サイエンス

月には氷が「予想よりかなり多く」あるとNASAが研究結果を発表


「月には氷があるのではないか」とは人類が宇宙に進出する前からささやかれていましたが、2018年には実際に月の表面に氷が露出していることが確認されています。新たにNASAが2024年10月に発表した調査結果では、月探査機のルナー・リコネサンス・オービターが月面に埋め込まれた氷を発見しており、「月面の氷の堆積物は、これまで考えられていたよりもかなり広範囲にわたる」と報告されています。

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https://iopscience.iop.org/article/10.3847/PSJ/ad5b55

NASA’s LRO: Lunar Ice Deposits are Widespread - NASA Science
https://science.nasa.gov/solar-system/moon/nasas-lro-lunar-ice-deposits-are-widespread/

NASA just found unexpected loads of water ice on the moon | Mashable
https://mashable.com/article/nasa-moon-water-ice-discovery


月には本当に氷があるらしいと知られ始めたのは1994年頃のことです。その後もさまざまな調査や研究が重ねられ、2018年5月に東北大学を中心とした研究チームは生成に水が不可欠な鉱物「モガナイト」を月の隕石(いんせき)から発見したことから、「月の地下に大量の氷が埋蔵されていて、太陽光の当たる表面で蒸発している」という研究成果を報告しています。また、2018年8月にはハワイ大学の研究チームが、2008年にNASAが送りこんだ探査機によるデータのうち、月の極域にあるクレーターで影になっていた部分のスペクトル分析を実施した結果、「岩石と混ざるようにして氷が含まれている」ことを発見しました。

月に氷があるという直接的な証拠が見つかる - GIGAZINE

by Jonatan Pie

そして今回、月にある氷について、NASAが新たな調査結果と見解を発表しました。イギリス物理学会の査読付き電子ジャーナルであるIOP Publishingで2024年10月2日に掲載された研究では、月の南極付近にある「永久影領域」だけではなく、南極の外側の南緯77度までの範囲に氷または水が存在していることが示されています。研究を率いたNASAの研究者であるティモシー・P・マクラナハン氏は声明で「月における氷の堆積量は、これまで考えられていたよりも広範囲に及んでいます。永久影領域の氷床の体積を正確に測定したり、乾燥した表土の層の下に埋まっているかどうかを特定したりすることはできません。しかし、今回発見したエリアには、周辺のエリアと比較して少なくとも約5リットル多い氷があるはずです」と述べています。

以下は、月の永久影領域の南緯80度以北を示したもの。青色が水または氷の分布で、広範囲にわたって分布していることがわかります。


月に水分がある原因としては、彗星(すいせい)や隕石が長い年月をかけて繰り返し衝突して豊富な水を運んできた可能性のほか、月の地下から自然に水蒸気が染み出た説や、太陽から吹き出す極めて高温で電離した粒子である太陽風内の水素と月の土壌の酸素が化学反応して形成されたプロセスが考えられています。直射日光にさらされる表面では氷がすぐに失われますが、永久影領域は常に太陽の光が当たらない極寒の領域のため、長年かけて蓄積された水分子が残り続けます。

研究チームはさらに、ルナー・リコネサンス・オービターの「月探査中性子検出器装置」を使用して、氷の堆積物の中性子を測定しています。マクラナハン氏によると、すべての氷の水素濃度が同じであれば、面積に応じて比例的に高い水素を検出するはずだと仮説を立てて分析した結果、実際に面積の大きい氷ほど多くの水素が観測されたとのこと。

2019年に発表された「アルテミス計画」では月の南極付近の着陸を予定していますが、その理由のひとつに、観測されている氷を詳細に調査して採取する目的があります。アルテミス計画の重要なミッションのひとつは、2026年にアルテミス計画を終えた宇宙飛行士が氷のサンプルを持ち帰り、成分をより具体的に分析することです。そのために、月のどの範囲にどれくらいの氷があるかという調査が重要な意味を持っています。

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in サイエンス, Posted by log1e_dh

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