TikTokで流行している「あえて日焼けをすることでニキビを治す」というライフハックは本当に役に立つのか?
ニキビに悩まされやすい10代のTikTokユーザーの間で、「日焼け」をすることでニキビを治療することができるという言説がまことしやかにささやかれています。本当に日焼けをすればニキビが治るのかについて、皮膚の専門家であるカール・ローレンス氏が解説しました。
TikTok ‘sunburning’ hack won’t heal your acne – but it may put you at risk of skin cancer
https://theconversation.com/tiktok-sunburning-hack-wont-heal-your-acne-but-it-may-put-you-at-risk-of-skin-cancer-239007
結論から言うと、日焼けがニキビに効くという証拠はほとんどないそうです。
ローレンス氏によると、皮膚疾患を治療する方法の1つとして「紫外線を照射する」というテクニックが用いられることは確かにあるそうです。しかし、これは主に乾癬(かんせん)や湿疹の治療に使われるものでニキビとは無関係とのこと。また、他の治療法が効かない場合の代替手段として行われることが多く、紫外線をコントロールして有害な影響を最小限に抑えた上で実施されることが普通だそうです。
肝心のニキビについては、紫外線が有効であることを示した証拠はほとんどなく、あったとしても多くの限界があるものばかりだといいます。
1万9939人の参加者を対象とした2023年の調査では、比較的低レベルのUVB(紫外線の一種)を毎日約1時間、長期的に浴びることが、若年成人における中等度から重度のニキビのリスク低下と関連していることがわかっています。しかし、この調査では参加者が浴びた紫外線の正確な量が測定されておらず、被ばくによる悪影響も考慮されていませんでした。
ヒトの皮膚細胞を使った2009年の研究では、UVBがニキビの原因菌と考えられているアクネ菌を殺すなど、いくつかの潜在的な効果があることも示されています。しかし、これらの効果はあくまで細胞内でのみ示されたものであり、ヒトでの研究で再現されたことはありません。また、こうした研究のほとんどは「有益な効果はおそらくわずかであり、治療として使うには不十分である」と結論づけられています。
1992年から2022年の間に行われた日焼けとにきびに関するすべての研究をレビューした調査では、紫外線を浴びることでニキビの症状が改善する可能性は低く、また場合によってはニキビを悪化させることもあるとの結論が出されています。悪化する原因としては、UVBを浴びることで免疫細胞が活性化し、ニキビが引き起こす炎症を悪化させ、ニキビの原因として知られる皮脂の分泌を増加させる可能性があるためだそうです。
また、日焼けがニキビに効くという証拠がないだけでなく、皮膚がんのリスクが大幅に高まるなどマイナス面も数多く報告されています。
一説には、小児期や思春期に水ぶくれのような日焼けを1回しただけでも後の人生で皮膚がんを発症する可能性が2倍になるといわれているほか、皮膚がん発症のリスクは日焼けをする回数が多いほど高まるとも考えられています。これは、紫外線への暴露が皮膚細胞のDNAに大きな損傷を与えるためです。
紫外線への暴露は皮膚がんのリスクを増大させるほか、紫外線が皮膚のコラーゲンやエラスチンにダメージを与えるため、たるみやシワの原因にもなります。
以上を根拠として、ローレンス氏は「現在のところ、最も効果的なニキビ治療は薬局で購入できる薬や医師から処方される薬だけです。日焼けがニキビ治療にもたらす効果は低い上、ニキビ治療薬を処方されている人は日焼けに特に注意する必要があります。ニキビ治療薬に含まれているイソトレチノインとテトラサイクリン系抗生物質は光線過敏反応を起こす可能性があり、皮膚にさらなるダメージを引き起こす可能性があるためです。晴れた日に外出する際は日焼け止めを塗ってください。皮膚を保護し、皮膚がんのリスクを下げるだけでなく、皮膚細胞の炎症を抑えて光線過敏反応を軽減してくれます」とまとめました。
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