スタンディングデスクを使っているだけでは座りっぱなしによる健康問題を回避できない可能性
現代人は長時間座りっぱなしで仕事をしたり趣味を楽しんだりすることが多く、座りがちなライフスタイルが健康状態に悪影響を及ぼすことが懸念されています。座りがちな生活を改善するため、立ちながらデスクに向かって作業できるスタンディングデスクを導入する人もいますが、新しい研究では「スタンディングデスクを使うだけでは、座りっぱなしによる健康問題のすべてを回避することはできない」ことが示されました。
Device-measured stationary behaviour and cardiovascular and orthostatic circulatory disease incidence | International Journal of Epidemiology | Oxford Academic
https://academic.oup.com/ije/article/53/6/dyae136/7822310
Your Standing Desk Might Actually Be as Bad as Sitting All Day : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/your-standing-desk-might-actually-be-as-bad-as-sitting-all-day
近年はスタンディングデスクの導入が、座りがちな生活を送っているデスクワーカーの健康改善に役立つと宣伝されています。そこでオーストラリアとオランダの研究チームは、立っている時間や座っている時間が心血管疾患や起立性循環器疾患(orthostatic circulatory disease)の発生率に及ぼす影響を調査しました。
研究には、イギリスの大規模バイオバンクであるUKバイオバンクが収集した、8万3013人分の運動データと病歴が使用されました。被験者の立っている時間や座っている時間は着用した加速度計によって測定され、心血管疾患は冠状動脈性心臓病・心不全・脳卒中、起立性循環器疾患は起立性低血圧・静脈瘤(りゅう)・慢性静脈不全・静脈潰瘍と定義されたとのことです。
7年弱の追跡期間中に、合計で6829件の心血管疾患と、2042件の起立性循環器疾患が発生していました。座ったまま(座位)あるいは立ったまま(立位)動かずエネルギー消費の少ない「静止行動」の平均時間は1日あたり12.8時間、座位の平均時間は1日あたり10.7時間、立位の平均時間は1日あたり2.1時間でした。また、ウォーキングあるいはランニングに費やす平均時間は、1日あたり71.3分だったとのことです。
分析の結果、座位と立位を合計した静止行動が1日あたり12時間を超えると、起立性循環器疾患のリスクは超過1時間あたり22%高く、心血管疾患のリスクが超過1時間あたり13%高くなることが判明しました。
また、起立性循環器疾患のリスクは、座位が1日10時間を超えると1時間あたり26%、立位が1日2時間を超えると0.5時間(30分)あたり11%増加することが示されました。これは、座りっぱなしが起立性循環器疾患のリスクを高めただけでなく、立ちっぱなしでもリスクが増加することを示しています。一方、心血管疾患のリスクは座位が1日12時間を超えると1時間あたり15%高くなり、立位の静止時間は心血管疾患のリスクに関連していませんでした。
研究チームは、「立っている時間は心血管疾患のリスクと関連していませんでしたが、起立性循環器疾患のリスクが高いことと関連していました」「今回の知見を総合すると、座りがちな生活の処方箋として立っている時間を長くしても心血管疾患のリスクは低下せず、起立性循環器疾患のリスクを高める可能性があります」と結論付けました。
論文の筆頭著者を務めたシドニー大学の公衆衛生科学者であるマシュー・アーマディ氏は、「立っている時は体を動かす他の活動も混ぜて行う必要があります」とコメント。起立性循環器疾患のリスクを軽減するためには、脚に血液がたまらないように歩いた方がいいと主張しました。
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