サイエンス

猫が人間の心身に与えるメリットとデメリットとは?


猫はペットとして数千年前から人間に愛されており、かわいい猫を飼っているおかげで毎日幸せだと感じている人も多いはず。しかし、猫と一緒に暮らすことにリスクがまったくないというわけではないと、オーストラリアのアデレード大学で動物・獣医科学部の准教授を務めるスーザン・ヘイゼル氏が解説しています。

Are cats good for our health?
https://theconversation.com/are-cats-good-for-our-health-238993


◆飼い主は猫をどう思っているのか?
複数の研究では、飼い主の多くは猫を家族の一員だと感じていることがわかっています。オランダに住む猫の飼い主1800人を対象にした調査では、飼い主の半数は猫を「家族」だと答え、3人に1人は猫を「子ども」や「親友」だと見なしていることが報告されました。また、「家族の絆」を測定したアメリカの研究では、猫は犬と同程度に家族の一員だと思われていることがわかりました。

一方、「猫は飼い主のことを気にしていない」とよく言われがちですが、実際のところ猫は飼い主に強い愛着を抱いており、食べ物やおもちゃよりも人との交流を好み飼い主の言葉をその他の人間の言葉と聞き分けているなど、飼い主によくなつくことが判明しています。

◆目的意識の形成
猫をはじめとするペットを飼うことは社会的孤立の少なさと関連しており、猫を飼うことで楽しみや目的意識が増すという人もいます。しかし、そのメリットは猫と飼い主がどのように関係しているかによって異なる可能性があるとヘイゼル氏は指摘しています。

ある研究では、人間と猫の距離感や関わり方に応じて「オープンな関係」「リモートの付き合い」「カジュアルな関係」「共依存的」「友情」に分類して調査しました。その結果、猫との関係が共依存的であったり、友情を持っていたりする飼い主は、猫に対してより高い感情的つながりを持っていることがわかりました。


◆心臓の健康との関係
現在猫を飼っている、あるいは過去に猫を飼っていたことがある人は、脳卒中や心臓病などの心血管疾患で死亡するリスクが低くなることが、複数の研究で繰り返し確認されています。しかし、これらの研究はあくまで関連性について示したものであり、「猫を飼うと心血管疾患で死亡するリスクが低くなる」という因果関係については不明です。

また、猫を飼うことは特に女性の腸内細菌叢(そう)のポジティブな変化とも関連しており、血糖値の改善や炎症の軽減といった健康上のメリットを享受できる可能性があるとのこと。

◆メンタルヘルスの改善
猫を飼うことは心理的な幸福感を高めることにも関連しているほか、うつ病の人は猫と軽く触れ合うことで症状が改善されることも示されています

また、ヘイゼル氏らの研究チームが退役軍人を対象に行った調査では、ペットに強い愛着を持っている人はメンタルヘルスのスコアが低いことがわかりました。しかし、ある退役軍人は「猫がいるから朝起きられます」と答えたほか、「私が不安やうつ病に対処している時、または頻繁に見る悪夢から夜中に目が覚める時に、私の猫がリラックスするのに役立ちます」と述べる人もいるなど、メンタルヘルスが悪化している人がより猫に愛着を抱くようになることも示唆されました。


◆メンタルヘルスへの悪影響
猫を飼うことには責任が伴うため、猫の健康状態が悪化すると飼い主の負担が増えるのも事実です。てんかんを患っている猫の飼い主を対象にしたヘイゼル氏らの調査では、約3分の1が猫の介護者として臨床レベルの負担を経験しており、それが日常生活に悪影響を及ぼしている可能性があると判明しました。

◆トキソプラズマ症
猫が運ぶ人獣共通感染症としてよく知られているのが、猫の体内に生息するトキソプラズマという寄生虫が引き起こすトキソプラズマ症です。トキソプラズマ症は軽度のインフルエンザに似た症状をもたらし、特に妊娠中の妊婦が感染すると流産や死産につながったり、新生児に失明や発作などの問題をもたらしたりするリスクがあります。

トキソプラズマ症のリスクが最も高いのは妊婦や免疫力が低い人であり、これらの人々が猫を飼う場合はトイレ用トレーの猫砂が空にならないように注意し、必要に応じて手袋を装着して処理することをヘイゼル氏は推奨しています。毎日猫のトイレ用トレーを交換することで、トキソプラズマが人への感染性を持つ前に排除できるとのことです。なお、トキソプラズマは野生動物を食べる野良猫で最もリスクが高く、外出せず生肉を食べない飼い猫からの感染リスクはそれほど高くありません。


◆猫アレルギー
猫アレルギーを持っている人の割合は約5人に1人ですが、その数は増加傾向にあるとのこと。猫が毛皮をなめるとだ液にアレルゲンが蓄積されるほか、猫の毛やフケが床に落ちることでアレルギー反応が起きる可能性があります。

とはいえ、重度のアレルギーがない人であれば定期的に手を洗い、部屋を清潔にし、フケを取り除くために頻繁に掃除機をかければ、猫と一緒に暮らすことができます。また、寝室などアレルゲンを完全に排除したい場所には猫を入れないなど、さまざまな対策を取ることで猫を飼い続けることが可能です。

なお、猫はアレルギーを引き起こすことがある一方で、猫と触れ合うことがぜん息やアレルギーの発症を防ぐ保護的な役割を果たすという証拠も確認されています。これは、アレルゲンへの暴露が免疫系を変化させ、アレルギー反応を起こりにくくさせるためだとヘイゼル氏は述べました。

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in サイエンス,   生き物, Posted by log1h_ik

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