30年以上にわたって運用されているハッブル望遠鏡は宇宙飛行士によって何度もリメイクされている
1990年4月に打ち上げられたハッブル宇宙望遠鏡は、当初の15年程度という運用予定期間を大幅に超えて、記事作成時点では30年以上にわたって運用が続けられています。この長期間にわたる運用の裏には、宇宙飛行士によるハッブル宇宙望遠鏡の定期的なリメイクがありました。
NASA Made the Hubble Telescope to Be Remade - IEEE Spectrum
https://spectrum.ieee.org/hubble-space-telescope-re-invention
ハッブル宇宙望遠鏡の主要なシステムは、宇宙飛行士が外部から開けることができるくさび形の機器ベイに配置されており、外面にあるメンテナンスワークステーションにより、宇宙飛行士は重要な望遠鏡の部品にすぐにアクセスすることが可能でした。
1993年から2009年にかけて行われた5回のミッションでは、延べ16人の宇宙飛行士がハッブル宇宙望遠鏡の鏡筒やボディを除くすべての主要部品を交換しています。これらのミッションによって、ハッブル宇宙望遠鏡の電力供給量が20%増加したほか、光を集める能力が300%向上しています。
以下は実際にハッブル宇宙望遠鏡で行われたリメイクの例。ハッブル宇宙望遠鏡には、当初6台のジャイロスコープが搭載されており、毎分1万9200回転することで姿勢を制御することが可能でしたが、潤滑の目的で使用された加圧酸素により、初期のジャイロスコープに使用されていたワイヤーは腐食してしまいました。そこで2009年に、宇宙飛行士は窒素を使った代替品を取り付け、2024年現在、依然として2台のジャイロスコープが完全に機能しています。NASAによると、2035年時点でも少なくとも1つは稼働を続けている可能性が70%あるとのこと。
ハッブル宇宙望遠鏡には当初シリコンを用いた太陽光発電パネルが搭載されていましたが、2度にわたる作業により、記事作成時点ではガリウムヒ素を使った代替品に交換されています。これにより、オリジナルの太陽光発電パネルよりもサイズを3分の1に縮小しながらも、オリジナルのものより20%大きい5200Wの出力が可能です
ハッブル宇宙望遠鏡の電力は定格総容量528Ahのニッケル水素電池6台によって賄われており、5年で寿命を迎えるという当初の予想に反して19年にわたり稼働を続けました。これらのバッテリーは2009年に交換され、NASAは2030年代まで稼働を続けるだろうと予測しています。
多くの部品が交換されてきたハッブル宇宙望遠鏡において、直径2.4mの主鏡は数少ない打ち上げ以来手つかずのまま使用されている部品の1つです。一方で、望遠鏡を用いて撮影した際に、画像がぼやける原因となる曲率誤差を補正するために、撮像装置への光学系の追加も行われています。
ハッブル宇宙望遠鏡のメインコンピューターが最後にアップグレードされたのは1999年のことで、それ以来Intel486が使用されています。NASAによると、宇宙からの迷走放射線は回路上の信号を破壊する可能性があるため、小型化が進み、密に詰まった最先端のプロセッサを搭載するべきではないとのこと。
当初ハッブル宇宙望遠鏡はテープドライブを用いて観測データを保存していましたが、1993年と1997年のミッション以降、観測データはSSDに保存されており、NASAの追跡・データ中継衛星を経由して1Mbpsという速度で地球上にデータを送信しています。また、ハッブル宇宙望遠鏡に搭載された2つのパラボラアンテナは、1週間あたり平均150Gb分の科学データを収集しているそうです。
これらの部品の交換にあたって宇宙飛行士は、望遠鏡の外側に沿って38箇所設置されたフットレストに足を固定して作業するとのことです。
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