました。
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