サイエンス

市販のCPUグリスより圧倒的に冷える素材が開発される、液体金属とセラミックス粉末の配合が決め手


四川大学とテキサス大学オースティン校の共同研究チームが液体金属と窒化アルミニウムを混合した熱伝導材料を開発しました。新開発の材料はCPUなどの熱を効率的に放熱可能で、市販のCPUグリスと比べて圧倒的に高い放熱性能を備えていることが確かめられています。

Mechanochemistry-mediated colloidal liquid metals for electronic device cooling at kilowatt levels | Nature Nanotechnology
https://www.nature.com/articles/s41565-024-01793-0

Prof. Fu Qiang /Wu Kai's Team Made Progress in Colloidal Thermal Conductive Materials-Sichuan University
https://en.scu.edu.cn/info/1034/2344.htm

New Thermal Interface Material Could Cool Down Energy-Hungry Data Centers
https://cockrell.utexas.edu/news/archive/10078-new-thermal-interface-material-could-cool-down-energy-hungry-data-centers

Adding ceramic powder to liquid metal thermal paste improves cooling up to 72% says researchers | Tom's Hardware
https://www.tomshardware.com/pc-components/thermal-paste/adding-ceramic-powder-to-liquid-metal-significantly-improves-thermal-qualities-claim-university-of-texas-researchers

CPUやGPUといったプロセッサの性能を最大限に引き出すには、適切な冷却が必要です。プロセッサの冷却には冷却装置の種類や大きさなども重要ですが、「プロセッサと冷却装置の間に配置する熱伝導材料」の種類も冷却性能に大きく関係します。例えば、PlayStation 5は熱伝導材料として液体金属を採用していることが話題となりました。


AI開発用のデータセンターなどの大規模な施設では冷却に使う電力が無視できない大きさになります。そこで、研究チームは効率的かつ効果的な冷却を可能とする熱伝導材料の開発に取り組みました。

実験の結果、セラミックスの一種である窒化アルミニウムを液体金属に混合することで熱伝導性能が飛躍的に向上することが明らかになりました。新素材の熱抵抗は0.42~0.86m2K/Wで、素材と比べて1桁以上の性能向上を示したとのこと。また、実験では16cm2の熱源から2760Wの熱を放熱できたそうです。


新素材(青)と市販のCPUグリス「Noctua NT-H2」(紫)、「Thermal Grizzly Kryonaut」(赤)、「SYY 157」(緑)、「DOWSIL TC-5026」(グレー)を用いて銅製熱源を冷却した際の温度推移を示したグラフが以下。市販のCPUグリスでは100度を超える温度まで上昇していますが、新素材では70度以下を維持できています。なお、熱源の最大温度は温度センサーの故障を防ぐために140度以下に制限されています。


研究チームによると、新素材を用いることでプロセッサの冷却に必要なエネルギーが13%減少し、データセンター全体のエネルギー使用量を5%削減できるとのこと。記事作成時点ではデータセンターでのテストを実行するために準備が進められています。

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in ハードウェア,   サイエンス, Posted by log1o_hf

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